ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『ミュージック・マン(1962)』The Music Man

『ミュージック・マン』とは

1957年初演の同名ブロードウェイ・ミュージカルを映画化したもの。
舞台版オリジナル・キャストのロバート・プレストンが同作でも主演。

あらすじ
アイオワ州のリヴァーシティという田舎町に、音楽教授ヒルと名乗る詐欺師がやってきた。
彼は、学生たちによるブラスバンドを立ち上げようと人々に吹き込み、
楽器やユニフォームの代金を持ち逃げしようと考えていた。
しかし、司書でピアノ教師のマリアンだけは、彼の話を疑っていた。
ハワードはそんなマリアンに惹かれ、得意の話術で口説こうとするが。。。

キャスト・スタッフ

監督…モートン・ダコスタ

ハワード・ヒルロバート・プレストン
マリアン…シャーリー・ジョーンズ
マーセラス…バディ・ハケット
パロー夫人…パート・ケルト

感想

アメリカにいた時に観ました。

とにかく楽しい60年代のミュージカル映画でした。
元々の舞台版がトニー賞を取っていて良い出来だったので、
その映画化となってもその音楽の輝きは顕在でした。
お話は…さておきー。楽曲が素晴らしいです。

特に、印象的だったのが、冒頭のRock Island。
通常、オープニングって、「ようこそ劇場へ~」みたいな曲が多いのですが、
この作品では、なんと伴奏なし。
汽車に乗っているシーンで歌うナンバーなので、汽車の揺れに合わせて歌っているのですが、
これが、どことなく、ラップっぽく聞こえたり…とにかくユニークなんです。
この一曲で、物語が始まるにあたっての説明がなされているのが、すごいなと思いました。

一見無関係に見えますが、『イン・ザ・ハイツ』などの作者リン・マニュエル・ミランダに影響を与えたのかもしれませんね。


"Rock Island" The Music Man (opening scene)

この他にも、「Till There Was You」「Seventy Six Trombones」「You Gotta Troubles」などなど、
"神曲"の宝庫。

何度聞いてもわくわくする「76 Trombones」。


76 Trombones - The Music Man

「Ya Gotta Trouble」この曲も、ラップっぽいユニークな一曲です。


The Music Man "Ya Got Trouble"

ブロードウェイミュージカル史上、最もロマンチックな楽曲のベスト5に絶対に入るであろう「Till There Was You」。『プロデューサーズ』の「Till Him」はこの曲へのオマージュなのではないかと勝手に推測してます。


The Music Man Shirley Jones "Till There Was You"

また、配役がやはり的確だったと思いました。
詐欺師と生真面目な司書の対比が面白みなのですが、私の中でシャーリー・ジョーンズは『回転木馬』のジュリーのイメージだったので、まさにこれは適役と感じました。
2000年代にテレビ用にリメイクされたらしいのですが、こちらだと『プロデューサーズ』のマシュー・ブロデリックと、舞台版『ウィキッド』のクリスティン・チェノウェスの組み合わせで、全然イメージに合わないのです。(すごく個人的な意見ですけど。ブロデリックは悪いことできない坊や、チェノウェスは小悪魔的なイメージがどうしてもある)

瑣末なことばかり書いてしまいましたが、話はともかく、楽しい音楽で気持ちを明るくしてくれるミュージカル映画には違いありません。

『いつも上天気(1955)』It's Always Fair Weather

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/en/c/cc/It%27s_Always_Fair_Weather_%281955_film%29_poster_%28yellow_background%29.jpg

『いつも上天気』とは

1955年MGM製作のミュージカル映画
ジーン・ケリー監督&主演作。

あらすじ
除隊した3人の兵士、テッド、ダグ、アンジーは、ある酒場で10年後に再会することを約束して別れる。
そして、10年後、テッドはボクシング選手のマネージャーに、
ダグはテレビ会社の重役に、アンジーは田舎の食堂の亭主に、それぞれなっていた。
例の酒場で再会を果たすが、10年前とは全く違う生活スタイルになっていたため、
話をしてもさっぱり面白くはなかった。
3人で行ったレストランで、テッドはテレビのディレクターであるジャッキーに出会い、
早速口説くがあっさり振られてしまう。
ところが、ジャッキーの担当する番組の出し物がぱっとしないため、
彼女は彼ら3人に、この再会話をさせようと考えを練るのだが。。。

 

 

キャスト・スタッフ

監督…ジーン・ケリースタンリー・ドーネン

テッド…ジーン・ケリー
ダグ…ダン・デイリー
ジャッキー…シド・チャリシー
メイデリン…ドロレス・グレイ
アンジー…マイケル・キッド

感想

これも、アメリカにいた時、図書館で借りてきて観ました。
観てみたら、この作品、今までのMGMミュージカル映画とは趣向が違いました。
ケリーとチャリシーのロマンスではなく、男3人の友情物語がメインという点で。
今までのMGMの型を打ち破って、人生の機微を表そうとした、ある意味で挑戦作だったんでしょうね。
でも、こういうパターンのMGM作品って、これ以外にはほとんどない気がします。
そういう意味で、とても貴重な存在。
うまく収まるのかな、と思ったら、意外な方向に進んでいったり。
しばらく会わずにいた人に久しぶりに会って、なんとなく以前会った時とは違うなぁと思ってしまったり…なんとなく分かるなぁと思ってしまいました。

この映画でも、ジーン・ケリーのダンスは存分に堪能できました。
ローラースケートを履いてのタップはさすがでした。
また、書かずにはいられないのは、シド・チャリシーの圧倒的な美しさ。
雨に唄えば』でのジーン・ケリーとのダンスも素晴らしかったですが、今回のダンスもかっこよかったですね。

一番印象深かったのは、ラストシーンでそれぞれが清々しい顔で、別々の方向へ振り返らずに歩いて行くシーン。
人生において、あまたある出会いと別れを感じました。


It’s Always Fair Weather (1955) – I Like Myself (Gene Kelly)