ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

第73回トニー賞に関する個人的感想

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2019年6月9日、第73回トニー賞授賞式が行われました。

今日は、今シーズンのトニー賞結果に関する率直な感想を書いておこうと思います。

ミュージカル部門のみにしますが、ミュージカル作品だけでも全て観てはいないので、公平な意見にはならないことを事前に書いておきます。

カテゴリーごとにノミネート作品を列挙し、受賞作品を太字にします。

ミュージカル作品賞

Hadestown

Ain't Too Proud

Beetlejuice

The Prom

Tootsie

映画の舞台ミュージカル化ではなく、ギリシャ神話をモチーフにした独特の雰囲気を持ったHadestownが受賞しました。

個人的には実話に基づいたオリジナルストーリーで、ブロードウェイネタも盛り込んだThe Promを応援していましたが、これは仕方ありません。

リバイバルミュージカル作品賞

Oklahoma!

Kiss Me, Kate

古典的なミュージカルコメディに徹したKiss Me, Kateと、現代社会に照らし合わせた革新的な演出で話題となったOklahoma!の一騎打ち。

Oklahoma!は過去作品に新たな解釈を提示する演出家が主導する形の公演となり、今回の受賞で、今後このような形の演出家主導のリバイバルは増えることが予想され、ますます演出家のリテラシーが求められるような気がします。

ブロードウェイには福田雄一のような下劣な演出家は決していないと思いますが、過去の作品にどのような現代的解釈を与えるかが演出家の腕の見せ所になると予想されます。

ミュージカル主演男優賞

Santino Fontana - Tootsie

Brooks Ashmanskas - The Prom

Derrick Baskin - Ain't Too Proud

Alex Brightman - Beetlejuice

Damon Daunno - Oklahoma!

この作品のために、女性としての身のこなし、美しいファルセットを3年間かけて習得したサンティーノ・フォンタナが受賞しました。

ミュージカル主演女優賞

Stephanie J. Block - The Cher Show

Caitlin Kinnunen - The Prom

Beth Leavel - The Prom

Eva Noblezada - Hadestown

Kelli O'hara - Kiss Me Kate

ステファニーは2003年のトライアウトの頃から『ウィキッド』のエルファバ役で、イディナ・メンゼルのunderstudyだった方で、今回3度目のノミネートで受賞となりました。

このカテゴリーは特に誰が受賞してもおかしくありませんでした。

個人的にはCaitlin Kinnunenに受賞してもらいたかったですが、彼女には次回に期待することにしましょう。

 

 ミュージカル助演男優賞

André De Shields - Hadestown

Andy Grotelueschen - Tootsie

Patrick Page - Hadestown

Jeremy Pope - Ain't Too Proud

Ephraim Sykes - Ain't Too Proud

最終的にはHadestownで狂言回し的役回りのヘルメスを演じる、Andréさんが受賞しましたね。

長年のキャリアから紡ぎ出された彼の受賞スピーチは、非常にinspiringで感動的でした。

Jeremy Popeは演劇部門でもノミネートされていました。

演劇部門、ミュージカル部門それぞれでノミネートとは異例ではないかと思います。

ミュージカル助演女優賞

Ali Stroker - Oklahoma!

Lilli Cooper - Tootsie

Amber Gray - Hadestown

Sarah Stiles - Tootsie

Mary Testa - Oklahoma!

見事Oklahoma!でAnnieを演じたアリ・ストローカーが受賞しました。

私も彼女のperformanceを拝見しましたが、explosiveな歌唱と元気いっぱいに会場中を駆け回る様子が非常に印象的でした。

おめでとうございます。

Amber Grayさんも冥界の王ハデスの妻を熱演されていたので、今回は残念でしたが、次回に期待したいと思います。

ミュージカル演出賞

Rachel Chavkin - Hadestown

Scott Ellis - Tootsie

Daniel Fish - Oklahoma!

