『くたばれ!ヤンキース(1958)』とは
1958年のワーナーブラザーズのミュージカル映画。
1955年にブロードウェイ初演の舞台ミュージカルを基にしている。
ドイツの伝説「ファウスト」をモチーフにしている。
音楽はリチャード・アドラー、ジェリー・ロスによる。
振付はボブ・フォッシー。
監督はジョージ・アボット、スタンリー・ドーネン。
ジョー・ハーディー役のタブ・ハンター以外は、舞台版オリジナルキャストが持ち上がりで演じている。
舞台版はグウェン・ヴァードンの主演女優賞、ボブ・フォッシーの振付賞をはじめ、トニー賞を7部門で受賞している。
あらすじ
中年のジョー・ボイドは、大リーグチームのワシントン・セネターの大ファン。
ある日、セネターがあまりに弱いことため、ジョーは「もしセネターがヤンキースを打ち負かすことができるなら、悪魔に魂を売ってもいい」と独り言で呟くやいなや、詐欺師の風貌の悪魔、アップルゲートが現れる。
アップルゲートは、ジョーに若さを与え、セネターに入れるだけの能力を与えようと申し出る。
半信半疑だったジョーだが、最終試合の前までであればいつでも元の姿に戻れるという約束付きで、契約を了承し、妻とのしばしの別れを惜しんでから、アップルゲートとともに旅立つのだった。
セネターの非公式の選抜テストに合格し、いきなり一軍入りしたジョーは一躍時の人となり、セネターの試合成績もうなぎ登り。
しかし、アップルゲートの真の目論見は、夫婦仲を引き裂く事であり、業務上の右腕であるローラにジョーを誘惑するよう命令する。
ローラはジョーを一目見ると「楽勝よ(duck soup)」と言うが、ジョーの妻への忠誠心は深く、色仕掛けで誘惑するローラに惹かれる様子が全くない。
ジョーの一途さに、ローラは逆に自分が惹かれていることに気づくのだった。
キャスト
ジョー・ハーディー タブ・ハンター
ローラ グウェン・ヴァードン
アップルゲート レイ・ウォルストン
トレーナー ラス・ブラウン
ボイド夫人 シャノン・ボリン
ボイド氏 ロバート・シャファー
グロリア・ソープ レイ・アレン
ダンサー ボブ・フォッシー
感想
トニー賞を4度受賞した、ブロードウェイの名女優グウェン・ヴァードン主演する稀少なミュージカル映画です。
グウェン・ヴァードンは多くの映画にダンサーとして出演していますが、クレジットされていないことが多く、本作が初めてクレジットされた映画でした。
舞台版でトニー賞最優秀主演女優賞を受賞しただけあり、演技やダンスが非常に作り込まれていると感じられます。
彼女が演じるローラは実にチャーミングです。
フォッシー仕込みの腰を回して誘惑するシーンは、あまりに刺激が強すぎるということで、映画版では抑えた表現になったようですが、それでも色気たっぷりに演じています。
▼trailerです。
ジョー以外のほとんどを、ブロードウェイの舞台版オリジナルキャストたちが演じていることもあり、ミュージカルシーンの完成度が非常に高いと感じました。
特に、フォッシーによる独特な振付は実に見事です。
監督も、ミュージカル映画を多く手がけているスタンリー・ドーネンが関わっているため、全体的な仕上がりも上々という印象です。
特に印象的だったのは、グウェン・ヴァードンとボブ・フォッシーの息のあったダンスデュエット。
思わずなんども繰り返して見てしまいました。
一つ、よく仕組みがわからなかったのが、アップルゲートが手の中から突然火のついたタバコを取り出すシーン。
このマジックのトリックをご存知の方、いらっしゃったらぜひ教えていただきたいです。
▼のちに夫婦となるグウェン・ヴァードンとボブ・フォッシーのデュエット「Who's Got the Pain」
Bob Fosse and Gwen Verdon in Damn Yankees - Who's Got the Pain
脱線しますが、本作に出演しているグウェン・ヴァードンとボブ・フォッシーを描いたドラマがアメリカで公開されたので、付記しておきます。
日本でもディスク化、あるいはストリーミング配信されないか、首を長くして待っているところです。
▼ボブ・フォッシーとグウェン・ヴァードンを描いたFX Networkのドラマ「Fosse/Verdon」が2019年4月からアメリカで公開
Fosse/Verdon Miniseries Trailer | Rotten Tomatoes TV