ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『オン・ユア・フィート』2018.12.29.17:00 @シアタークリエ

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『オン・ユア・フィート』とは

2015年にブロードウェイで初演されたジュークボックス・ミュージカル。

25回エミー賞を受賞したグロリアとエミリオのエステファン夫妻の人生を基にしている。

音楽は2人が手がけた楽曲が主に使用されているが、グロリアと彼女の娘エミリーが手がけたオリジナルナンバー「If I Never Got To Tell You」も劇中で歌われる。

あらすじ

歌の大好きなグロリアはキューバ移民の両親のもと、マイアミという開放的な場所で暮らしていたが、戦争によって身体が不自由な父親や妹の世話に追われ、歌の才能を発揮できずにいた。

ところがある日、祖母の計らいで、地元で名の知れたバンドのプロデューサー、エミリオ・エステファンの前で歌を披露することに。

それは輝かしいスターへの階段を駆け上がるとともに、栄光と挫折の日々の始まりでもあった。

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キャスト

グロリア・エステファン 朝夏まなと

エミリオ・エステファン 渡辺大

レベッカ 青野紗穂

ホセ 栗原英雄

コンスエロ 久野綾希子

グロリア・ファハルド 一路真輝

リトル・グロリア  藤巻杏慈

リトル・エミリオ  木村咲哉

感想

こちらで2018年は観納めとなりました。

私は基本的にジュークボックス・ミュージカルというジャンルが苦手で、なるべく避けています。

ストーリーありきで後から歌が生まれる通常のミュージカルとは異なり、既存曲を組み合わせてストーリーを作ることが多いため、少し違和感が生まれてしまうことが多いからです。

最近のブロードウェイでもこのタイプの作品、非常に多いんですよね。

ジャージー・ボーイズ』は言うまでもありませんが、ヒットしているのはキャロル・キングの『Beautiful』やその他シェールの『Cher Show』など枚挙に暇がありません。

今回は、栗原英雄さん観たさ、そしてマチネで近くの劇場にいたこともありせっかくならということで、直前で観劇を決意しました。

↓ブロードウェイでの公演のtrailerです。


The Estefan's Story Comes To Broadway | ON YOUR FEET!

 観劇直後の感想です。

あまり予習をしていかなかったため、もちろんエステファンさんたちの音楽を聴いたことは一度もありませんでした。

さらにダンスミュージックのようなものは普段聴かないので、そこまで夢中になることはできなかったのですが、寒い冬にラテンダンスミュージックを聴くと体が温かくなりますね。

本作は特にグロリア・エステファンの人生にスポットを当てて描かれていました。

幼少期のグロリアが成長し、エミリオに出会い、スターダムに駆け上がっていく中で、想起シーンでエミリオの幼少期も部分的に描かれます。

朝夏さんは初めましてでしたが、声域的にもスタイルからしても、ものすごくラテン系のこの役がお似合いでした。

背が高いので非常に舞台映えしますね。

一路さんともお顔の系統が近いので、本当の親子のようで感情移入しやすかったです。

エミリオ役の渡辺さんは、母国語がスペイン語だけれど英語を話しているという設定なので、やや片言の日本語を話すのですが、これがものすごくお上手でした。

後でOBCRを聴くと、OBCもまさに同じイントネーションで話していたので、きっと耳のいい方なのだろうなと感じました。

栗原さんは『リトル・ナイト・ミュージック』以来ですが、今回はグロリアのパパ役。

多発性硬化症に罹患している難しい役柄でしたが、見事に演じられていました。

そして、リトル・エミリオにはなんと『ビリー・エリオット日本初演時のビリーのひとりである木村咲哉がキャスティングされていましたが、終演後の帰り道でようやく気づきました。

「On Your Feet=自分の足で立ち上がる」

グロリアは母と衝突しながらも、エミリオとの出会いを通して「自分の足で立ち上がり」次々と歌手として夢を叶えていきますが、思いがけず病に倒れ、もう一度夢のために、家族のために「自分の足で立ち上がる」決意をするところに、彼女の力強さを感じました。

『サムシング・ロッテン!』2018.12.29.13:00@東京国際フォーラム ホールC

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『サムシング・ロッテン』とは

2015年ブロードウェイ初演のミュージカル。

脚本はJohn O'FarrellとKarey Kirkpatrick、音楽はKareyとWayneのKirkpatrick兄弟による。

トニー賞には10部門ノミネートされ、1部門(シェイクスピアを演じたクリスチャン・ボールに対してミュージカル主演男優賞)受賞した。

英語表記はSomething Rotten!となる。

演出は福田雄一

↓Broadway original castによるperformance


Something Rotten! on Broadway

あらすじ

ルネッサンス時代のイギリス。

売れない劇作家であるニック・ボトムは、弟のナイジェルとともに自身の劇団を運営していた。

時代の寵児であり、スーパースターの劇作家ウィリアム・シェイクスピアに、ニックは対抗心をむき出しにするが、劇団運営に行き詰まり、妻ビーの目を盗んで預言者トーマス・ノストラダムスのもとを訪ねる。

そして、彼のお告げに従い、世界初の歌って踊る「ミュージカル」を書こうと決意する。

しかし、初めてかく「ミュージカル」がなかなかうまくいかず、ニックはついにシェイクスピアの最大のヒット作を先取りしようとノストラダムスのもとを再訪。

新たな予言で。ヒット作のタイトルは『オムレット』だと言われたニックは、ミュージカル『オムレット』を生み出すために悪戦苦闘する。

劇作家としての確かな才能を秘めている弟のナイジェルは、兄の言うことを聞きつつも「卵の物語なんか書きたくない!」と思い悩む。

そんな中、出会った美しい清教徒の娘ポーシャと恋に落ち、新たなインスピレーションが生まれていた。

一方、「『ロミオとジュリエット』に続く大ヒット作を書かねば」と人知れず思い悩んでいたシェイクスピアは、以前からナイジェルの才能に目をつけていたため、彼からなんとか次作のアイデアを得ようと画策する。

