『笑う男 The Eternal Love -永遠の愛-』とは
ヴィクトル・ユゴー原作の小説『笑う男』を基に制作された、2018年韓国で初演されたミュージカル。
今回日本初演。
脚本はロバート・ヨハンソン、作曲はフランク・ワイルドホーン、作詞はジャック・マーフィー。
演出・翻訳は上田一豪。
あらすじ
1689年、イングランド、冬。
“子ども買い”の異名を持つコンプラチコの手により、見世物として口を裂かれ醜悪な笑みを貼り付けられた少年、グウィンプレンは、一行の船から放り出され一人あてもなく雪の中を彷徨う。
その最中、凍え死んだ女性が抱える赤ん坊、後のデアを見つけ、道すがら偶然たどり着けた興行師ウルシュスの元へ身を寄せた二人は彼と生活を共にすることとなる。
青年となったグウィンプレンは、その奇怪な見た目で“笑う男”として話題を呼び、一躍有名人になっていた。
盲目のデアとともに自らの生い立ちを演じる興行で人気を博す2人は、いつしか互いを信頼し、愛し合う関係となる。
そこへ彼らの興行に興味を持った公爵のジョシアナとその婚約者、デヴィット・ディリー・ムーア卿が来訪する。
醜くも魅惑的なグウィンプレンの姿に心を惹かれたジョシアナは、彼を自身の元へ呼びつけ誘惑する。
突然の愛の言葉に動揺するグウィンプレンがウルシュスの元に戻ると、突然牢獄へと連行され、そこで王宮の使用人、フェドロにより衝撃の事実を明かされることになる。
なんとグウィンプレンの出自に関する記録が見つかり、彼は貴族の生まれであるというのだ。
捕らえられたように見えたグウィンプレンは、貴族として生活することになる。
しかし、ウルシュスには「グウィンプレンは死んだ」と伝えられ、悲嘆に暮れる。
グウィンプレンは貴族としての権限を利用して、ウルシュスたち平民のための政治をしようとするが、女王から目をつけられ思うようにいかず、最終的に貴族としての権限を放棄する。
グウィンプレンがウルシュスたちの元に戻ると、悲しんでいた彼らは驚きながらも大喜びする。
しかし、その時にはすでに、もともと心臓の弱かったデアの容態はますます悪化していたのだった。
キャスト
デア 夢咲ねね
ジョシアナ公爵 朝夏まなと
デヴィット・ウィリー・ムーア卿 宮原浩暢
フェドロ 石川禅
ウルシュス 山口祐一郎
リトル・グウィンプレン 豊島青空
感想
ヴィクトル・ユゴーの『笑う男』が原作のミュージカルは、2018年ウェストエンドでも上演されていましたが、今回は韓国で初演された、それとは全く別のミュージカルのようです。
今回は2階から観劇しました。
劇場に入ると、幕にはグウィンプレンの大きな口を象徴した絵が描かれていました。
冒頭に出てきた船の大きさに、いきなりテンションが上がりましたね。
水に関する場面では効果的にプロジェクションマッピングというか、映像が活用されていました。
▼trailerです。
ミュージカル「笑う男 The Eternal Love-永遠の愛-」PV映像
観劇後の感想。
『笑う男』観劇終わり。色々疑問が残る部分もあった。原作を読みたい。2幕、山口氏がヴァルジャンにみえて、それだけでカタルシスを覚えた。ただ、親としてグウィンプレンらを想う歌がもう少しあっても良かった気が。
— るん / Lune (@nyny1121) 2019年4月14日
朝夏まなと様のSっぷりがどうにも止まらない状態に。彼女のハマり役といえそう。
血縁関係のないウルシュスとグウィンプレンとデアが、実の家族のようになり、ウルシュスは本当の父親のように彼らを愛する様子は、『レ・ミゼラブル』のヴァルジャン像が自然に思い浮かび、後半は人目を憚らず号泣してしまいました。
醜い容姿という共通点で言えば、同じユゴーによる『ノートルダム・ド・パリ』のカジモドが思い浮かびますが、グウィンプレンは後天的に人為的に傷つけられたことによる容姿です。
1幕はグウィンプレンとデアの出会い、ウルシュスとの出会い、見世物小屋でのジョシアナとの出会い、グウィンプレンの出生の秘密が描かれ、2幕でウルシュスとの出会いからのグウィンプレンの成長、グウィンプレンとウルシュスの親子のような絆、貴族となったグウィンプレンの奮闘などが描かれており、やや時系列は前後しました。
