『パリのアメリカ人』とは
2014年パリのシャトレ座にてプレミア公演された後、2015年にブロードウェイにて初演されたミュージカル。
1951年の同名のミュージカル映画を基にしている。
トニー賞を4部門で受賞した。
2017年にウエストエンド初演、日本では2019年が初演となる。
プレミア公演から引き続き、日本版もクリストファー・ウィールドンが演出した。
劇団四季にとって、浅利慶太没後、初めての新作の輸入ミュージカルとなった。
あらすじ(第一部のみ)
第二次世界大戦が終わりを迎えたパリ。
アメリカの退役軍人であり画家を志すジェリーは、ミステリアスで魅力的な女性リズを見かけ、一目ぼれをし、アメリカに帰国せずパリに残ることを決める。
その後、ジェリーは戦争で負傷したユダヤ系アメリカ人の作曲家アダム、繊維業界の御曹司でミュージカルスターになる夢を持つアンリと出会い、意気投合する。
アダムはシャトレ座のバレエ団のバレエクラスで伴奏の仕事をしており、ジェリーはダンサーたちをスケッチするため、アダムについていく。
一方、大富豪の相続人であるアメリカ人、マイロも支援資金の提供を検討するためバレエ団を訪れていた。
マイロはジェリーをその場で気に入り、その晩、ホテルリッツで行われるパーティーに招待する。
リズはこの日行われていたコール・ド・バレエのオーディションに遅れてやってくる。
彼女の踊りを見たマイロは、アダムの作曲で新作バレエの制作を依頼することに。
ジェリーとアダムはお互い口に出さないながら、二人ともリズに心を奪われてしまっていた。
ジェリーはリズを追いかけて、彼女の働くギャラリー・ラファイエットにやってくる。
そこで、彼はリズがアプローチするが、追い出されてしまう。
リズにはアンリと結婚する道が用意されており、実際にアンリのことをとても大切に思っていたが、恋愛感情という点からは彼のことを愛していないのだった。
ジェリーはセーヌ川のほとりで、リズにこの場所で毎日会ってくれるよう説得する。
二人はこの時間だけは現実の生活に縛られないこと、そして二人があっていることを周囲に秘密にすることで同意する。
ホテル・リッツへマイロを訪ねたジェリーは、彼の作品をマイロの新しいギャラリーで展示することを提案され、誘惑される。
来る日も来る日も、ジェリーとリズは密会を重ね、さらに深く恋に落ちていくが、友達以上の関係になろうとするジェリーをリズは拒否する。
愛を拒むリズに困惑と苛立ちを覚えながら、ジェリーはマイロと仮面舞踏会に参加するが、同じパーティーにアンリと参加しているリズを見つけてしまう。
キャスト
ジェリー・マリガン 酒井大
リズ・ダッサン 石橋杏実
アダム・ホックバーグ 斎藤洋一郎
アンリ・ボーレル 小林唯
マイロ・ダヴェンポート 岡村美南
マダム・ボーレル 秋本みな子
ムッシュー・ボーレル 味方隆司
オルガ 木村智秋
ミスターZ 金久烈
感想
今回が日本初演の『パリのアメリカ人』を観劇してきたので、レビューを残しておこうと思います。
初回は後方から舞台全体を俯瞰したいと思い、3階席後方のC席から観劇しました。
↓本公演の稽古場取材会▶︎「I Got Rhythm」「I'll Build a Stairway to Paradise」「An American in Paris」、演出家コメント
観劇直後の感想です。
パリのアメリカ人マチネ終演。ガーシュウィンを堪能する3時間弱。バレエ、タップの群舞とともに蘇る名曲たち。バレエ出身の演出家だけありバレエ要素多め。粋な場面転換。Stairway to the Paradiseのタップシーンでタップのstepの名前を訳してあるのでやや違和感あった。全体的にとてもよかった。
— るん (@nyny1121) 2019年1月27日
全体的な印象として、舞台がパリということもあり、おしゃれで粋。
冒頭のフランス国旗を翻しながらの場面転換から心を鷲掴みにされました。
同じガーシュウィンの楽曲を使用したミュージカルとして他に、劇団四季でも過去に何度も上演されてきている『クレイジー・フォー・ユー(以下CFY)』がありますが、CFYの方が楽曲数としては多いですね。
本作は楽曲数は少ないですが、後半に登場するタイトル曲が非常に長く、このバレエシーンの見応えがありました。
上記の通り、バレエのシーンが非常に多いです。
ただ「バレエ踊りますよ」と意気込んで踊るシーンだけでなく、spontaneousな流れで歩行者が歩きにバレエの動きを取り入れたりと、一つ一つの動きがおしゃれでした。
また、バレエだけでなく「I'll Build a Stairway to Paradise」でタップも楽しめました。
『プロデューサーズ』の「I Wanna Be a Producer」にあるようなbling-blingの衣装に身を包んだコーラスガールたちとともに燕尾服でアンリが踊るのは夢そのものですね。
このタップシーンで、「月曜日は〜、火曜日は〜・・・」という台詞がありますが、これはタップダンスのステップの名前を日本語に訳してあるので、それをご存じない方には違和感があったかもしれません。
↓本公演の製作発表会▶︎社長挨拶、プロデューサーコメント、演出家コメント、ガーシュウィン信託コメント、「An American in Paris」「'S Wonderful」「Shall We Dance?」、松島勇気コメント
1951年の同名映画との違いについてですが、演出家によると時代考証をした時にやや不自然になっている点を変更したそうです。
また映画で採用されていた曲に加えて新たに数曲Gershwinの楽曲が加えられています。
役者さんは、外部からも募集をかけてオーディションを行なっていますが、プリンシパルは四季の方が多い印象を持ちました。
その中でも一番バレエシーンの多いジェリー役は酒井大さんという外部の方でした。
谷桃子バレエ団に属されていたそうで、アメリカへの留学経験もあるとのこと。
リズも四季の若手のバレエ経験者が選抜されていました。
アダムは去年の『ソング&ダンス』でも追いかけていた斎藤洋一郎さん。
去年の11月、同じオーブで行われた『TOP HAT』では双子の斎藤准一郎さんが出演されていたので、既視感が強くて、改めてそっくりだなと思いました。
ただC席だと背景1/3が見切れるので、せっかくのプロジェクションマッピングを満喫できず。群舞の形態変化を俯瞰するには良かった。よって、KAATに移ってから1階で観直すことにした。純粋に好きだからもう一度観たいし。見切れはノートルダムでもあったな。結果的に安物買いの銭失いになるので注意。
— るん (@nyny1121) 2019年1月27日
そう、本作の魅力の一つに背景の美しさ、プロジェクションマッピングによるパリの風景の描写があります。
これを堪能するには、上記のツイートのようなことがあるので、1階席が断然オススメです。
↓オリジナルブロードウェイキャストによるperformance clip
2015 Tony Awards Show Clip: An American In Paris
最後に、これから観劇される方のためにグッズ情報を。
お目当てのTシャツは取り寄せ中とあったので、私はバッグチャームとフェイスタオルを購入しました。