ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『晴れた日に永遠が見える(1970)』On A Clear Day You Can See Forever

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『晴れた日に永遠が見える』とは

1970年公開のミュージカル映画
1965年に開幕した同名のブロードウェイ・ミュージカルを映画化したもの。
ヴィンセント・ミネリ監督。

あらすじ

デイジーは、ニューヨークに住む明るい大学生。
医学部での講義中に、マルク博士が行っていた催眠術の実験にかかってしまう。
今まで誰もかからなかった催眠術が成功したことに、マルク博士は驚く。
デイジーは、婚約者ウォーレンの就職のために、自身のタバコ中毒を克服しようとしていたので、催眠術で禁煙できないか、マルク博士に頼み込む。
マルク博士は、デイジーに催眠術をかけるが、催眠術をかけられたデイジーは妙なことを話し始める。
話を聴くうちに、デイジーの意識は、18世紀のイギリスに生きたメリンダという公爵夫人に移行したことがわかる。
つまり、それは彼女の前世の姿だった。
その他も、予知能力や花を速く成長させるなど、デイジーの超能力が明らかになる。
何度もデイジーと面会し、催眠術をかけ、彼女の前世であるメリンダに会ううちに、
マルク博士は現代に存在しない、高貴なメリンダに恋していることに気づく。
デイジーは、超能力で、博士が自分のことを想っていると感じとり、博士の存在が気になりだす。
しかし、ある日、催眠術にかけられた自分と博士の会話が録音されたテープを偶然聞いてしまい、博士が恋しているのは自分の前世であるメリンダであり、現在の自分自身ではないことを悟ってしまう。

キャスト

デイジー・ギャンブル/メリンダ バーブラ・ストライサンド
マルク・シャボー博士 イヴ・モンタン
ウォーレン ラリー・ブライデン
タッド ジャック・ニコルソン
ヒューム博士 ボブ・ニューハート
ロバート・テントリース ジョン・リチャードソン

感想

最初にこの映画を観たのは、単にタイトルに惹かれたからです。
『晴れた日に永遠が見える』なんて、とても素敵な響きですよね。

バーブラ・ストライサンドの演技、歌が、とても輝いています。
明るくタバコ好きな今時の大学生と、イギリスの気高い貴婦人を、うまく演じ分けていました。
タイトル曲「♪晴れた日に永遠が見える」は、とてもシンプルなメロディラインなので、歌唱力がないと悲惨なことになりそうなのですが、彼女の力強い歌声はこの曲にとても合っていました。
特に良かった「♪What Did I Have That I Don't Have」という曲は、前世の自分と現世の自分との違いに困惑し、思い悩むデイジーが歌うナンバーでした。

ストライサンドは、本当に多彩な人で、歌手、女優、作曲家、映画監督と、この後も様々な才能を開花させています。

また、マルク博士役のモンタンも、素敵な歌声を披露していました。
あと、ヴィンセント・ミネリ監督らしい、というか、背景や美術、色彩感覚や構成がとても素敵です。
お花がたくさん出てきたり、デイジーの寝室の壁紙も可愛いし、デイジーのファッションも、また面白いのです。

ミュージカル映画としては、ダンスがないせいか、とても落ち着いているのですが、
なぜか後引く魅力を持っています。
不思議な映画です。
ボーイ・ミーツ・ガールの一般的なミュージカル・コメディに飽きてしまった方に、おすすめです。


BARBRA STREISAND - On A Clear Day (You Can See Forever)

『チップス先生さようなら(1969)』Goodbye Mr. Chips

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チップス先生さようなら』とは

ヒルトン作の有名な同名小説を基にした、МGМ製作のミュージカル映画
1939年に同じ原作で一度映画化されているが、こちらはミュージカル映画ではない。

あらすじ

1920年代、イングランド南部にあるブルックフィールド・スクールに勤めるアーサー・チッピングは、独身で真面目な教育熱心の教師だったが、生徒の受けはあまりよくなかった。
ある時、イタリア旅行中、ロンドンに滞在した時、舞台女優のキャサリンと出会う。
その後、ポンペイで再会を果たした二人は急速に惹かれ合う。
彼らは結婚し、学校関係者は堅物教師の突然の結婚に目を丸くする。
キャサリンは、たちまち学校の人気者となるが、有力者のサタウィック卿の脅迫に遭うなど、風当たりも強かった。
この頃から、生徒たちからの評判も良くなり、次期校長の有力候補者にあげられるのだが…

キャスト

アーサー・チッピング ピーター・オトゥール
キャサリン ペトゥラ・クラーク
校長 マイケル・レッドグレーヴ
サタウィック卿 ジョージ・ベイカ
マックス マイケル・ブライアント
ウィリアム ジャック・ヘドレー
アーシュラ シアン・フィリップス

感想

心温まる作品でした。

イギリス的な(決してアメリカ的でない)音楽も素敵でした。

ストーリーがサクセスストーリーでもなく、とびきり明るいものではないので、

ミュージカル化しにくい部類のような気がします。

しかし、主役のピーター・オトゥールペトゥラ・クラークの存在が、ほんわかした幸せな雰囲気を醸し出していました。

キャサリンをミュージカル女優とすることで、どうにかミュージカルシーンを盛り込もうと必死になっている感じもなくもありませんでしたが。

実際、ミュージカルっぽい曲はキャサリンが音楽劇中で歌い踊る「London is London」くらいで、

その他は、非常に落ち着いた(ややもすると、退屈気味の)楽曲が続きました。

この落ち着いた感じが、このストーリーにはとても似合っていたと感じました。

ドラマチックな展開はありませんが、

チップス先生の素朴な人柄や、キャサリンの愛情、2人のかけあいがとても微笑ましくて、

落ち着いた印象を受ける、ミュージカル映画となっていました。


PETULA CLARK - LONDON IS LONDON (from Goodbye Mr Chips)