ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『ショウほど素敵な商売はない(1954)』There's No Business Like Show Business

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『ショウほど素敵な商売はない(1954)』とは

1954年公開の20世紀フォックスミュージカル映画

実在のボードヴィリアン、ドナヒュー一家の人生を基にしている。

ブロードウェイミュージカル『アニーよ銃をとれ』からのアーヴィング・バーリンによる同名ナンバーをタイトルにしており、本作の中でも歌われる。

監督は『王様と私』でも映画監督を務めたウォルター・ラング

あらすじ

テレンスとモリーのドナヒュー夫妻には3人の子どもがおり、家族でヴォードビルをしながら津々浦々を巡業していた。

途中で長男のスティーヴは神父になるために学校に行きたいと家族に申し出、母親のモリーはしばし悲しむが、最後には息子の夢を応援することになる。

ティムはナイトクラブで受付嬢をしながら女優を夢見るヴィクトリアに出会い、一目惚れする。

プロデューサーに認められたヴィクトリアはブロードウェイの舞台に立つことになり、ティムとケイティも共演することになる。

ティムとヴィクトリアは付き合うようになるが、自分の力で夢を掴み取ってきた自身と比べて生まれた時から親の七光りで仕事に苦労したことがないティムとは違うと、ヴィクトリアは感じていた。

やけになったティムは事故を起こして入院し、ブロードウェイの初日の舞台に立てなくなる。

そんなティムを父であるテレンスは叱責し、その翌日、ティムは失踪してしまう。

テレンスは自責の念にかられ、自身の芸に自信を持てず、ティムを探す旅に出る。

モリーは原因はヴィクトリアにあると決めつけ、彼女に冷たく当たるが、ケイティは原因はヴィクトリアには全くないと母親に話す。

キャスト

モリー・ドナヒュー エセル・マーマン

ティム・ドナヒュー ドナルド・オコナー

ヴィクトリア・ドナヒュー マリリン・モンロー

テレンス・ドナヒュー ダン・デインリー

ティーヴ・ドナヒュー ジョニー・レイ

ケイティ・ドナヒュー ミッツィ・ゲイナー

感想

「ブロードウェイの女王」の異名を持つエセル・マーマンのperformanceを拝める数少ないミュージカル映画の一つである本作には、ショウビズ讃歌とも言うべきタイトル曲「There's No Business Like Show Business」をはじめ、今までのミュージカル映画から抜粋されたアーヴィング・バーリンの楽曲を多く楽しむことができました。

▼trailerです。


There's No Business Like Show Business Original Trailer

ドナルド・オコナーが自身の出演した映画の中で最も良い出来であると後に語ったのも頷けます。

ミュージカルシーンの衣装や構図、カメラワークが非常に練られています。

マリリンは本作では客引き要素ではあり、彼女もそのことを理解しているのですが、特に「Lazy」の赤いソファーをまとわりつくようなダンスは非常にセクシーで、iconicであり、本作には欠かせない存在として光っていました。

ただ、ドナヒュー一家は実在しますが、ヴィクトリアは本作のために作られた架空の人物です。

エセル・マーマンの歌声はいうまでもなく素晴らしく、いつものマーマン節を聞かせてくれます。

母親役ということもあり、個人的には彼女がブロードウェイでオリジナルキャストとして演じた『ジプシー』のローズ役を彷彿とさせるシーンが多くありました。

ラストでティムの存在に気づいて心中は喜びが溢れてたまらないのに、「Show must go on.」の精神で歌い続けるシーンは胸が熱くなります。

さて、ドナルド・オコナーといえば『雨に唄えば』の「Make 'em Laugh」が有名ですが、本作では三枚目キャラはやや封印して、ちょっとしたプレイボーイを演じています。

この映画撮影の終了後、オコナーの当時の奥さんはオコナーと別れ、この時父親テレンス役を演じたデインリーと結婚したという事実を知ってから観ると、少し複雑な気持ちになりました。

Gucciのプロモーション動画に、本作をイメージしたものがありました。


Gucci Showtime: The Spring Summer 2019 Campaign

本作の他に『Gentlemen Prefer Blondes』や『Singin' in the Rain』,『Easter Parade』を思わせるシーンがありますね。

ちなみに歌声はエセル・マーマンのものだと思われます。

 

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『キューティ・ブロンド』2019.2.23.18:00@シアタークリエ

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キューティ・ブロンド』とは

2007年ブロードウェイ初演のミュージカル。

2001年の同名映画を基にしている。

トニー賞7部門にノミネートされたが、1部門も受賞はしなかった。

日本では商業版としては2016年初演で今回が2回目の公演であり、初演に引き続いて神田沙也加が主演した。

日本版演出は上田一豪。

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あらすじ

おしゃれが大好きでブロンドが印象的な女子大生エルは、学生寮デルタ・ヌウで友人たちと自由に楽しく暮らしている。

だがある日、婚約間近だった彼氏のワーナーに突然振られてしまう。

その理由は「上院議員を目指す自分の妻としてブロンド娘はふさ合わしくない」という一方的な決めつけによるもの。

納得がいかないエルは、一念発起して猛勉強の末にハーバード大学のロー・スクールに見事合格する。

しかし、ブロンドでピンクのファッションに身を包むエルは学内で目立つ存在となり、黒髪の美女ヴィヴィアンをはじめ、クラスメイトたちから批判を浴びてしまう。

しかもワーナーはヴィヴィアンと婚約してしまったという。

だが、その逆境がエルのやる気に火をつけ、一人前の弁護士を目指して奮闘を始めていく。

尊敬すべき先輩エメットやヘア&ネイリストのポーレットらと知り合い、外見も中身も磨きをかけたエルは、大学の教授でもあるキャラハンの弁護士事務所でインターン生として働き始める。

