ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『不沈のモリー・ブラウン(1964)』The Unsinkable Molly Brown

Image result for the unsinkable molly brown 1964

不沈のモリー・ブラウン(1964)』とは

1912年のタイタニック号沈没事故の際、生存者捜索に尽力し、女性生存者として知られるマーガレット・ブラウンの生涯をモチーフにした、1964年のMGMによるミュージカル映画

1960年ブロードウェイ初演の舞台ミュージカルを基にしている。

作曲は『ミュージック・マン』で知られるメレディス・ウィルソン

ハーヴ・プレスネルはブロードウェイ初演の際にもジョニー・ブラウン役を演じている。

チャールズ・ウォルターズ監督。

あらすじ

コロラド川大洪水の際に九死に一生を得た孤児のモリーは、シェイマス・トビンに育てられ、男勝りな少女に成長した。

ある日モリーは裕福な家の男性と結婚することを決意し、一路デンバーに向かっていた。

コロラド州レッドヴィルで、鉱夫のジョニー・ブラウンに出会い、読み書きを教えてもらうことになる。

酒場で働き、いつか玉の輿に乗ることを夢見るモリーだが、徐々にジョニーに惹かれている事実を無視できない。

実際、ジョニーはしがない鉱夫に過ぎず、モリーの理想の相手ではなかった。

モリーへの思いがますます募るジョニーはモリーの理想とする家をプレゼントし、2人は結婚することになる。

その矢先、ジョニーの鉱山で金が採掘されるようになり、2人は一躍裕福になり、モリーの夢見ていたデンバーの大豪邸での生活が始まる。

デンバーの"聖なる36人衆(Sacred Thirty Six)"という社交界メンバーになることを夢見ていたモリーだが、やや粗野な性格のモリーは周囲から疎まれていた。

より洗練された女性になるために、モリーはフランスの社交界で武者修行しようとするが、その一方、「今ある幸せに満足しろ」と説くジョニーとは徐々に距離ができてしまうのだった。

キャスト

モリー・ブラウン デビー・レイノルズ

ジョニー・ブラウン ハーヴ・プレスネル

シェイマス・トビン エド・ベグリー

クリスマス・モーガン ジャック・クルーシェン

バターカップ・グローガン ハーマイオニー・バデリー

感想

実在の人物、タイタニック号沈没事故の生存者として知られる、マーガレット・ブラウンの生涯を描いたものですが、フィクションが多く含まれています。

芋っぽい少女時代から社交界で活躍するまでの、デビー・レイノルズの変身ぶりには圧倒されます。

アメリカにいた時に一度観たことがあるのですが、日本でDVD化されたので、再び観てみることにしました。

▼trailerです。


The Unsinkable Molly Brown Trailer

ご覧の通り、グランドキャニオンなど、壮大な自然味あふれるロケーションでの撮影が行われ、改めてアメリカの映画はスケールが違うなあと驚嘆しました。

元々の舞台からの持ち上がりはジョニー役プレスネルのみでしたが、彼は容姿や歌声からハワード・キールが連想されるような、骨太な俳優さんという印象です。

舞台版初演のタイトルロールはTammy Grimesタミー・グライムズが演じ、トニー賞主演女優賞を受賞していますが、この方は『サウンド・オブ・ミュージック』のトラップ大佐役などで知られるクリストファー・プラマーの最初の結婚相手の方なのですね。

意外な繋がりでした。

映画版ではもともとシャーリー・マクレーンが演じる予定でしたが、事情によりデビー・レイノルズが演じています。

おてんば少女役のイメージが強かったレイノルズですが、本作では『アニーよ銃をとれ』のアニーを彷彿とさせるような勝気で素朴な田舎の少女を演じています。

最初の場面で少年たちに混じって騒々しくしているところなんて、昭和時代のスポ根ものを見ているような気分でした。

「お金持ちになって父を楽にさせたい」「社交界で名声を集めたい」という成り上がり精神を胸に、猪突猛進なモリーはまさにアメリカンドリームの再現者であり、ミュージカルの題材としてはこれ以上ない素材に違いありません。

しかし、実在のマーガレット・ブラウンの人生は、映画のように一筋縄ではいかなかったようで、本作は相当脚色されていたようです。

そのあたりは別記事に譲ることにします。

途中、モリーの放縦さに呆れ果ててしまう場面もあって、感情移入しにくい部分もなかったわけではありません。

しかし、一場一場が長めのミュージカルシーンは画面いっぱいに広がって、カット割りしてあっても切れ目なく続いているように見え、見ごたえがあって私は好きでした。

メレディス・ウィルソンの楽曲は、曲数自体は多くないのですが、同じ曲が何度も違った曲調でリプライズされるので、自然と旋律が耳に残りました。

▼本作の約18年後にレイノルズが披露する「I Ain't Down Yet」


Debbie Reynolds--I Ain't Down Yet, Unsinkable Molly Brown, 1982 TV

不沈のモリー・ブラウン [DVD]

不沈のモリー・ブラウン [DVD]