朝夏さんの公爵夫人役がご本人のイメージにぴったりの役柄で、印象的でした。
夢咲さんは終始、女神のように微笑んでいました。
直前まで、デアを演じるのがどちらかわからなかったのですが、希望通り夢咲さんになり大満足でした。
目が不自由であることを表現するための視線の配り方、立ち振る舞いが実に見事だったと感じました。
とにかく1幕の展開が矢継ぎ早で、気持ちが少し追いつかなかった。ウルシュとの親子の情愛は2幕で描かれていた。
— るん / Lune (@nyny1121) 2019年4月14日
基本的なところだけど、デアがグウィンプレンに惹かれるのはいいとして、ジョシアナがグウィンプレンにあれほど惹かれたのはなぜ?少し身の上話を聞いただけで。
ジョシアナがどうしてグウィンプレンに惹かれるのか、よくわかりませんでした。
この辺り、私の理解不足によるところが多いと思いますが、原作をぜひ読んでみたいと強く思いました。
グウィンプレンは貴族の生まれをもっと活用して、父親役のウルシュやデアなど平民のために東奔西走してもらいたかったし、どうにかして生きていることを外部に伝えてウルシュたちに無用な心配をかけて欲しくなかったし…
— るん / Lune (@nyny1121) 2019年4月14日
もっと何とかして幸せな展開にならなかったかねぇと思ってしまう。
どうしても、なんとかしてハッピーエンドに持っていきたいと思ってしまいました。
あまりにミゼラブルなので。
▼製作発表での歌唱披露
『笑う男 The Eternal Love -永遠の愛-』製作発表歌唱披露映像
見世物小屋シーンは、ラブネバの衝撃が大きすぎて、そこまで印象に残らず。そういえばあの時も日赤劇場だったし、夢咲さんも出ていたなぁ。
— るん / Lune (@nyny1121) 2019年4月14日
ワイルドホーン氏の音楽。最高傑作はジキ&ハイだと思う。本作中では、乱暴されて落ち込むデアを仲間が励ますシーンの歌が好きだった。タイトルがわからないな。
サーカスは上記のように感じてしまいましたが、『ライオンキング』のジュリー・テイモアを思わせるような、影絵を有効に使ったシーンが一部分ありおもしろかったです。
また、天井から提灯のような明かりが灯っていて、お祭りの縁日が連想されました。
ワイルドホーンさんの楽曲は、情感がこもったミュージカルナンバーが多いという印象を持っています。
この作品でも、グウィンプレンとデアの純真な思慕を歌った「木に宿る天使」などがそうでした。
しかし、一度聴いて耳に残るような印象的なナンバー(例えば『ジキル&ハイド』の「あんな人に」や「時が来た」といったような)は個人的にはありませんでした。
敢えて言えば、上記の落ち込んだデアを励ますシーンで歌われていたナンバーで、後で調べてみたところ、これは「涙は流して」という曲でした。
ミュージカル『笑う男』ゲネプロ 浦井健治 衞藤美彩 朝夏まなと
今回主演の浦井さんは韓国公演を観てはいたとのことですが、日本初演で何のイメージもない中、役作りには苦労されたのではないかと推察します。
サーカスシーンあり、殺陣シーンあり、何度もソロがあり、となかなかの大役を全日程シングルキャストでやりこなすのはさすがです。
印象的だったのはヤンググウィンプレンと一緒にデアと歌うシーン、もう一つはラストの方で背景で大きな影を映しながら歌うソローシーンです。
去年から言っていますが、今年は浦井さんにとって挑戦の年だなぁと思っています。
去年は『ブロードウェイと銃弾』や『ゴースト』といった、いわゆる一般にいそうな青年役でしたが、今年は本作や『ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ』のヘドウィグなど、何か傷を抱えた影のあるキャラクターを続けて演じる予定になっているからです。
ヘドウィグも本番までにどこまできわめられるか、楽しみにしています。
ぜひ頑張ってもらいたいと陰ながら応援しています。
公式サイト: