ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『ソウルガールズ(2012)』The Sapphires

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ソウルガールズ』とは

2012年のオーストラリアのミュージカル映画

2004年にメルボルンで初演されたトニー・ブリングスの同名の舞台を基にしている。

あらすじ

1960年代のオーストラリア。アボリジニの居住区に暮らすゲイル、シンシア、ジュリーの三姉妹は歌唱コンテストに出場するが、先住民であることから差別を受け、歌の実力はあるのにコンテストで勝利することができない。そんなところ、そのコンテストの司会をしていたデイヴと出会い、いところで同化政策によりアボリジニの家族から引き離され白人として育てられていたケイも加わり、ソウルを歌う4人のガール・グループ「ザ・サファイアズ」としてベトナムのアメリカ軍を慰問する仕事に就くことになる。

キャスト

クリス・ラブレイス オダウド

ゲイル デボラ・メールマン

ジュリー ジェシカ・モーボイ

ケイ シャリ・セベンス

シンシア ミランダ・タプセル

感想

アボリジニとして差別を受け、悔しい気持ちを胸にベトナムに乗り込む女性音楽グループのお話。

冒頭曲以外は、ステージでの歌唱なので、spontaneousなミュージカルシーンはありません。

オーストラリアでのアボリジニへの差別がこんなに残酷なものだったのかと、映像で見せられるとゾッとしました。

オーストラリアの歴史には全く詳しくないのですが、あまりに無知なのでいくつか本を読んでみようと思いました。

彼女たちは、1960年代に実在したアボリジニの女性音楽グループ、ザ・サファイアズをモデルにしているということですが、結構脚色してあるので内容は事実とは異なる点が多いようです。

実在する彼女たちの姿がこちらです。(おそらく2012年に撮影したもの)

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確か映画の最後に、脚本はそのメンバーのうちのどなたかの子孫の方が書かれたような記述がありました。

邦題しかり、『ドリームガールズ』と比較されることが多いようなのですが、製作者は全く異なる作品であると強調しているようです。

無名の女性音楽グループがスターダムに昇っていくところや、プロデューサーとメンバーの一人ができちゃうところなど、確かに似ているといえば似ているかしら。

残念ながら、本作の歌唱は、『ドリームガールズ』のジェニファー・ハドソンの歌声を耳にした時の衝撃とは全く比べ物になりません。

さらに、既存曲が多いので、ミュージカル映画として何回も見たいと言う類のものではありませんが、アボリジニの社会背景やオーストラリアの歴史を垣間見るには真面目に作られた良い作品だと思いました。


The Sapphires - clip: Audition

『プロデューサーズ(2005)』The Producers

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プロデューサーズ』とは

2005年に公開されたアメリカのミュージカル映画

2001年初演のメル・ブルックスによる同名のブロードウェイミュージカルを基にしており、脚本の一部と作詞作曲はメル・ブルックスによる。

ブロードウェイミュージカルは1968年の同名映画(ミュージカル映画ではない)を基にしており、その1968年の映画はメル・ブルックスが監督している。

本作は、ブロードウェイミュージカル『コンタクト』の振り付けなどで有名なスーザン・ストローマンの映画監督デビュー作である。

主演のマックスとレオはオリジナルブロードウェイキャストの2人が演じており、音楽もほとんど舞台版のものを使用している。

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あらすじ

かつてはブロードウェイの王と呼ばれるほどの名プロデューサーだったマックス・ビアリストックは、なかなかヒット作を出せずにいた。そんな時、マックスの事務所をたまたま訪れた会計士レオの「ヒット作を作るよりも、駄作を作った方が結果的に儲かる」というアイディアに飛びつき、史上最悪のショーを作る決心をする。違法であるため、ためらっていたレオだったが、単調な会計士としての仕事と縁を切り、密かに憧れていたブロードウェイプロデューサーを目指し、マックスと一緒に最悪の作家、最悪の演出家、最悪の役者を探し始めるのだった。こうして完成した『ヒトラーの春』は間違いなく失敗するはずだったのだが。。。

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キャスト

マックス・ビアリストック ネイサン・レイン

レオ・ブルーム マシュー・ブロデリック

ウーラ ユマ・サーマン

フランツ・リープキン ウィル・フェレル

ロジャー・デ・ブリー ゲイリー・ビーチ

カルメン・ギア ロジャー・バート

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感想

この作品以上に、ブロードウェイへの愛が詰まっている作品はないのではないでしょうか。

プロデューサーズ』はミュージカル通の方ほど、たくさんツッコメて笑える作品だと思います。

冒頭の『ファニー・ボーイ(ハムレットのミュージカル版)』から、笑いが止まりません。

ファニー・ブライスの人生を描いたミュージカル『ファニー・ガール』をもじっていますね。

実際のブロードウェイのオリジナルキャストの2人を主演に迎えているので、普段からミュージカルを見慣れていない日本人にとっては、少々大げさな表現だなと感じる場面もあるかもしれませんが、、、この機会に慣れましょう!笑

その2人というのが、ブロードウェイの芸達者俳優であるネイサン・レインと、『セックス・アンド・ザ・シティ』のキャリー役でおなじみのサラ・ジェシカ・パーカーの夫である、ベビーフェイスのマシュー・ブロデリック

このミュージカルは、この2人のために書かれたのではないかと思ってしまうほど、適役です。

それを「We Can Do It」の絶妙な掛け合いから見せてくれます。

さらに、レオの妄想が爆発する「I Wanna Be A Producer」は歴史に残るミュージカル映画のワンシーンでしょう。

マシュー・ブロデリックのダンサーの一面が垣間見られますし、豪華な演出、装置で非常に華やかです。

そして、周りにはbeautiful girls wearing nothing but pearlsがたくさん。(彼女たちは本当にシースルーのレオタードに真珠を縫い付けたものを着ています。)

「Guten Tag Hop Hop」「Keep It Gay」はもう、どうして笑わないでいられるでしょう。

面白すぎです。

まず、ゲイの演出家のロジャー・デ・ブリーのdebrisゴミとかクズっていう単語とかけている名前からして笑えます。しかも、ミドルネームはエリザベス。

また、この映画はブロードウェイのルールを教えてくれる一曲もあります。

それが「Never Say Good Luck On Opening Night」です。

これはブロードウェイ界隈では常識、マナーなので、知っておきたいところです。

舞台初日で「Good luck!」は縁起が良くないとされ、禁句になっています。

代わりに「Break a leg!」と言うことが縁起の良いこととされています。

おそらく時間の関係で、舞台版から削除された一曲が「King Of Broadway」です。

この曲は、過去の栄華を振り返るマックスの独白です。

DVDには未公開シーンとして入っていましたが、良い出来だったので、なぜ入れなかったのか少し残園です。


The Producers - Trailer

 

確かにこの映画の笑いは、なかなか日本人には通じにくいところもあるかもしれませんが、このミュージカルがブロードウェイで開幕した2001年はアメリカ同時多発テロ事件が起きた年でした。

マンハッタン全体がどんより暗い雰囲気になっていた時、この『プロデューサーズ』がブロードウェイの劇場街から、ニューヨーカーの疲弊した心を癒したのです。