ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『銀嶺セレナーデ(1941)』Sun Valley Serenade

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『銀嶺セレナーデ(1941)』とは

1941年の20世紀フォックスによるミュージカル映画

ノルウェー出身の元フィギュアスケート選手でオリンピック金メダリストのソニア・ヘニーが主演し、フィギュアスケートを披露している。

グレン・ミラー楽団の演奏やニコラス・ブラザーズのパフォーマンスも見所。

ハリー・ウォーレン作曲、マック・ゴードン作詞によるナンバー「Chattanooga Choo Choo」は当時大ヒットを記録した。

監督はH・ブルース・ハンバーストーン。

あらすじ

テッドは楽団のピアニストとして活動しており、楽団のイメージアップのために海外から難民を受け入れることになった。

しかし子どもがやってくるという予想に反して、テッドの元にやってきたのはカレンという天真爛漫な成人女性だった。

カレンはやたら馴れ馴れしい上に、テッドと結婚したいと面と向かって話すが、テッドは歌手のヴィヴィアンと付き合っていると説明し断る。

アイダホ州サンヴァレーでのクリスマス興行にテッドらは向かうが、テッドのマネージャーであるニフティーに手助けしてもらい、カレンも密かにサンヴァレーに向かう。

カレンとテッドは一緒にスキーをしたり、ダンスをしたりしているうちに徐々に打ち解けていくが、ダンスの後でテッドはヴィヴィアンにすでにプロポーズをし、ヴィヴィアンから返事を待っている状態だということを知らされる。

キャスト

カレン  ソニア・ヘニー

テッド  ジョン・ペイン

フィル  グレン・ミラー

ニフティー  ミルトン・バール

ヴィヴィアン  リン・バリ(歌唱部分はパット・フライデー)

感想

スポーツ選手の女優への転身といえば、ミュージカル映画ではエスター・ウィリアムズが有名かもしません。

彼女は第二次世界大戦によってオリンピック出場こそ叶いませんでしたが、当時世界記録を叩き出すなど第一線で活躍した競泳選手でした。

エスター・ウィリアムズより前にミュージカル映画に出演していたスポーツ選手がいたのはご存知でしょうか。

ノルウェー出身のフィギュアスケート選手だったソニア・へニーです。

マチュア時代はオリンピック3連覇、世界フィギュア10連覇など俄には信じられない結果を残しています。

24歳で選手を引退し、ハリウッドに移住して女優としての活動を始めました。

本作は彼女の主演作となっています。

▼trailerです。


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また、本作はグレン・ミラー楽団の出演したミュージカル映画の2作のうちの1つです(もう1つは『オーケストラの妻たち』)。

グレン・ミラー楽団の代表曲である「Moonlight Serenade」に加え、「In the Mood」や本作の公開で大ヒットとなった「Chattanooga Choo Choo」などの演奏を楽しめます。

▼「Chattanooga Choo Choo」


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Chattanoogaとはテネシー州東部にある町の名前のようですね。

歌詞を聴いてみると、 ニューヨークにあるペンシルベニア駅を出発し、ボルティモアノースカロライナを通って、テネシーにあるチャタヌーガまで行く列車旅の様子を描いていることがわかります。

列車が発車する音も楽器演奏によって表現されていて、滑稽さもありながら膨らむ期待感が見事に表されているナンバーだと感じました。

このナンバーでパフォーマンスしているアフリカ系アメリカ人のコンビがニコラス・ブラザーズで、柔らかすぎる関節を存分に生かしたアクロバティックなダンスを披露しています。

個人的に思うニコラス・ブラザーズの最高のパフォーマンスは『ストーミー・ウェザー』にあるので、ぜひ観てみてください。

▼「I Know Why (And So Do You)」(冒頭は「In the Mood」です。0:50〜始まります。)


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「I Know Why」も本作を代表するミュージカルナンバーで、個人的には「Chattanooga〜」よりこちらの方が好みです。

初めて聴いた時はなんていうロマンティックな神曲なんだと大いに感激しました。

作品全体を通しての感想ですが、これまで書いてきたように、見どころが非常に多い上に、白銀の世界をバックに美しい楽曲の数々を楽しめる素晴らしい作品だと思いました。

ただし、ソニア演じるカレンがあまりに自己中心的すぎて主人公に全く共感できず、むしろ恋敵であるヴィヴィアンにより共感してしまいました。

ソニアについては、最初は卵に目鼻の可愛らしい方だわと思っていましたが、役柄があまりに無邪気すぎるというより性根がよくないため、後半はただ観ているだけで苛立ってしまいました。

相手役のジョン・ペインはかっこいいのですが、ソニアに惹かれる理由が皆目見当がつかず、この話の中では女に転がされるただの馬鹿な男にしか見えず残念でした。

夜空の下で繰り広げられるフィギュアスケートシーンの美しさは言葉を失うほどでした。

このシーンほどモノクロ映画の方が似合う場面はないのではないかと思うほど、氷面に反射する人影が息をのむほど美しかったです。

▼ソニア・へニーによるフィギュアスケートシーン


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ちなみにソニアのスキーシーンは、後にアメリカ人として初めてスキー種目で金メダルを獲ることになるグレッチェン・フレイザーが代わって演じています。