ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『ねじまき鳥クロニクル』2020.2.15.13:00@東京芸術劇場プレイハウス

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ねじまき鳥クロニクル』とは

村上春樹原作の同名小説を舞台化した作品。

音楽は大友良英

演出・振付・美術はインバル・ピント、脚本・演出はアミール・クリガーによる。

あらすじ

主人公・岡田トオルは、突然姿を消した猫を探すうちに、世田谷の住宅街にある路地と空き家の庭に迷い込み、風変わりな女子高生・笠原メイと出会う。

メイは、庭にある涸れ井戸をトオルに見せ、そこで起こった不吉な出来事や“死のかたまりのようなもの”についてトオルに語りかける。

トオルの妻クミコは、猫は夫婦にとって大切な象徴であることを説くが、次第に二人の心の距離は離れていく。

猫探しをするトオルに、ある日、謎の女から奇妙な電話がかかる。

「私はあなたを知っているし、あなたは私を知っている」。

女はいったい誰なのか、トオルは見当がつかない。

しかし、その女はトオルとクミコの恩人である本田老人が亡くなったと告げる。

トオルは猫を見つけるために、折り合いの悪いクミコの兄・綿谷ノボルの紹介で、加納マルタという予知能力を持つ女性と会うことになる。

マルタは、妹の加納クレタがノボルによって汚されたこと、猫が消されたことは物事の始まりに過ぎないことをトオルに告げる。

マルタの代理人クレタトオルの家を訪れて来て、痛みにまつわる身の上話を始めるが、話が綿谷ノボルとの出会いに差し掛かると、ふいに姿を消してしまう。

一方、妻クミコも兄ノボルの暗い過去を、トオルに告白する。

その夜、トオルクレタと交わる夢を見る。

そして夢の中で、「顔のない男」に、ここにいては危険だと警告を受ける。

ある日、本田の知人と名乗る間宮元中尉が本田の遺品を持ってトオルを訪ねてきた。

間宮は満洲モンゴル国境での本田との出会いを語り、これまで誰にも話さずにいた戦争の暴力的で凄惨な体験をトオルに語る。

謎めいた来訪者が続く中、クミコが忽然と姿を消した。

来訪者たちの奇妙な話に導かれるようにトオルは空き家の井戸の底に降りていく。

深い井戸の底、冥い森のような通路をくぐり抜け、意識と無意識の壁をすり抜けて、トオルはいつか夢に見た「顔のない男」がいる不思議なホテルにたどり着く。

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キャスト

岡田トオル 成河/渡辺大

笠原メイ 門脇麦

綿谷ノボル 大貫勇輔

加納クレタ/マルタ 徳永えり

赤坂シナモン/顔のない男 松岡広大

岡田クミコ 成田亜佑美

牛河/オークショニア さとうこうじ

間宮 吹越満

赤坂ナツメグ/女優のお化け 銀粉蝶

感想

村上春樹は学生時代にハマってほぼ全作読んでいたほどでした。

一番好きな作品は「羊をめぐる冒険」ですが、「ねじまき鳥クロニクル」も好きな小説でしたし、歌やダンスも登場する舞台作品ということで観劇することにしました。

▼舞台映像


舞台『ねじまき鳥クロニクル』2020 舞台映像PV

▼観劇後の感想です。

主人公のトオルを2人1役で演じており、井戸に降りる前が渡辺さん、降りた後が成河さんで演じ分けられていました。

この独特な虚構の世界をイスラエル人の演出家たちがどのように捉えて表現するのか、とても興味深かったです。

夫婦の距離が離れていくのをテーブルの長さを徐々に伸ばすことで表現していたり、夫婦の交わりをダンスで表現していたり。

小説を読んで、観客それぞれの中に練り上げられたイメージがあると思うのですが、それをこのような舞台作品を通して、同感する部分と新鮮な捉え方に驚く部分とが観る側にはあって、貴重な体験だったと思いました。

個人的には加納クレタや牛河は私の頭のなかのイメージ通りで冷や汗が出たほどでした。

クミコは最初、あまりの無感情のセリフ読みで棒読み?と違和感があったのですが、それは敢えての表現方法だったのだと後でなんとなくわかりました。

インバルピントの舞台は以前にも観劇しているのですが、彼らの柔軟な身体表現を駆使した表現方法と村上春樹の世界が組み合わさって、唯一無二の空間となっていました。