Des McAnuff - Ain't Too Proud

Casey Nicholaw - The Prom

個人的に、この部門で彼女が受賞したのがとても嬉しいです。

やはり、なんだかんだ言って、ブロードウェイの特にクリエイティブ系は白人優位/男性優位社会です。

その中で女性演出家が受賞したのは嬉しかったですし、彼女のスピーチにはそれに関する言及もあり、勇気づけられました。

ミュージカル脚本賞

Robert Horn - Tootsie

Dominique Morisseau - Ain't Too Proud

Scott Brown & Anthony King - Beetlejuice

Anäis Mitchell - Hadestown

Chad Beguelin & Bob Martin - The Prom

うーん、これはなんとも言えない結果でした。

ここは少なくとも、ハリウッド大作に基づかない、実際の出来事に基づいてオリジナルストーリーを練り上げたThe Promが受賞というのは妥当ではないかと思うのです。

この結果にはショックですね。

楽曲賞

Anäis Mitchell - Hadestown

Joe Iconis - Be More Chill

Eddie Prefect - Beetlejuice

Chad Beguelin & Matthew Skylar - The Prom

Adam Guettel - To Kill a Mockingbird

David Yazbek - Tootsie

楽曲賞は、ミュージカルと演劇を合わせての結果となります。

アラバマ物語は演劇部門から唯一のノミネートとなっており、9月に観劇する際には音楽も楽しみたいと思っています。

コンセプトアルバムからミュージカル劇に広げたAnäis Mitchellさん、お見事でした。

演出賞に引き続き、クリエイティブ部門の女性受賞者となりました。

Joe Iconisが手がけたBe More Chillを個人的には推していました。

授賞式途中では彼が作曲した名ナンバー「Michael In the Bathroom」のパロディが流れましたが、ファンからはcreditを入れていないことに関して非難が殺到しました。

しかし、よくできているパロディです。

George Salazarも出演してくれたらお茶の間のファンも納得したことでしょう。

 

ミュージカル装置デザイン賞

Rachel Hauck - Hadestown

Robert Brill & Peter Nigrini - Ain't Too Proud

Peter England - King Kong

Laura Jellinek - Oklahoma!

David Korins - Beetlejuice

これはHadestown、見事でしたね。

ギリシャのコロシアムをはじめ、ヨーロッパ建築と、寂れたジャズ酒場を融合した独自の世界観には、装置デザインの腕によって作られたと言っても過言ではないでしょう。

ミュージカル衣装デザイン賞

Bob Mackie - The Cher Show

Michael Krass - Hadestown

William Ivey Long - Beetlejuice

William Ivey Long - Tootsie

Paul Tazewell - Ain't Too Proud

ミュージカル照明デザイン賞

Bradley King - Hadestown

Kevin Adams - The Cher Show

Howell Binkley - Ain't Too Proud

Peter Mumford - King Kong

Kenneth Posner and Peter Nigrini - Beetlejuice

ミュージカル音響デザイン賞

Nevin Steinberg and Jessica Paz - Hadestown

Peter Hylenski - King Kong

Peter Hylenski - Beetlejuice

Steve Canyon Kennedy - Ain't Too Proud

Drew Levy - Oklahoma!

振付賞

Sergio Trujillo - Ain't Too Proud

Camille A. Brown - Choir Boy

Warren Carlyle - Kiss Me, Kate

Denis Jones - Tootsie

David Neumann - Hadestown

Kiss Me, KateのToo Darn Hotを観ていたので、Ain't Too Proudは全く頭にありませんでしたが、9月観劇した際に判断したいと思います。

編曲賞

Michael Chorney and Todd Sickafoose - Hadestown

Simon Hale - Tootsie

Larry Hochman - Kiss Me, Kate

Daniel Kluger - Oklahoma!

Harold Wheeler - Ain't Too Proud

個人的には、Oklahoma!だと考えていました。

なぜなら今回の公演では、今までのオーケストラによる構成ではなく、bluegrassというジャンルの小規模のバンドによるアコースティックな編曲になっていたからです。

さらに、BGMとして流れる楽曲も、マイナー調に編曲されており、作品のダークな雰囲気を出すのに非常に役立っていました。