そこで、シェイクスピアはトービー・ベルチという俳優志望の少年に変装し、ニックの劇団に潜入する。

後の大ヒット作『ハムレット』の土台となるアイデアをどんどん盗んでいくが。

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キャスト

ニック 中川晃教

シェイクスピア 西川貴教

ビー 瀬奈じゅん

ナイジェル 平方元基

ポーシャ 清水くるみ

ノストラダムス 橋本さとし

感想

あけましておめでとうございます。

2019年最初の投稿は、昨年末に観劇したミュージカルから早速いってみたいと思います。

この作品は大好きで5ヶ月ほど前にチケットを取り、以来ずっと楽しみにしていました。

ただミューオタの間では様々な意見のある福田演出であり、私でさえ前回『シティ・オブ・エンジェル』を観劇した際には辛辣な意見を言ってしまったほどですが、今回は大好きな作品である上に、これまた大好きな中川晃教さんが主演することもあり、迷わずいくことにしました。

↓今回の公演のゲネプロ風景


【動画】ミュージカル『サムシング・ロッテン!』ゲネプロより

会場に入ると、メインキャストの舞台衣装のデザインが展示してありました。

凝ったお洋服のデザインを見るのは好きなので、これには興奮しました。

向かって左から順番に、ナイジェル、ビー、ニック、シェイクスピア、ポーシャ、ノストラダムスのものかと思われます。

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至近距離でも撮影。

こちらがナイジェルとビー。

ナイジェルは好青年らしく、ビーは敬虔で賢明な人妻らしいお衣装。

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こちらがニックとシェイクスピア

胸元が開いていてセクシーな出で立ち。

男性キャストのブーツ(に見えていたもの)は近くで見るとこのようなレッグウォーマーのような覆い被せるタイプだったのですね。
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こちらがポーシャとノストラダムス

ポーシャのドレスはふんわり感が可愛いですし、ノストラダムスは肩周りのデザインから威厳が感じられます。
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さて、観劇直後の感想ですが… 

めくるめくミュージカルネタの数々に抱腹絶倒しながら、あっという間に時間が過ぎていきました。

この作品のミュージカルネタは有名作品からの出典もありますが、一部は相当マニアックなため、全てを拾うのは一般の方には難しいかも知れません。

「いやいや我こそは真のミューオタなり!」という方はぜひ一度ご体験いただければ、はまってしまうこと請け合いです。

細かい解説は他サイトに委ねますが、「この『ジプシー』のファンファーレわかる人いるのかしら。もしかしてこの劇場内でわかるの私だけでは?」などと思い上がっていました。

事前に心配していた福田さん演出や中の人ネタ(演者にまつわるネタを劇中に取り入れること)。

私が苦手な福田演出は以下。

  • ミュージカルの流れが遮断されてしまうほどの長ゼリフ
  • 作品内容とはあまりに無関係な時事ネタ
  • 作品とはあまりに無関係な出演者に関するネタ

これらはoriginalのミュージカル作品への冒涜だと思いますので、即刻やめていただきたいです。

今回は西川氏の消臭力に関するネタでした。

協賛なのかも知れませんが、私は不愉快でしたし、観に来ていたブロードウェイ関係者に日本語はわからないからやってもいいやというのは、失礼極まりないと思います。

その他、随所で長ゼリフが散見されました。

一幕で立ち去る方もいらっしゃいましたが、私はもともとの作品の良さに免じて結局最後まで観劇しました。

確かにoriginal broadway cast盤と比べるとかなりゆっくりめだったのですが、それでも一部聴き取れず、少し残念でした。

ただ、テンポを落としてはっきり発音することで歌詞を観客に届けようという姿勢には私は賛成です。

キャストですが、アッキー(中川晃教さんのこと、以下略)はコメディアン気質を存分に感じられるパフォーマンスを披露し、今回も期待を裏切ることはありませんでした。

一幕のトリを飾る「Bottom's Gonna Be on Top」では、『ジャージー・ボーイズ』でフランキー・ヴァリを演じたアッキーだからこそできる高音voiceを披露していて、すっかり魅了されました。

ニックの妻を演じた瀬奈さんは宝塚時代を想起させるパフォーマンスを披露していて、きっとヅカファンの方々は黄色い声をあげられていたのではないでしょうか。

瀬奈さんの声は3階席後方の私の胸までズンと届いたので、瀬奈さんの歌う場面ではいつも安心感がありました。

平方元基さんは今までも何度も拝見していると思うのですが、soloで歌声を拝聴するのは今回が初めて。

よく通る歌声で、歌詞の内容も客席に伝わりやすく、小野田龍之介さんのような素敵なミュージカル俳優さんがまた出てこられたなぁと思いました。

西川さんと橋本さんはいうまでもなく、bravo!

清水くるみさんは初めましてでしたが、アニメ風に落とし込むポーシャのキャラ作りは私にとっては少し苦手でしたし、歌も他のキャストと比べて未完成でしたね。

次回に期待です。

 舞台装置ですが、ニックたちの劇団の稽古の場面ではシェイクスピアに関する劇でよく出てくる二階建ての木造セット、シェイクスピアの登場シーンでは舞台上にさらにステージが設けられました。

私は恥ずかしくてあまり振らなかったのですが、押すと光るボールペンを振ってノッてもいいことになっていて、シェイクスピア登場シーンではややライブ会場のような雰囲気になりました。