ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『アスファルト・ガール(1964)』Asphalt Girl

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アスファルト・ガール(1964)』とは

1964年の大映による日本のミュージカル映画

同年5月に公開された『君も出世ができる』に先立って、4月に公開された。

ミュージカルシーンは『回転木馬』を手がけたロッド・アレキサンダーが演出・振付を担当している。

音楽は平岡精二、前田憲男による。

監督は島耕二。

あらすじ

コールガールのエミ子は、観光ガイドを謳うホステスクラブに勤めている。

そのクラブのオーナー田辺の愛人でもあるエミ子に、星野という男性から依頼が入る。

星野は仲間からの見合い話を断るため、エミ子に仲間たちの前で恋人のふりをして欲しいと言う。

作戦は成功するが、エミ子は酔っ払って途中で眠ってしまう。

翌朝、エミ子は一晩中何も手を出さなかった星野に驚く。

最初は記憶喪失と嘘をつくエミ子だったが、真摯に向き合おうとする星野に、実は靴磨きをしているところをオーナーに拾われたと明かす。

星野の方も、実はブラジルで無一文になり、日本を最後に一目見ようとやってきたことを打ち明け、2人は互いに惹かれていることに気づく。

星野はブラジルで裸一貫でやり直すから、ついてきて欲しいとエミ子に申し出、エミ子は感涙するが、オーナー田辺はそれを見過ごさなかった。

キャスト

エミ子 中田康子

田辺 岩村信雄

星野 坂本博士

 

原田信夫とファイブキャラクターズ

尾藤イサオ

感想

日本のミュージカル映画としては、『君も出世ができる』の方が断然知名度がありますが、こちらの作品はその1ヶ月前に公開されたものになります。

ヒロインは元タカラジェンヌの中田康子、相手役には東京芸術大学卒の坂本博士。

今でいう咲妃みゆさんと井上芳雄さんのような感じでしょうか(あくまで推測です)。

製作にあたり、スタッフ一行は1ヶ月のアメリカでの研修を行うという、かなりの意欲作だったようです。

さらに、ミュージカルシーンはアメリカからロッド・アレキサンダーを招聘し、演出や振付が行われています。

実際に観てみると、初めて観るはずなのに既視感がとても強かったです。

その理由はすぐにわかりました。

なぜなら、『ウエストサイド物語』と構図が非常に似通っている(ほぼパクりではないかと思うほどの)シーンが数多くあるからです。

特に、小遣いをもらったヤンキーたちが通りを踊り歩くシーンなどは、『ウエストサイド物語』の冒頭と瓜二つ。

以上のように、本作は1961年公開の『ウエストサイド物語』に非常に強く感化された作品と言えます。

中田康子の卵に目鼻のチャーミングさ、坂本博士の朗々としたバリトンボイスは特に印象的でした。

ただ登場するミュージカルナンバーにキャッチーなものが少ないのが非常に残念でした。

また、技術的な問題ですが、歌と口が合っていないシーンや、タップダンスシーンで足と音が合っていないシーンが散見されました。

ただ、エミ子の靴磨きシーンのシークエンスや、終盤のエミ子と田辺の争いをバレエで表現するシーンなど、ミュージカル映画として撮るんだという製作陣の意気込みが随所で感じられるのがとても良かったです。

 

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