『Uncle Vanya』とは
1899年にモスクワで初演された、チェーホフによるプレイ。
今回は2024年にブロードウェイで再演された、Heidi Schreckによって翻訳・翻案されたプロダクションを観劇した。
演出はLila Neugebauer。
あらすじ
元大学教授のAlexanderは、関節リウマチなどをもつ老体で、若い妻のYelenaらとともに屋敷で暮らす。
同じ屋敷には他に、Alexanderの前妻との娘Sonia、前妻の母Maria、前妻の兄Vanyaらも暮らし、SoniaやVanyaはAlexanderの研究の手伝いをしていた。
Vanyaは密かにYelenaに恋をしていた。
屋敷には医師で植樹もしているAstrovが頻繁に出入りしている。
Soniaは彼に憧れており、そのことをYelenaに告白するが、器量に自信のない彼女は彼に想いを伝えるつもりはないという。
YelenaはSoniaの気持ちを自身が代わりにAstrovに伝えると申し出る。
YelenaはAstrovにSoniaの気持ちを伝えるが、Astrovにはその気がないことがわかり、さらにAstrovにYelenaは告白される。
実はYelenaもAstrovに想いを寄せていたが、Soniaの手前、自分の気持ちを抑え、もう2度と彼に会うのはやめようと決意する。
YelenaとAstrovの2人が最後の抱擁を交わしている様子をVanyaは目撃する。
キャスト
Vanya Steve Carell
Yelena Anika Noni Rose
Sonia Alison Pill
Astrov William Jackson Harper
Alexander(Professor Serebryakov) Alfred Molina
Maria Jayne Houdyshell 『The Music Man』
Marina Mia Katigbak
Waffles(Telegin) Jonathan Hadary
Neighbor Spencer Donovan Jones
感想
『ワーニャ伯父さん』といえば名作古典戯曲ですし、最近では映画『ドライブ・マイ・カー(2021)』に登場したことでも記憶に新しいかと思います。今回のプロダクションは『What the Constitution Means to Me』の制作と主演で知られるHeidi Schreckが翻訳・翻案したものを観劇しました。彼女は一昔前、シベリアで英語を教えた後、サンクトペテルブルクでジャーナリストをしていた経験があり、その頃にこの『ワーニャ伯父さん』を手掛けたいと考えていたそうです。彼女の新たな翻案で、舞台設定は現代に変わり、台詞も現代的な言葉遣いになりました。
▼footage
▼opening nightの様子
▼開演前
現代に変わったとわかるのは主に衣装。例えばAstrovはスクラブを着ていました。
事前に戯曲を日本語で読んでいましたが、こんなに笑える作品だったとは今回観るまで知りませんでした。もちろんやり場のない閉塞感はあるのですが、その中にも可笑しみがありました。
演者ではSonia役のAlison Pillの瑞々しい演技が印象的で、個人的には今回1番良いと思った点。無邪気な義理の娘を愛おしく思うYelenaが自分の気持ちを抑える演技も素晴らしかったです。タイトルロールのSteveは終盤、感情的に甲高い声で捲し立てるのですが、彼がVanyaを捉え切れているかと聞かれると何とも言えませんでした。
場面転換では、端役がヴァイオリンやコンサンティーナで、オリジナル音楽を奏でていて美しかったです。
設定が現代に変わり、Fワードが出てくるなど現代英語の台詞ですと、従来のものよりわかりやすいとは思いましたが、特別な脚色・演出的な面白みを見出せずじまいでした。
▼休憩中