ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『プラハ!(2001)』Rebelove

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プラハ!』とは

2001年のチェコミュージカル映画
チェコでは20人に1人が観たと言われるほどヒットした。

あらすじ
舞台は1968年。
女子高生のテレザ、ブギナ、ユルチャの3人は卒業を目前に控えていた。
ある日、テレザは通りすがりのシモンに一目ぼれしてしまう。
しかし、実はシモンは脱走兵で警察に追われる身だった。。。

キャスト・スタッフ

監督…Filip Renc

テレザ…Zuzana Norisova
シモン…Jan Revai
ボブ…Jaromir Nosek
ブギナ…Alzbeta Stankova
ユルチャ…Anna Vesela
エマン…Lubo Kostelny
オルダ…Martin Kubacak

感想

シーンがレトロでポップで可愛いのは、なんともチェコらしい。
ロシュフォールの恋人たち』的な可愛さがあります。
小物とか細かいところが、いちいち可愛い。
そういうカラフルな世界を楽しみたいなら、この映画はいいのかなと思います。

けれど、それ以外は、かなりチープで低俗な青春映画という印象しか残りませんでした。
確かに、背景にあるのは当時の社会情勢や戦争があるけれど、
それにしてはストーリーが安すぎる感じが否めないですね…


Zuzana Norisová - Pátá - OMPS Rebelové

『サラフィナ!』Sarafina!

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サラフィナ』とは

1992年のミュージカル映画
1988年初演の同名のブロードウェイ・ミュージカルを映画化したもの。
南アフリカ共和国での反アパルトヘイト運動を描いた、社会派ミュージカルとしてロングランされました。
タイトルロールであるサラフィナ役のクマロは、ブロードウェイ初演でも同役を演じていて、
この作品でトニー賞助演女優賞にノミネートされました。
また、『天使にラブソングを』シリーズでおなじみの、ウーピー・ゴールドバーグが出演しています。
サラフィナとは、ズールー語で、小さな天使という意味。


あらすじ
1968年。南アフリカ共和国ヨハネスブルグ
黒人居住区ソウェトに住むサラフィナは、学校の人気者だった。
彼女が通う高校にも人種隔離政策が影を落とし、校庭を白人兵が見回ることが日常化していた。
その中で、歴史を教えるメリー先生は、政府指導のカリキュラムに従わず、アフリカの本当の歴史を生徒たちに教えた。
啓蒙された生徒たちは、文化祭で、釈放される指導者マンデラを主人公にしたミュージカルを上演することを決める。
しかし、そんなある日、メリー先生が子供たちに危険思想を植えつけたという理由から警察に連行されてしまう。
生徒たちは抗議を起こしたが、対抗して兵士たちは生徒たちに銃口を向けるのだった。。。

キャスト・スタッフ

監督…ダレル・ジェームス・ルート

サラフィナ…レレティ・クマロ
メリー先生…ウーピー・ゴールドバーグ
サラフィナの母…ミリアム・マケバ
サベラ…ボンゲニ・ンゲマ
校長…ジョン・カニー

感想

この作品は、昔観たきりで、私の中では怖い映画に分類されてしまっています(^^;

やはり、アパルトヘイトの現実を伝えるために、暴力シーンがリアルに描かれているので。

しかし、今一度、思い返しながら、この作品について感想を書いてみたいと思います。

 

まず、この『サラフィナ』というミュージカルについてなのですが、

すごいと思うのは、この作品のブロードウェイ初演1988年当時は、

現地・南アでは、まだアパルトヘイトへの反対運動の最中だったということです。

後に大統領となるマンデラの釈放は、1990年に入ってからです。

つまり、このミュージカル自体が、リアルタイムで行われた反アパルトヘイト運動とも言えるのです!!

これ、すごくないですか!!??

ミュージカルが社会を動かした、ものすごく具体的な例と言えると思います。

 

やはり、アフリカ系アメリカ人のウーピーにとっても、この作品は特別なものであったらしく、

この作品に出演できなければ、『天使にラブソングを2』には出ないと言ったほどだったそうです。

 

ロケは、まさに作品の舞台である南アのソウェトで行われていて、

砂の色とか、家並みなどから、現地の風が感じられました。

ただ、舞台ミュージカルの映画化にしては、ミュージカルシーンが少ない印象を受けました。

ナンバーの数々は、全てアフリカンミュージック色が強く、聴きごたえがあるものばかりで、素晴らしかったです。

「Freedom is Coming」は、人種隔離政策による苦境から自由を勝ち取ろうという、熱い思いがあふれていて、非常に感動的です。

これだけの群舞を、liveで観られたら、どんなにか鳥肌ものだろう!と思いました。

 

アパルトヘイト政策については、文面でしか読んだことがなかったのですが、

この映画を観ることで、政策の虚しさと、肌の色で差別する無意味さを思い知らされます。

アパルトヘイト後、南アの国民が必ずしも幸福になったわけではありません。

しかし、一つの時代が終わり、新しい自分たちの時代が訪れた喜びが、この作品には溢れていて、

現在でも、南アの人々の最も愛する作品の代表になっているそうです。


(最後に、黒人に対するアパルトヘイト政策が有名ですが、これは有色人種に対して行われたのであって、
実際、日本人も差別対象になり、差別を受けた日本人もいたという事実を、書き添えておきたいと思います。)


Sarafina: The Lord's Prayer Song HD