そこで担当することになったのは、デルタ・ヌウの先輩でもあるブルックに関わる裁判。

はたしてエルは彼女の容疑を見事に晴らし、一人前の弁護士になることができるのだろうか。

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キャスト

エル・ウッズ 神田沙也加

エメット・フォレスト 平方元基

ワーナー・ハンティントン三世 植原卓也

ポーレット 樹里咲穂

ヴィヴィアン・ケンジントン 新田恵海

ブルック・ウィンダム 木村花代

キャラハン教授 長谷川初範

セリーナ まりゑ

マーゴ 美麗

ピラー MARIA-E

イーニッド 武者真由

販売員/エルの母/ディナ/香水売り 青山郁代

ケイト/読書家/検事 折井理子

レイラニ/ホイットニー/リポーター/チャツニー はま平奈津美

店長/キキ/裁判長 山口ルツコ

エルの父/ローウェル/デューイ/カイル 上野聖太

ヴァイオリン奏者/アーロン/法廷速記官 高瀬雄史

チャド/ニコス/看守 古川隼大

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感想

ようやく、、、行けました、『キューティ・ブロンド』。

いやぁ、楽しかったです。

この作品は、以前ウエストエンドかアメリカの地方劇場かで観たことがあるのですが(この頃、まだブログをつける習慣がなく、記録もとっていないので記憶が曖昧なのです)、今回改めてこの作品がどれほどエネルギッシュでインスパイアリングで感動的なのか思い知りました。

感想の前に、まずはゲネプロの様子の動画をどうぞ。

ゲネプロの様子


ミュージカル『キューティ・ブロンド』ゲネプロ2019/02/10

 観劇直後の感想です。

今回のキャストは最高でした。

BW版と同じテンションで演じると日本ではやや痛い女の子になりがちなエルを、神田さんはやや控えめのテンションで、且つコミカルさはそのままに演じられていました。

平方エメットは流石の歌唱力で会場中を魅了していました。

正直、前回エメットを演じられた佐藤さんは今年ジャン・ヴァルジャンを演じるような実力派中の実力派の方なので、平方さんその後任大丈夫かなと心配していたのですが、そんなものは杞憂に終わり、むしろ一気に平方さんの大ファンになってしまいました。

昨年末に観劇した『サムシング・ロッテン!』とやや似ている、くせっ毛に野暮ったいコーデュロイのジャケットがお似合いのキャラクターが板についていました。

上の動画にもありますが、「Chip On Your Shoulder」という曲のロングトーンからの「生まれ変わったエル・ウッズ(with little Miss Woods comma Elle)」というところがなんとも言えませんね。

このエメットという役はブロードウェイ公演ではクリスチャン・ボールが演じていました。

彼はミュージカルドラマ『SMASH』などにも出演しており、サットン・フォスターの元夫としても有名ですが、彼の演技も素晴らしいので動画を載せておきます。

▼ブロードウェイ公演より「Chip On Your Shoulder」


Legally Blonde the Musical Part 9 - Chip on My Shoulder

花代さんのブルックは今までの花代さんにはなかなかなかった役どころで最初は驚きましたが、さすが見事に演じきっていました。

また、エルの取り巻きのデルタ・ヌーのメンバーも面白かったです。

Δ=デルタのマークを表す三角形をみんなでジェスチャーするのがツボでした。

前評判で、会場の音量がものすごく大きく、耳栓を使ったほうがいいというような口コミがあったので、とても心配していたのですが、私はそれほど気にならず観劇することができました。

もしかしたら聴覚が敏感な方は大変なのかもしれませんが、ブロードウェイの劇場ではもっとひどいこともあったので自然と鍛えられていたのかもしれません。

うん、そんなこともありました。

ちなみにその時のリッゾは藤本美貴さんでした。

一つの恋愛を通して自分自身を高めて、その結果、次のより良い恋愛に繋げられるのは、女子としてかなりレベル高いことなんですよね。

日々生きていると落ち込むことも多いですが、エルを見ているともっと努力しなければと思わされます。

▼ブロードウェイ公演より「So much better」


Legally Blonde the Musical//So Much Better

神田エル、全体的にとても良かったのですが、欲を言えば、上の動画のローラ・ベル・バンディのような力強いbelting outが欲しかったなあと思ってしまいますね。

これは日本人の声帯には難しいことなのでしょうが、エルの意志の強さを表すエネルギッシュな高音をもっといただけたら、それこそもうperfectでした。

多くの方がご指摘の通り、確かにやや時代錯誤感はありました。

それは仕方ありません。

▼入口にはブルーザーもいたよ。

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