
『The Jonathan Larson Project』とは
2025年オフ・ブロードウェイで初演されたミュージカル。
2018年にFeinstein's 54 Belowで初めてキャストが集い、パフォーマンスが行われ、2019年にキャスト・レコーディングが発売され、コロナ禍を経て、2025年オフ・ブロードウェイ公演が行われた。
『Rent』や『tick, tick, boom...』などで知られるミュージカル音楽家ジョナサン・ラーソンが生前制作したミュージカルからのナンバーを寄せ集めたものであり、台詞や明確な筋書きはない。そのため、ソング・サイクル的作品。
考案者はJennifer Ashley Tepper。
演出はJohn Simpkins。

キャスト
Adam Chanler-Berat
Taylor Iman Jones
Lauren Marcus
Andy Mientus
Jason Tam



感想
ジョナサン・ラーソンが手がけたミュージカルとしてまず思い浮かんだのは『Rent』、そして『tick, tick, boom...』くらいでした。でも、『tick, tick, boom...』で描かれている通り、彼はもっと多くのミュージカルを書こうとしていました。例えば、ワークショップのみ公演に結びつかなかった『Superbia』など一部の作品の楽譜や脚本、ジョナサン・ラーソン自身が歌ったデモ・テープなどは、ワシントンD.C.にあるアメリカ議会図書館に所蔵されており、そこまで足を運べば見ることができます。*1この『The Jonathan Larson Project』は彼の書いたミュージカル楽曲を寄せ集めたもので、軽く振りはついていますが、コンサートに近い形でした。作品中には、議会図書館に収蔵されているジョナサン・ラーソンが歌唱する映像も流れました。
▼本作が紹介されているアメリカ議会図書館の公式ブログ
▼trailer
2018年に54 Belowでパフォーマンスされ、キャスト・レコーディングが発表されて以来、公演が熱望されてきた作品がついにオフで上演されるということで楽しみにしていました。レコーディングに参加したキャストとしてはAndy MientusとLauren Marcus*2が残り、その他は新たにメンバーを迎えたようです。特にあらすじはなく、曲間の繋がりはないと思いましたが、歌唱するキャストに呼応する形で周りのキャストも盛り上げていました。これまでジョナサン・ラーソンが独唱するデモしか存在しなかった楽曲の数々を、5人のキャストが重唱してreviveしていました。
▼開演前


▼introduction
ミュージカル・ナンバーのリストもあげておきます。
- Green Street
1983年、ジョナサン・ラーソンが23歳の時に書いたナンバー
- One of These Days
1980年代にジョナサン・ラーソンが6年以上を費やして書いたミュージカル『Superbia』からの楽曲。Playwrights HorizonやPublic Theaterでワークショップが行われたものの公演には繋がらなかった。この曲は発明家である主人公Josh Outが歌うナンバー。Josh Outは古い世界のものを蘇らせることに夢中になり、社会を危険に陥れる人物として描かれる。
- Break Out the Booze
- Casual Sex, Pizza and Beer
- Out of My Dreams
- Valentine's Day
大学時代に学生のためのキャバレーとして書いたうちの1曲。『Rent』の初期のバージョンにも入っていたが、後に削除された。
- Falling Apart
- Hosing the Furniture
複数の作曲家が楽曲提供したレヴュー『Sitting on the Edge of the Future』で使われた楽曲。この楽曲でジョナサン・ラーソンはSteven Sondheim Awardを受賞した。
- Find the Key
『tick, tick, boom...』でカットされた楽曲。
- The Vision Thing
- Iron Mike
エクソンバルディーズ号原油流出事故のニュースに影響を受けたジョナサン・ラーソンが作曲したもの。1990年に「Naked Angels Earth Day Show」で披露された。
- Likability/La Di Da
「La Di Da Rap」は1989年、ブロードウェイ・レヴュー『National Lampoon's Tricentennial Revue』のために依頼を受け、作曲した4曲のうちの1曲。
- White Male World
1991年ニューヨークで上演されたショー『Skirting The Issues』では10人の作曲家からの楽曲が使われたが、この曲はジョナサン・ラーソンの担当分だった。
- The Truth Is a Lie
- Rhapsody
- SOS
ジョナサン・ラーソンはジョージ・オーウェルの小説「1984」の舞台ミュージカル化に取り組んでいたが、作品の権利を取得することができなかった。この曲はミュージカル『1984』のラストで、主人公Winston Smithによって歌われる。
- Pure Vida
1991年に作られたポップソング。
- Love Heals
- Piano
- Destination: Sky
各曲の解説は以下のページの一部を引用、翻訳しました。
▼アルバム・キャストによる「Greene Street」
キャストが5人だけとは思えないような圧巻のパフォーマンスで、ずっと終わらないでほしいと願ってしまうほどでした。編曲も見事。

▼初演キャストによる「One of These Days」
ジョナサン・ラーソンの未発表曲について調べるうちに、『tick, tick, boom...』でも描かれているように彼が何度も何度も作品をrejectされても挑み続ける不屈の精神の持ち主だったこと、環境問題をはじめとした社会で起きている問題にも常に関心を持ってそれを作品に反映していたことを知りました。オペラ『ラ・ボエーム』をミュージカル化したように、古典小説『1984』をミュージカル化していたかと思えば、近未来を描いたSFミュージカル『Superbia』のような作品を手がけるなど、創作の幅が広く、その多才ぶりに圧倒されました。彼にもっと時間があったらきっと、、、なんて考えてしまいますが、今はソンドハイムと一緒に俗世とは違う穏やかな世界でミュージカル制作を楽しんでいるに違いないと思うのです。
▼キャスト・レコーディングはストリーミング配信されています。とてもおすすめです。
▼終演後

