ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『イントゥ・ザ・ウッズ(2014)』Into the Woods

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『イントゥ・ザ・ウッズ』とは

2014年公開のディズニーによるミュージカル映画

1987年ブロードウェイ初演の、スティーヴン・ソンドハイム作詞・作曲による同名の舞台ミュージカルを映画化したもの。

グリム童話シャルル・ペローによる童話を繋ぎ合わせるようにつくられており、メインキャラクターは『赤ずきん』、『ジャックと豆の木』、『シンデレラ』、『ラプンツェル』から採られている。

あらすじ

パン屋の夫婦は子供が授からないことを悩んでいたが、それは隣に住む魔女の呪いによるものだった。

昔、魔女の家の庭にある畑の野菜を食べたいと言う妻の願いを聞き入れ、パン屋の主人の父親は真夜中に畑に忍び込み盗んだ。

魔女は見て見ぬ振りをしていたが、彼が立ち去るときに豆を一掴み取ると、魔女はたちまち醜い老婆になってしまうのだった。

その豆は庭の外には持ち出してはならない、魔法の豆だったのだ。

その事件を機に、魔女はパン屋を呪い続け、3晩のうちに、森の中で「ミルクのように白い雌牛」、「血のように赤いずきん」、「トウモロコシのように黄色い髪」、「金色に輝く靴」を持ってくれば子どもを授けようと、夫婦に言い渡すのだった…

▼trailerです。


Into The Woods Trailer - Now Playing In Theaters!

キャスト

魔女  メリル・ストリープ

パン屋  ジェームズ・コーデン

パン屋の妻  エミリー・ブラント

シンデレラ  アナ・ケンドリック

シンデレラの王子  クリス・パイン

シンデレラの継母  クリスティーン・バランスキー

赤ずきん  リラ・クロフォード

ジャック  ダニエル・ハッスルストーン

ジャックの母  トレイシー・ウルマ

ラプンツェル  マッケンジーマウジー

ラプンツェルの王子  ビリー・マグヌッセン

オオカミ  ジョニー・デップ

感想

この作品の日本での口コミを読むと、 日本では元々の舞台ミュージカルをご存知ない方も多いのだろうなと感じました。

私自身もliveで舞台を見たわけではなく、liveを録画したDVDを観たことがあるだけなので、大したことは言えないのですが。

ディズニーによる映画化ですが、元々はブロードウェイの巨匠ソンドハイムの代表作とも言える作品です。

舞台との違いですが、まず、ディズニーの魔法がかかることにより、暴力的な場面や性的描写が緩和されて表現されています。(ジャックの母の最期や不倫シーンなど)

また、舞台では多くの場合、シンデレラの王子とオオカミは同じ俳優が一人二役で演じますが、映画版では異なる二人の俳優がそれぞれ演じています。

上述の複数の童話が‘、境界が曖昧な森’という場所で不思議に結びつきます。

オープニングナンバーにある通り、「I wish...」登場人物たちはそれぞれ何か希望を胸にし、「Into the woods」森の中へ入っていきます。

そして、最終的に、それぞれの希望は叶えられるのですが、それは想像していたような甘く素晴らしい結果ばかりではないのです。

赤ずきんはおばあさんにパンを届けに行くけれど、オオカミに食べられてしまい、

ジャックは親友の牛を売らずに済んだけれど、母親が巨人に踏まれてしまい、

シンデレラは望み通り舞踏会に行けたけれど、王子に時めくことはなく、

ラプンツェルは望んだ外の世界に出られたけれど、王子はイバラで失明してしまい、

パン屋は待望の自分の赤ん坊を腕に抱くけれど、妻は不倫した上、亡くなってしまい、

魔女は元の美貌を取り戻すけれど、娘ラプンツェルは恋人と駆け落ちしてしまう。

おとぎ話の世界では、ハッピーエンド、と片付けられているけれど、実際はどうなのだろうという考察を、森という舞台で繰り広げています。

この作品を観手から再度それぞれの童話を読み直すと、また味わいが違うものになるかもしれません。

本作は、盛り込む内容が多く、とにかく展開が早く、息つく暇がない、という印象でした。

ただ、キャスティングが的確で、皆さん素晴らしかったですね。

特に、ストリープとブラントの歌と演技力に大拍手でした。

子役ちゃんたちも素晴らしかったですね。

ジャックは『レミゼ』のガブローシュ役の子と説明した方が手っ取り早いでしょうか。

赤ずきんはつい最近のブロードウェイでの『アニー』にタイトルロールでオリジナルキャストに名前を刻んだリラちゃん。

やはり上手い。。。

オープニングから圧巻でしたね。

これぞ映画の醍醐味と見せつけるかのようなシーンカットの数々、ミュージカル映画の魅力と言えます。


Prologue - Into the Woods 2014 movie (HQ) w/ lyrics

一般評ではつまらないという意見が多いのですが、私はなかなか面白く最後まで拝見しました。

よくもまあこんな脚本を思いつくなと思いましたね。

この作品で、作者は何を言わんとしているのか、色々考えたこともありました。

個人的な考えですが、「子どもに童話を読み聞かせることで大人たちは夢見ることの素晴らしさなどを伝えようとするけれど、実際に人生で起こる種々の問題には童話は触れていない。子どもを教育するのは難しい」というところなのかなと。

最後に、舞台ミュージカル版のトニー賞授賞式でのパフォーマンスを載せておきます。


INTO THE WOODS 1988 Tony Awards

 

 

