『魅惑の巴里(1957)』とは
1957年のMGMによるミュージカル映画。
原作はヴェラ・カスパリーによる。
作詞・作曲は『Anything Goes』や『Kiss Me Kate』で知られるコール・ポーターが手がけている。
監督はジョージ・キューカー。
アカデミー賞デザイン賞、ゴールデングローブ賞作品賞・主演女優賞を受賞した。
あらすじ
元踊り子のシビルは、自身が執筆した本に関して、かつて同僚だった元踊り子のアンジェルに名誉毀損で訴えられる。
その本にはアンジェルに関する事実無根の内容が書かれているというのだ。
シビルは「アンジェルは現在の夫ピエールと遠距離恋愛をしていながら、座長のバリーと二股をかけており、その浮気がバレそうになって自殺しようとした」と堂々と話す。
一方のアンジェルは「シビルはバリーに振り向いてもらえずアルコール中毒になるほどで、ガス自殺を図ったのはシビルの方だ」と反論する。
行き詰った法廷に、渦中のバリーが現れ、事実を聴衆に説明しようとするのだが。
キャスト
バリー・ニコルズ ジーン・ケリー
ジョイ・ヘンダーソン ミッツィ・ゲイナー
シビル・レン ケイ・ケンドール
アンジェル・デュクロ タイナ・エルグ
ピエール・デュクロ ジャック・ベルジュラク
ジェラルド・レン卿 レスリー・フィリップス
感想
この作品の特徴は、3人の視点からこの一連のガス自殺騒動が語られるところにあります。
まず、シビル、続いてアンジェル、そしてバリーの順に事件が語られます。
同じ出来事のはずですが、自分にとって都合のいいように供述が捻じ曲げられていることが、最初の2人のものからわかります。
観ている側はどちらが正解かと思いを巡らせながら、バリーの話を待つことになりますが、バリーが法廷に登場したシーンのシビルとアンジェルの熱視線から、きっと2人ともバリーに多少なりとも恋心を抱いていた時期があったのだろうと推察できます。
バリーの供述により、シビルとアンジェルの2人とも、それぞれ離婚の危機を乗り越えますが、その帰り道、バリーは妻であるジョイに「シビルやアンジェルの話にも事実は含まれているわよね」と言われギクリとしています。
劇中に何度も登場するサンドイッチマンに書かれていた文言同様、「What is Truth」を観客に投げかけ、幕はおります。
他のMGMによるミュージカル映画とは異なり、サスペンスの要素を含んだ「ミュージカルドラマ映画」というジャンル名に含まれそうな作品です。
コール・ポーターによる音楽に期待していたのですが、本作には代表作に見られるようなキャッチーさは残念ながら見出せませんでした。
▼タイトル曲