『ラブ・ネバー・ダイ』とは
2010年ウエストエンド初演のアンドリュー・ロイド=ウェバー(以降ALW)によるミュージカル。
ALWの大ヒットミュージカル『オペラ座の怪人』の続編として製作された。
脚本は、フレデリック・フォーサイスによるもので、本作のためにALWが執筆をフォーサイスに依頼し完成した。
日本では2014年初演。
あらすじ
パリ・オペラ座から姿を消して10年。
音楽を紡ぎ出すファントムの心は、クリスティーヌの歌声を求め、彷徨っていた。
ファントムはニューヨークのコニーアイランド一番の経営者として財を成していた。
彼を救ったのはオペラ座の元バレエ教師のマダム・ジリーとその娘であるメグ・ジリー。
コニーアイランドに来た後も、マダム・ジリーは政治家や投資家の間を奔走し、メグはショーの看板スターとしてファントムを支え続けた。
一方、ラウルと結婚した歌姫クリスティーヌは、パリでプリマドンナとして活躍していた。
息子グスタフにも恵まれ、順風満帆な生活を送っているように見えていたが、ラウルがギャンブルに溺れ、多額の借金を作ってしまう。
クリスティーヌはオスカー・ハマースタインの招聘により、ニューヨークでのコンサート出演を決める。
渡米した一家を埠頭で待ち受けていたのは、騒々しいマスコミと物見高い人々。
そこに、馬のいない怪しい馬車が怪しい馬車がやってきた。
サーカスのフリークス・トリオであるフリック、スケルチ、ガングルをお供に一家はホテルに向かう。
ラウルがコンサートの打ち合わせに出かけ、スイートルームで寛ぐクリスティーヌの前に、突然ファントムが姿を現した。
愕然とするクリスティーヌ。
溢れ出す想いを堪えきれないまま、ファントムは自分が書いた譜面を手渡し、「一度だけ歌ってほしい。さもなくばグスタフを消す」と告げる。
キャスト
ファントム 石丸幹二
ラウル・シャニュイ子爵 小野田龍之介
メグ・ジリー 夢咲ねね
マダム・ジリー 香寿たつき
グスタフ 加藤憲史郎
フレック 知念紗耶
スケルチ 辰巳智秋
ガングル 重松直樹
感想
久しぶりの更新になります。
この作品はウエストエンドで初演された時、オリジナルキャストのラミン・カリムルーとシエラ・ボーゲス主演の回を観劇しています。
日本人キャスト版は今回が初めて。
これからソワレ。日曜ソワレを予定に入れられると、時間をものすごく有効に使えている気がして嬉しい。しかも久々の濱田さん。そして大好きな石丸さんの回。ラブ・ネヴァー・ダイズはWEで観て以来。その時はラミン・カリムルーとシエラ・ボーゲスの組合せだった。
— るん (@nyny1121) 2019年1月27日
それでは早速、今回のキャストによる歌唱動画をどうぞ。
↓製作発表会での様子「君の歌をもう一度」「懐かしい友よ」「愛は死なず」、キャスト挨拶
観劇直後の感想です。
ラブ・ネバー・ダイ終演。最高のキャストでめくるめくALWの世界をめぐった。最高。基本的にAUS版を踏襲していた。マスクと瞳を象ったエンブレムに下される印象的な幕は意味深。中央の悲しげな怪人の心の瞳は何光年も先の愛の姿を見つめているよう。何度も言うけど今日のキャストは国宝級だった。 pic.twitter.com/jeghdZLf7z
— るん (@nyny1121) 2019年1月27日
事前に予習として、大成功したと言われているオーストラリアキャスト版の公演をBDで拝見していたのですが、舞台装置や衣装は多くの点でこちらを踏襲していたと感じました。
回転舞台で、上記のような怪人のマスクを模したアーチ型のエンブレムとそれに掛かる幕がとても印象的でした。
背景には、暗闇にコニーアイランドのネオンライトが輝いており、ブロードウェイ劇場街の電光看板を思わせるようでした。
冒頭の石丸ファントムによる名曲「Till I Hear You Sing」には、クリスティーヌのことを思い続ける痛いほど一途な想いが溢れていて、涙が止まりませんでした。
石丸さんのファントムを演じたいという長年の熱い思いも込められていたように思いました。
濱田クリスティーヌはグスタフの前ではすっかり母の顔になっていて、リプライズもされる「Look with Your Heart」からは彼女の母性、優しさ、思いやりを感じました。
クリスティーヌは『オペラ座の怪人』に劣らぬほど過酷な歌唱を強いられる、演じがいのある役になっていますが、濱田さんはこれぞミュージカル女優というperformanceを堂々と披露されていました。
この方はいつも期待を裏切りません。
今回のキャストを選んだもう一つの理由である、ラウル役の小野田龍之介さん。
彼の頃を知ったのは石丸さんと堀内敬子さん主演のミュージカル『パレード』日本初演でのこと。
なんて歌唱力のある若人がいるんだと大変驚いたのですが、それが彼でした。
今回も安定の歌声を拝むことができました。
『オペラ座の怪人』の頃の若く生き生きした時期とは打って変わり、借金を抱え酒浸りの日々を送るラウル。
クリスティーヌがファントムに傾くのもわかるよね、と観客に思わせる役目もあるグズっぷりを演じていました。
若いのに、老成した不思議な魅力がある役者さんですね。
グスタフを演じた加藤憲史郎くん、もう東宝ミュージカルの子役の顔ですね。
コニーアイランドのネオンライトがfullで見える位置まで移動して、終曲も最後まで聴いた。多くの人が名残惜しそうに終曲に聴き入っていた。何のためにミュージカル観劇するかって、まさにこれを求めていたのだと思う。帰り道思わず鼻歌まじりになったり、ピアノで一節弾いて悦に入りたくなるような。
— るん (@nyny1121) 2019年1月27日
部分的に『オペラ座の怪人』からのメロディーラインも挿入されていて、前作のファンの気持ちも汲んでいると感じました。
「Dear Old Friends」は『オペラ座の怪人』の「プリママドンナ」へのオマージュを感じるナンバーですし。
最近は正直めっきり下火な印象のALWの作品の中で、この作品の音楽はクラシックからNYらしいshow tunesやロック調まで幅広い音楽を取り入れた、かつての名声を忍ばせる名曲の数々が散りばめられていて、彼のこの作品に対する思い入れのほどを伺わせます。
やはりALWはファントムをあのままにしては置けなかったのです。
観客側としては『オペラ座の怪人』に対するそれぞれの思いがあり、本作のストーリーを受け入れがたいという方も多くいらっしゃるのはよくわかりますが、これがALWの出した答えなのだと、私はあるがまま受け止めました。