『ジプシー(1962)』Gypsy

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『ジプシー』とは

1962年公開のミュージカル映画

実在のストリッパー、ジプシー・ローズ・リーの自伝を原作とする、1959年初演のブロードウェイミュージカルを基に作られた。

音楽は、スティーヴン・ソンドハイム作詞、ジューン・スタイン作曲。

基の舞台ミュージカルは、初演時、エセル・マーマンがローズを演じ、その後もアンジェラ・ランズベリー、タイン・デイリー、バーナデッド・ピーターズ、パティ・ルポン、イメルダ・スタウントンといった、世代ごとの名女優たちがこぞって演じ続け、今でも再演を繰り返されている人気演目のひとつ。

また、1993年にベット・ミドラー主演でテレビ放送のために再映像化されており、近年ではバーブラ・ストライザンド主演で映画のリメイクの話が持ち上がっている。

あらすじ

ローズは、父のような平凡で退屈な人生を嫌い、2人の娘たちルイーズとジューンをショウビジネスの世界で活躍させようと躍起になる、ステージママ。

オーディションで知り合ったハービーと組み、あちこちの地域の劇場へ娘たちを売り込んでまわるその姿は、まるで‘ジプシー’のよう。

やがて、ハービーがスカウトしてきた4人の少年たちを入れ、「ベイビージューンと新聞売り」の名で舞台に立つと、ローズの狙い通り、娘のジューンのダンスが評判となって瞬く間に人気者に。

劇場関係者に多くの伝手(つて)を持つハービーと、ショウビジネスに人生を懸けるローズは、次第に心惹かれ合うが、早く結婚して持ち家に落ち着きたいハービーと、娘たちのブロードウェイデビューまで放浪の旅を続けたいローズの間には溝があった。

やがて、成長した少年たちが一座を抜け、ジューンは駆け落ちし、一座はバラバラになってしまう。

それでも諦めず、ルイーズと再起を図るローズだったが、ジューンの持つ歌唱力やダンスの技術はルイーズにはなかった。

さらに、時代はトーキー映画全盛で、ボードヴィル業界は斜陽の一途をたどり、一家の生活は厳しくなる一方だった。

そんな時、ある手違いでストリップ劇場の仕事を受けてしまう。

ローズは抵抗するが、お金のためにルイーズは舞台に立つと宣言するのだった・・・


Gypsy (Original Theatrical Trailer)

キャスト

ローズ・ホヴィック ロザリンド・ラッセル

ルイーズ・ホヴィック ナタリー・ウッド

ハービー・サマーズ カール・マルデン

タルサ ポール・ウォレス

ベイビー・ジューン スザンヌ・キュピト

デインティー・ジューン アン・ジリアン

ベイビー・ルイーズ ダイアン・ペイス

感想

ようやくこの映画について書く日がやってきて、心から嬉しい気持ちでいっぱいです。

私がミュージカル『ジプシー』について知ったのは、2008年のブロードウェイでのリバイバルトニー賞授賞式でのパフォーマンスをたまたま観た時のことです。

私が最も好きなブロードウェイスターである、パティ・ルポンが演じるローズの存在感に圧倒され、急いでこの作品について調べてみると、あの『ウエストサイド物語』でマリアを演じたナタリー・ウッドが出演している映画版があるではないですか。

しかし、アメリカでのメジャー感とは対照的に、当時日本ではDVD化されておらず、アメリカ留学時代に図書館で借りて、ようやく初めてこの映画を観ることができました。

(朗報:2018年、復刻シネマライブラリーとして日本でもDVD化されましたよ!)

映画版は、舞台版をある程度、忠実に再現していると思います。

ナンバーの削除も少ないですが、残念なのは私が好きな「Together Wherever We Go」がない点。

そのシーンは実際作られたのですが、時間の都合で削除になったそうです。

ロザリンド・ラッセルのローズは、やはりブロードウェイの歴代のDivaたちと比較すると、歌声は劣っていますが、それを演技力と美貌でなんとか補っているように思いました。

ただ、ラッセルの歌う歌の編曲が、もう少しテンポとピッチを上げても良かったのではと全体的に思いました。

まあ、歌い手の問題が多分にあると思いますが、元々のナンバーが素晴らしすぎるだけに、その良さが全く活かしきれておらず、全体的に遅くだるくなってしまい、残念。

↓ショウビジネスの夢を父親に語る、ローズの決意表明のような一曲「Some People」


Gypsy - Some People - Rosalind Russell 's own voice

ハービーを演じているのは、映画『欲望という名の電車』に出演し、アカデミー賞を受賞したカール・マルデン

彼はまさにハービーらしさが全面に出ていて適役でしたね。

↓エンターテイナーとしての才能のある華やかな妹のジューンとは対照的に、ルイーズはこの時少年たちに混じって地味に舞台を支える「Baby June and Her Newsboys」


Gypsy - Baby June and Her Newsboys (1962)

『ウエストサイド物語』では泣く泣く歌声を吹き替えにしたナタリー・ウッド

歌がマーニ・ニクソンによる吹き替えになることを、本人は撮影終盤まで知らなかったそうです。

この件、本人は相当悔しかったそうで、『ウエストサイド物語』の次の本作の出演にあたり、「次こそ、絶対に自分の声で歌うもん!そうじゃないと、私、絶対に出ないからね!」(言いぶりは勝手な想像)と言ってきかなかったそうです。

そして、念願叶い、ローズの娘、ルイーズを熱演し、歌い、踊っています。

ルイーズはジューンと違い、歌やダンスの才能はないという役柄なので、ある意味、合っていたのかも。

↓可憐な歌声を披露するナタリー・ウッド「Little Lamb」


Little Lamb-Natalie Wood (Gypsy-1962)

また、フィナーレを飾る、大曲「Rose's Turn」は、終演後のバーレスク劇場の舞台上で、今までの子育てに奮闘した日々、自分の人生を振り返り、独白する印象的なシーンです。

 

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