『A Man of No Importance』とは
2002年にブロードウェイで初演したミュージカル。
1994年の同名映画を基にしている。
作詞はリン・アーレンズ、作曲はスティーヴン・フラハーティ、脚本はテレンス・マクナリー。
今回はオフブロードウェイのクラシックステージカンパニーでの上演。
演出はジョン・ドイル。
あらすじ
舞台は1964年のアイルランド、ダブリン。
教会を拠点に活動する劇団の演出家であるアルフィーは、内容が冒涜的であるという理由で教会の牧師らに反対されながらも、オスカー・ワイルドの『サロメ』を上演しようと考えている。
アルフィーの姉のリリーは独り身の弟のことが心配で、アルフィーと一緒に暮らしながら、自身の結婚を先延ばしにしている。
普段はバスの運転手として働くアルフィーは、ある日仕事中にアデルという女性に出会い、一目で『サロメ』のタイトルロールに抜擢したいと考え声をかける。
アデルは驚き戸惑いながらも、アルフィーに諭されて劇団に参加することを承諾する。
一方、サロメの相手役として、運転手の同僚のロビーに声をかけるが、うまくかわされて逆にパブに飲みに行こうと誘われる。
アルフィーはそこでブレトンという男性にナンパされ、自身のセクシャリティを自覚しつつも逃げ帰る。
夜、夢の中に現れたオスカー・ワイルドに諭され、自身の気持ちに正直になることを決意したアルフィーだったが・・・
キャスト
Adele Rice Shereen Ahmed
Miss Oona Crowe Alma Cuervo
Mrs. Curtin Kara Mikula
Peter/Breton Beret Da'von T. Moody
Alfie Byrne Jim Parsons
Mrs. Grace Mary Beth Peil
Mr. Carney Thom Sesma
Robbie Fay A. J. Shively
Father Kenny Nathaniel Stampley
Mrs. Patrick Jessica Tyler Wright
Ernie Lally Joel Waggoner
Lily Byrne Mare Winningham
Baldy O'Shea William Youmans
感想
この前に観ていた『Sesame Street the Musical』が12時15分頃終わり、そこからダッシュでタイムズスクエアに行き、ユニオンスクエアまでメトロでくだり、何とか13時の開演に間に合いました。
こちらの作品は、2022年9月にTwitterで開催された「アーレンズとフラハーティのスペース」でミソッパさんに強くお勧めされていたので、是非観てみたくて日本にいる時、事前に予約しておきました。
下の動画にあるように、劇場は「コ」の字型をしていて、観客は3つの方向から舞台を観る形になります。
私はステージ向かって下手がわの辺から観劇しました。
舞台上には10個前後の椅子が並べられているのみで、大きな舞台セットはありませんでした。
舞台の奥には白い布1枚の幕があるのみで、非常にシンプル。
ただ音楽や演者の話す英語のアクセントで、アイルランドの雰囲気が醸し出されていました。
このようなシンプルなセットゆえに、ここがバスの車内なのか、教会なのか、劇団の集いなのか、視覚的なヒントが少なくて、台詞から理解する必要があったため、私には少し難しかったです。
今振り返ると、1960年代という時代に、同性愛者であること、それを隠して家族にもカミングアウトできずに生きていくことを余儀なくされたアルフィーの気持ちを想像すると、胸が苦しくなります。
それとともに、この作品が初演された2002年、まだ「アウティング」という言葉が一般的でなかったことを考えると、この20年でのLGBTQ+を巡る状況の変化についても思いを巡らせてしまいました。
個人的には「Love Who You Love」という歌が好きです。
なんてベタなタイトル…と思われるかもしれませんが、この歌は最初アルフィーが、故郷に恋人がいるアデルに向けて歌うのですが、終盤でリプライズされ、アウティングされたアルフィーに対して、未婚の母になるかもしれないアデルが歌います。
アルフィーとアデルはもちろん男女の関係はないですし、おそらくきっとこの後会うこともないでしょうし、ただ同性愛者と未婚の母という世間から白い目で見られる存在同士として、このリプライズの時には通じ合っているものがあり、それが非常に感動的でした。
アンサンブルの一部は手に楽器(ヴァイオリンなど)を持って歌ったり、時には楽器を演奏しながら歌ったりしていました。
楽器もできて歌もできて演技もできて、どんな英才教育の賜物なのかしらとふと思いました。
彼を初めて知ったのはやはりテレビシリーズ「ビッグ・バン・セオリー」のシェルドン役で、ブロードウェイで『Boys In the Band』に出演していたことは知っていたものの、実際に舞台を拝見するのは今回が初めてでした。
私がみた限り、シェルドンの面影は全くなかったです。
彼が歌うイメージはなかったけれど、主演といえど歌うシーンは少なくて、特に無難に歌唱シーンをこなしていました。
姉役はメア・ウィニンガムで、彼女は『Girl from the Norh Country』で観ていましたが、今回も何となくそれに似たテイストの作品でしたね。