『シー・ラヴズ・ミー』とは
1963年ブロードウェイ初演のミュージカル。
原作は1937年のハンガリー人のMiklos Laszioによる戯曲『Parfumerie(訳:香水店)』。
この戯曲は1940年『The Shop Around the Corner』、1949年『In Good Old Summertime』(ジュディ・ガーランド主演のミュージカル映画)、1998年『ユー・ガット・メール』(メグ・ライアンとトム・ハンクス主演)の3回映画化されている。
音楽はジェリー・ボック、作詞はシェルドン・ハーニック。
今回は松竹ブロードウェイシネマの初回上映として、2016年ブロードウェイのリヴァイヴァル公演を拝見した。
あらすじ
ジョージは、勤務先であるマラチェック氏の香水店に、突然やってきて雇用されたアマリアと犬猿の仲で、度々衝突していた。
店員のイローナはプレイボーイのスティーブンと付き合っていたが、移り気なスティーブンに耐えられず、生まれ変わって新しい恋を見つけることを決意する。
同じ頃、ジョージには想いを寄せている文通相手がいた。
彼女は文学の知識が豊富で、知的で、まさにジョージにとって理想の人だった。
その文通相手で直接会い、食事をする約束をするのだが、実際に予定していたレストランに行ってみると、座席にいたのはなんとアマリアだったのだ。
ジョージはアマリアが文通相手だと知るが、そうとは言わずに偶然を装ってアマリアの隣に座る。
一方のアマリアは、いつまで経っても現れない文通相手にしびれを切らし、「もしかしてジョージと一緒にいるところを見られて恋人を連れてきたと思われたのではないか」「一目見て外見が気に入られなかったのではないか」と思い悩みし、翌日仕事を休んでしまう。
出勤しないアマリアを心配したジョージは、バニラアイスを持ってアマリアの家を訪れる。
ジョージは「昨晩アマリアの文通相手と出会って、仕事の急用が入り行けないと言っていた」と伝える。
不安が解消され、さらに突如ジョージの優しさに触れたことでアマリアは喜び、そして文通相手に改めて手紙を書きながら、ジョージへの好意を自覚する。
2人の恋の行方はいかに。
キャスト
ジョージ・ノワック ザカリー・リーヴァイ
アマリア・バラッシュ ローラ・ベナンティ
イローナ・リッター ジェーン・クラコウスキー
スティーブン・コーダイ ギャヴィン・クリール
マラチェック氏 バイロン・ジェニングス
感想
松竹ブロードウェイシネマの第一弾として上映されている『シー・ラヴズ・ミー』を観にいってきました。
この映像は、「Broadway HD」という定額ストリーミング配信サービスに登録すればお手持ちの端末でみることはできます。
2019年4月現在、$8.99/月, $99.99/年で利用可能のようですが、今後変更される可能性もあるため、下の公式サイトで確認されることをお勧めします。
「Broadway HD」の公式サイト:
アメリカでは舞台を撮影したものが多くDVD化されていますが、日本では未発売のものがほとんどなので、このサービスは非常に有用なのではないかなと思います。
私はまだ勇気が出ず登録していないのですが、体験期間も設けられているようなので、近々登録してみようかなと考え中です。
▼2016年リヴァイヴァルキャストによるトニー賞でのパフォーマンス
70th Annual Tony Awards 'She Loves Me'
『シー・ラヴズ・ミー』は日本でもプロアマ問わず、何度も公演されている演目です。
私は、今回初めてfullで通して観ました。
2016年ブロードウェイリヴァイヴァル版はトニー賞1部門受賞(舞台デザイン賞)している、ラウンドアバウトというシアターグループによるものでした。
ちなみに、初めてlive streamingされたミュージカル作品がこの公演だったそうです。
古典的ラブコメディミュージカルの傑作
本作の素晴らしさは、ミュージカルという以前に、やはり原作の秀逸さでしょう。
「ケンカするほど仲がいい」とはよく言ったものです。
何度も映画化されているだけあります。
実際、私も鑑賞中何度も声を出して笑ってしまいました。
ミュージカル全体としては、その脚本の上に、可愛らしい音楽たちが踊っているという印象でした。
例えば、香水店のお客たちを見送る決まり文句はいつも同じメロディーで歌われていて、その日の忙しさに応じてその決まり文句を歌う速さが変わるという工夫は興味深かったですし、ミュージカルらしいなと思いました。
豪華な出演陣の共演
出演者も非常に豪華。
ローラ・ベナンティはパティ・ルポンが主演した『ジプシー』でルイーズ役を演じ、トニー賞助演女優賞を受賞し、最近では彼女自身のdream roleであった『マイ・フェア・レディ』のイライザ役をブロードウェイで演じています。
本作では、特に「Vanilla Ice Cream」で持ち前のdivaっぷりを発揮していて、完全に魅了されました。
ベナンティのこのようなオペラ的歌唱を聴いたのは初めてだったので、結構驚いてしまいました。
スティーブンを演じたギャヴィン・クリールは『ハロー・ドーリー!』でトニー賞助演男優賞を受賞しましたが、個人的には初めて彼を目の当たりにしたのはブロードウェイの『ヘアー』でした。
ゲイですが、個人的にものすごく好みのタイプなので、ずっとフォローしている俳優さんの一人で、トニー賞を受賞したときはとても嬉しかったです。
今回はプレイボーイの悪役に徹していますが、よく通る歌声は健在です。
そして、初めて拝見した主演のザカリー・リーヴァイは素晴らしいコメディアンでした。
『塔の上のラプンツェル』の主人公の相手役の声を担当されている方のようなので、歌は素晴らしいのはいうまでもありませんが、驚いたり、たじろいだり、意味深な表情をしたり、くるくると変わる表情に釘付けになりました。
最後に、イローナを演じたジェーン・クラコウスキーは映画やテレビでの活躍が多い方のようですが、ちょっとおバカなドジっ子キャラを的確に演じていました。