ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『ザッツ・エンターテイメント(1974)』That's Entertainment!

『ザッツ・エンターテイメント』とは

1974年公開のMGMミュージカル映画の名場面を集めた作品。
MGMのミュージカル映画のうち75作品が、当時活躍した俳優たちにより紹介される形式で進行していく。

キャスト

フレッド・アステア
ビング・クロスビー
ジーン・ケリー
デビー・レイノルズ
ミッキー・ルーニー
ジェームズ・スチュワート
ライザ・ミネリ
エリザベス・テイラー
ドナルド・オコナー

感想

それぞれの俳優が、共演したり、親交のあった俳優について紹介しています。

ジーン・ケリーフレッド・アステアは、それぞれをお互いに紹介しあっているのですが、共演した映画は、たったの2作品だけなのにもかかわらず、リスペクトし互いの才能や努力を認め合い、意識し合っていたことがわかりました。
2人が共演したシーンが取り上げられているのですが、これが鳥肌ものです。
1人だけでも圧倒的な迫力なのに、2人そろったら、どうでしょう。
これぞ、プロフェッショナルの最高峰と言えるのではないかと思いました。

↓trailerです。


That's Entertainment! Official Trailer #1 - Bing Crosby Movie (1974) HD


ライザ・ミネリミッキー・ルーニーは、ジュディ・ガーランドについて語っていました。
ジュディは、この映画の公開の5年前に亡くなっているので、本人出演が叶わなかったことが、本当に残念です。
でも、もし生きていたとしても、MGMとケンカ別れしたから、出演したか否かはわかりませんが。
ジュディが、姉たちとともにガム・シスターズを組んで、ラ・クカラチャを歌っている貴重映像から、専属契約を競い合ったディアナ・ダービンとの共演シーン、そして日本では入手困難な『踊る不夜城』や『ガール・クレイジー』の出演映像など、興味深いシーンを観ることができます。
いろいろなジュディを観ることができるのですが、その天性の何かを感じました。
このシーンを見ると、夭折してしまったことが本当に悔やまれます。


この映画を観て、感じたことは、MGMの規模の大きさ。
他の映画会社のミュージカル映画とは、量も質も敵わないというMGM作品の数々は、
多くの優秀な人材―俳優やスタッフたちによって築き上げられたんだな、と。
だって、スター俳優と言われる人たちが、MGMには何人もいるんですから、全体の規模は計り知れません。
フレッド・アステアをはじめとする、当時を知る俳優たちのインタビューもあるのですが、彼らが過去の出演を振り返る様子は、まるで青春時代を思い出すような感じで、ミュージカル映画の撮影にどれだけの心血を注いできたのか、感じることができました。


戦中から戦後にかけて、庶民の最大の娯楽として発達したミュージカル映画は、
今では当時を物語る、ひとつの資料と化していると言われてしまうかもしれませんが、
私は「ミュージカルは終わらない!」と言いたいです。
映像の中に封じ込められている、俳優やスタッフたちの情熱を、とても強く感じられるから。
単に演技だけでなく、才能を要される歌やダンス、それに加えられた当時の創意工夫は、現代に生きる私を魅了してやみません。


最後に蛇足ながら言いたいのは、日本でDVD化されていないミュージカル映画が大変多いことです。
とくに、ジュディ・ガーランドの出演作(特にジーン・ケリーと共演している『フォー・ミー・アンド・マイ・ギャル』を観たい!!)や、『オズの魔法使』以前のミュージカル映画のDVD化が殆どされていないことが、残念でなりません。

『晴れた日に永遠が見える(1970)』On A Clear Day You Can See Forever

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/en/thumb/5/5d/ClearDayPoster.jpg/220px-ClearDayPoster.jpg

『晴れた日に永遠が見える』とは

1970年公開のミュージカル映画
1965年に開幕した同名のブロードウェイ・ミュージカルを映画化したもの。
ヴィンセント・ミネリ監督。

あらすじ

デイジーは、ニューヨークに住む明るい大学生。
医学部での講義中に、マルク博士が行っていた催眠術の実験にかかってしまう。
今まで誰もかからなかった催眠術が成功したことに、マルク博士は驚く。
デイジーは、婚約者ウォーレンの就職のために、自身のタバコ中毒を克服しようとしていたので、催眠術で禁煙できないか、マルク博士に頼み込む。
マルク博士は、デイジーに催眠術をかけるが、催眠術をかけられたデイジーは妙なことを話し始める。
話を聴くうちに、デイジーの意識は、18世紀のイギリスに生きたメリンダという公爵夫人に移行したことがわかる。
つまり、それは彼女の前世の姿だった。
その他も、予知能力や花を速く成長させるなど、デイジーの超能力が明らかになる。
何度もデイジーと面会し、催眠術をかけ、彼女の前世であるメリンダに会ううちに、
マルク博士は現代に存在しない、高貴なメリンダに恋していることに気づく。
デイジーは、超能力で、博士が自分のことを想っていると感じとり、博士の存在が気になりだす。
しかし、ある日、催眠術にかけられた自分と博士の会話が録音されたテープを偶然聞いてしまい、博士が恋しているのは自分の前世であるメリンダであり、現在の自分自身ではないことを悟ってしまう。

キャスト

デイジー・ギャンブル/メリンダ バーブラ・ストライサンド
マルク・シャボー博士 イヴ・モンタン
ウォーレン ラリー・ブライデン
タッド ジャック・ニコルソン
ヒューム博士 ボブ・ニューハート
ロバート・テントリース ジョン・リチャードソン

感想

最初にこの映画を観たのは、単にタイトルに惹かれたからです。
『晴れた日に永遠が見える』なんて、とても素敵な響きですよね。

バーブラ・ストライサンドの演技、歌が、とても輝いています。
明るくタバコ好きな今時の大学生と、イギリスの気高い貴婦人を、うまく演じ分けていました。
タイトル曲「♪晴れた日に永遠が見える」は、とてもシンプルなメロディラインなので、歌唱力がないと悲惨なことになりそうなのですが、彼女の力強い歌声はこの曲にとても合っていました。
特に良かった「♪What Did I Have That I Don't Have」という曲は、前世の自分と現世の自分との違いに困惑し、思い悩むデイジーが歌うナンバーでした。

ストライサンドは、本当に多彩な人で、歌手、女優、作曲家、映画監督と、この後も様々な才能を開花させています。

また、マルク博士役のモンタンも、素敵な歌声を披露していました。
あと、ヴィンセント・ミネリ監督らしい、というか、背景や美術、色彩感覚や構成がとても素敵です。
お花がたくさん出てきたり、デイジーの寝室の壁紙も可愛いし、デイジーのファッションも、また面白いのです。

ミュージカル映画としては、ダンスがないせいか、とても落ち着いているのですが、
なぜか後引く魅力を持っています。
不思議な映画です。
ボーイ・ミーツ・ガールの一般的なミュージカル・コメディに飽きてしまった方に、おすすめです。


BARBRA STREISAND - On A Clear Day (You Can See Forever)