『Sea Wall/ A Life』とは
2018年ロンドンで上演され、2019年にはオフブロードウェイのパプリックシアターで上演され好評を博し、同年8月から9月までオンブロードウェイに場所を移して上演された。
1幕がSimon Stephens作の『Sea Wall』、2幕がNick Payne作の『A Life』という2つのストレートプレイから構成される。
ともにモノローグ形式。
演出はCarrie Crackwell。
あらすじ
『Sea Wall』(防波堤)
アレックスには、愛する妻と娘がいる。
義父とは最初は距離があったものの、海でダイビングを教えてもらうようになってから、徐々に親しみを覚えるようになる。
しかし、ある日、義父と娘とともに海へ行った際、アレックスが泳ぎに行っている間、読書をしていた義父が目を離した隙に、娘が崖から落ちてしまう。
『A Life』(生命)
エイブは妻に妊娠したことを告げられる。
また、同じ時期に、実父の死期が近いことを知る。
新たな生命の誕生と、父との永遠の別れを目前にしたエイブは、複雑な気持ちで自身の人生を振り返る。
キャスト
Alex Tom Sturridge
Abe Jake Gyllenhaal
感想
今年の夏のオンブロードウェイは、気になるプレイが多く、ウエストエンドからトランスファーした舞台がmarqueeを多く飾っていました。
その中で、選んだのが一作目がこちらです。
▼trailer
先の通り、2つの異なるプレイが1幕と2幕で、同じ無機質なセットで上演されます。
両者ともに始まり方が非常にspontaneousで、いつのまにか役者が舞台上にいて、開演時間を知らせるブザーが鳴ることもなく、観客のざわつきが収まるのを待って自然に芝居が始まります。
無機質なセットですが、その分、シンプルな照明が映えました。
2つの悲劇は非常に身近な存在である家族を失う内容で、どのような方が観てもrelatableだと感じられる作品だと感じました。
plotを字面だけ読むとあまりにtragicですが、部分的にコメディー調の部分があって爆笑の渦が起きる場面もありました。
▼観劇後の感想
『Sea Wall / A Life』同じ独白というスタイルで内容の異なる2つの演目。Jakeの台詞に笑いが起き、その笑いにさらに笑いが起こるという不思議な現象が(笑)観客と役者の対話という感じがした。娘の誕生に伴う喜びや不安と父の喪失を同時に表現したJake gyllenhaalの演技が秀逸。自然発生的な始まり方。 pic.twitter.com/XPJf26zbW5
— るん / Lune (@nyny1121) 2019年9月21日
モノローグなのですが、役者の演技に呼応する観客の泣き笑い、時に掛け声も大切な作品の一部になっているように感じました。
トム・スタリッジは突然やさぐれた雰囲気で登場し、舞台上で何か飲み始めるのですが、観客が「何飲んでるの?」と尋ねると「ビールだよ」と。
こういった会話が開演前に繰り広げられ、こちらは「この人何があったのかしら」と面白おかしく想像を膨らませるわけですが、後でシリアスな展開を知り胸が締め付けられました。
ジェイク・ギレンホールはハリウッド大作にも出演され、有名な方なのに、私は今回の舞台まで全く知りませんでしたが、素晴らしかったですね。
コメディー調から淡々とした語り、そしてシリアスな語りへと、複雑な感情の流れを見事に表現していました。
英語が母国語でない私にとっては、プレイ鑑賞はかなり集中力を要するものですが、なかなか興味深い!と今回の観劇で味をしめてしまったのでした。
▼劇場のエントランスの壁に展示されているもの
▼劇場の外観