『ブリガドーン(1954)』とは
1954年のMGMによるミュージカル映画。
1947年初演の同名のミュージカルを映画化したもの。
監督はヴィンセント・ミネリ。
あらすじ
スコットランドに狩猟のためにやってきたアメリカ人のトミーとジェフは、森の中で道を見失い、とある村に迷い込む。
そこは100年に1度しか現れないという幻の村、ブリガドーンだった。
そこでトミーは美しい娘フィオーナに出会い、一目惚れする。
ブリガドーンに留まるか、現実世界に戻るか迷うトミーだったが、後ろ髪を引かれながらニューヨークに戻ることにするが。
キャスト
トミー ジーン・ケリー
フィオナ シド・チャリシー(歌唱部分の吹き替え:キャロル・リチャーズ)
ジェフ ヴァン・ジョンソン
ジェーン エレイン・スチュワート
ランディー氏 バリー・ジョーンズ
ハリー・ビートン ヒュー・レイン
アンドリュー アルバート・シャープ
ジーン ヴァージニア・ボスラー
感想
学生時代に観ていますが、Apple TVで『シュミガドーン!』が始まったこともあり、改めて観てみました。
▼trailerです
スコットランドにある1日で100年が過ぎ去る幻の村ブリガドーンに迷い込んだアメリカ人が、恋におちる物語。
『マイ・フェア・レディ』や『キャメロット』などを手掛けたアラン・ジェイ・ラーナーとフレデリック・ロウによる音楽はいずれもキャッチーで美しく、作品にとても合っていました。
「Almost Like Being in Love」はスタンダードナンバーになっているので、ご存知の方も多いかと思います。
「Almost Like Being in Love」
上のシーンのラストで、ヴァン・ジョンソンの後ろ姿を映してしまったために、せっかくの名ナンバーが興醒めしてしまいました。
ブリガドーンの空気に染まりつつあって、すっかり恋に酔っているケリーだけに焦点を当てればいいのに、極めて現実的なジョンソンを一緒の画で映されると、なんだか有頂天なケリーが大げさな道化に見えてしまったからです。
また、ブリガドーンに暮らすフィオナ役を演じたシド・チャリシーが夢のように美しく、ブリガドーンそのものを体現しているようで、ジーン・ケリーとのデュエットダンスはこの作品の白眉と言えると思いました。
「The Heather on the Hill」
スコットランドらしいバグパイプの音色やタップダンスも楽しめました。
ただ、公開当時の評価と同じく、やはり映画としての盛り上がりに欠け、どこか今ひとつというのが個人的な印象でした。
こんなに音楽が素晴らしくて役者も揃っているのに、もったいないなと。
脚本の問題が一番大きく、演出の工夫も足りないと感じました。
本作は同年公開の『掠奪された七人の花嫁』と同時に制作されましたが、MGMでは『ブリガドーン』により予算が充てられていましたが、蓋を開けてみると低予算で作られた『掠奪された七人の花嫁』の方がミュージカル映画史に名前を残す結果となりました。
ダンサー集団の中に、『ウエストサイド物語』でお馴染みのジョージ・チャキリスが出演していたようなのですが、見つけることができませんでした。(もし見つけられた方がいらっしゃいましたらぜひ教えてください。)
この時は主演と端役ダンサーという関係だったジーン・ケリーとジョージ・チャキリスが13年後、『ロシュフォールの恋人たち』で対等に共演することを思うと感慨深いなと思ったりしました。
ちなみに『掠奪された七人の花嫁』には後に『ウエストサイド物語』でリフを演じることになるラス・タンブリンが7人兄弟の1人として出演しています。