ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『キャメロット(1967)』Camelot

「camelot 1967」の画像検索結果

キャメロット(1967)』とは

1967年のアメリカのミュージカル映画

アーサー王伝説をモチーフにした、1960年ブロードウェイ初演の舞台ミュージカルを基にしている。

舞台ミュージカル版同様、T.H.ホワイトによる『永遠の王』が原作。

舞台版のオリジナルキャストのグィネヴィアは、ジュリー・アンドリュースが演じている。

脚本・作詞はアラン・ジェイ・ラーナー、作曲はフレデリック・ロウということで、音楽は『マイ・フェア・レディ』のコンビが手がけている。

アカデミー賞3部門(編曲賞、衣裳デザイン賞、美術賞)、ゴールデングローブ賞では最優秀主演男優賞を含む3部門を受賞している。

監督はジョシュア・ローガン。

あらすじ

アーサー王が友人であり実の兄弟のように思うランスロットとの戦争に向かっている場面から物語は始まる。

幼少期から見守ってきてくれた森の精マーリンと語り合いながら、なぜこのような状況に陥ったのか、その経緯を遡っていく。

アーサー王は森の中で逃げ惑うグィネヴィアに遭遇する。

グィネヴィアはアーサーが王であることを知らず、「王と結婚させられるが自分はそのつもりはない」と話す。

アーサーは素知らぬふりをしながら、彼女に都キャメロットの素晴らしさを説明し、2人は語り合う内に惹かれ合う。

4年後、グィネヴィアと結婚し、平穏な生活を送っていたアーサーは、円卓会議を思いつき、イギリス全土から騎士を招聘していた。

その噂を聞きつけたフランス人の騎士ランスロットは、アーサーの右腕となるべく、勇んでイギリスへと向かった。

ランスロットの武術の腕前や忠誠心に全幅の信頼を置いたアーサーは、ランスロットを実の兄弟のように可愛がった。

一方、当初はランスロットを嫌がっていたグィネヴィアだったが、彼の実直さや正義感に触れ、知らず知らずのうちに惹かれていた。

それはランスロットも同じだった。

血を分けた兄弟のように思うランスロットと、この世界で最も愛する女性であるグィネヴィア。

2人の幸せを思うと同時に、自身への裏切りを何としても許せないアーサー王は苦渋の決断を迫られることになるのだった。

キャスト(歌の吹き替え)

アーサー王 リチャード・ハリス

グィネヴィア ヴァネッサ・レッドグレイヴマーニ・ニクソン

ランスロット フランコ・ネロジーン・メルリノ)

モルドレッド デヴィッド・ヘミングス

ベリアノ王 ライオネル・ジェフリーズ

マーリン ローレンス・ネイスミス

ダップ ピエール・オラフ

レディ・クラリンダ エステル・ウィンウッド

ライオネル卿 ゲイリー・マーシャル

ディナダン卿 アンソニー・ロジャース

サグラモール卿 ピーター・ブラミロウ

レディ・シビル スー・ケイシー

トマス・マロリー ゲイリー・マーシュ

若い頃のアーサー ニコラス・ビューヴィ

感想

3時間という超大作ではありますが、繰り返し観ている大好きな作品です。

野山の自然の美しさ、城内の荘厳な雰囲気が満載で、セットも豪華で見ごたえのある歴史ミュージカルドラマに仕上がっています。

▼trailerです。


Camelot (1967) Official Trailer - Richard Harris, Vanessa Redgrave Movie HD

私がこの作品を気に入っている理由の一つは、セリフから歌への繋がりが自然であるという点です。

上記の通り、この作品では作詞と脚本が同一人物によってつくられています。

そのため、歌とセリフの線引きを極力排し、spontaneousに歌が歌い出せるように工夫されているのです。

音楽は『マイ・フェア・レディ』を手がけたコンビと同じ方々ですが、『マイ・フェア・レディ』でヒギンズ博士のセリフ的歌唱法といいますか、メロディーに敢えて乗せずにセリフ的に歌う方式を多く取り入れています。

特にリチャード・ハリスがタイトルナンバーでも、この歌唱法をしていました。

▼アーサーがグィネヴィアに都キャメロットの素晴らしさを説く、iconicなタイトルナンバー「Camelot


Camelot, Camelot (1967)

リチャード・ハリスはイギリスが生んだ名優ですが、現代では『ハリー・ポッターと賢者の石』などをはじめとしたハリー・ポッター映画シリーズの初代のダンブルドア校長として世に広く知られているかと思います。

メインキャストがほぼ歌を吹き替えにしている中、リチャード・ハリスのこの歌声はセリフ的でもあり、メロディアスでもあり、明瞭で聴き取りやすく、非常に素晴らしいです。

このタイトルナンバーの中で出てくるこのハスキーヴォイスもたまりません。

相手役グィネヴィアを務めたヴァネッサ・レッドグレイヴ

ジュリー・アンドリュースはまた映画版で下ろされたのか」と思われる方が多いかと思いますが、個人的にはこのキャスティングは好みです。

というのは、グィネヴィアは嫁ぎ先へ行く道中に勝手に逃げ出してしまったり、劇中ではやや奔放な感じで描かれているのですが、それがこのレッドグレイヴのアンニュイな佇まいに非常に合っていると感じるからです。

彼女の歌の吹き替えは、おなじみのマーニ・ニクソンです。

マイ・フェア・レディ』のオードリー・ヘップバーン、『ウエストサイド物語』のナタリー・ウッド、『王様と私』のデボラ・カーといった錚々たる面々の歌声を吹き替えてきた彼女、この映画でも活躍しているんです。

ランスロットの歌声が何ともセクシーでずっと好きだったのですが、実際は別の人物による吹き替えだったと最近知りました。

役の上で惹かれ合うグィネヴィアとランスロットですが、役者さん同士もこの映画で出会い、恋に落ち、レッドグレイヴはその時の旦那さんと別れて、ランスロット役のネロとの間に一男もうけていますが、実際に彼らは長い間結婚していませんでした。

長い年月を経て再会し2006年、レッドグレイヴ69歳、ネロ65歳の時に結婚したとのことです。

「事実は小説よりも奇なり」ならぬ「事実は映画よりも奇なり」と言えるでしょうか。

▼グィネヴィアへの道ならぬ恋を自覚しているランロットが歌う、切ない名曲「If Ever I Would Leave You」


Camelot 45th Anniversary -- If Ever I Would Leave You

アラン・ジェイ・ラーナーとフレデリック・ロウの代表作はMFLであることは間違い無いですが、この作品も知名度は低いものの、キャッチーでロマンティックなナンバーにあふれており、序曲から終曲まで聴きごたえのある、非常に魅力的な作品です。

エクスカリバーをたまたま引き抜くという幸運から国王になるというセレンディピティを持ち合わせ、ある意味イエス・キリストのように国民から崇拝されるアーサー王が、妻と信頼する部下との三角関係に悩み苦しむ様子は、とても切ないです。

これを見事に演じきっているリチャード・ハリスはやはり名優なのだと、再認識するきっかけとなりました。