ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

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『ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』2019.1.13.13:00@東京芸術劇場プレイハウス

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『ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』とは

2012年オフブロードウェイ初演、2016年ブロードウェイ初演のミュージカル。

トルストイ作「戦争と平和」の一部分を基にしている。

音楽はデイヴ・マロイDave Malloyによる。

トニー賞12部門にノミネートされ、2部門で受賞した。

今回が日本初演であり、演出は小林香。

あらすじ

19世紀初頭、モスクワ。

貴族の私生児として生まれたピエールは、莫大な財産を相続したが愛のない結婚をし、その人生にどこか虚しさを抱えながら、酒と思索に耽る毎日を送っていた。

ピエールと親交のある、若く美しい伯爵令嬢ナターシャは、アンドレイと婚約するが、アンドレイの父に、1年間離れて過ごしてお互いの気持ちが変わらなければ許可するという条件を出され、彼は外国へ。

従姉妹のソーニャとともにモスクワに出てきたナターシャは、名付け親であるマーリャ D.の家に身を寄せ、婚約者の帰りを待つことにする。

けれど、二人の結婚に反対するアンドレイの父・ボルコンスキー老公爵だけではなく、妹のマリアもナターシャを快く思っておらず、アンドレイのいない日々に、ナターシャは寂しさを募らせていた。

そんなある日、美しく魅力的な男アナトールと出会ったナターシャ。

その誘惑に抗えず、ついにはバラガのトロイカで駆け落ちする計画を立てる。

だがそれは失敗に終わり、アンドレイとの婚約も解消されてしまう。

一方、ピエールは妻エレンの不倫を知り、不倫相手のドロホフに決闘を申し込む。

かろうじて勝利するものの、意味のない命を賭けた闘いに、ますます鬱屈した気持ちを募らせていく。

虚しく生きる男と全てを失った少女、二人の運命はやがて重なり・・・。

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キャスト

ピエール 井上芳雄

ナターシャ 生田絵梨花

エレン 霧矢大夢

アナトール 小西遼生

ソーニャ 松原凛子

ドロホフ 水田航生

マリア はいだしょうこ

バラガ メイリー・ムー

マーリャ D. 原田薫

アンドレイ / ボルコンスキー老公爵 武田真治

感想

遅ればせながら、ずっと楽しみにしていたグレコメに行ってまいりました。

今、ニューヨークを中心に世界的に流行っているimmersive theatreに分類されるこの作品。

「immersive=没入した」という意味なので、immersive theatreは没入型劇場体験とでも言えるでしょうか。

immersive theatreは観客もその舞台の世界に入って楽しむことができるのが特徴です。

ニューヨークで現在特に人気のimmersive theatreとして知られているのは、『Sleep No More』や『Then She Fell』などが挙げられます。

『Sleep No More』公式サイト:https://mckittrickhotel.com/sleep-no-more/

『Then She Fell』公式サイト:https://thenshefell.com

今回、日本の大きい箱(=劇場)でどのようにimmersive感を演出するのかということも楽しみにしていた点の一つです。

オフでは音楽を手がけたデイブ・マロイがピエールを演じていましたが、オンに上がってからはジョシュ・グローバンに代わりました。

↓ブロードウェイ公演のtrailerです。


The Great Comet - 2017 Broadway Trailer

日本公演を観劇直後の感想です。

↓本公演のゲネプロの様子です。


『ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』公開ゲネプロ

immersive感を出す工夫としては、コメットシートという舞台上に設けられた座席、そのほか上演前や二幕開演前などに役者が客席まで降りてきて劇中の世界へ導入するような演出がありました。

コメットシートの方は役者に声をかけられ参加する場面(マリアにプロポーズされたり、アナトールに手の甲にキスされたり)もありました。

そのほか、市販されているエッグシェイカーを劇中でフリフリしてもOKでした。

私は2階席後方センター付近だったので、そこまでではありませんでしたが、思っていたよりはimmersive感を味わえたかなと思います。

ここは楽しんだ者勝ちみたいなところがありますね。

本来舞台裏や舞台背景を置くスペースも開放されていたので、舞台上は非常に広く使われていました。

奥に階段があり、舞台上には7つの窪みがあり、うち2つはオケピとして使用され、残りはコメットシートとなっていました。

演者達はその窪みを避け、マス目の縁を歩くように縦横無尽に舞台を歩き回るので、登場人物が多いということもあり、オペラグラスで追うには少し大変でした。

残念だったのは、日本語の歌詞があまり聞き取れなかったこと。

この作品はセリフが全て歌というオペレッタ形式だったので、歌詞を聞き取れないのは致命的でした。

そんな中、ピエールを演じた井上芳雄さんだけは全て歌詞もclearに聞き取ることができ、安定の実力を再認識しました。

さらに、彼のピエールの悲哀の演じ方は好きでした。

他には、意外と好きだったのはソーニャですね。

ナターシャとソーニャ役の方々は2017年のレミゼでコゼットとエポニーヌを演じた仲ということもあり、2人の場面は息が合っている気がしました。

Sonya AloneはOn My Ownをどこか思わせるものでした。

それ以外の方については、ノーコメントです。

今までは英語で理解していた舞台ですが、日本語になっても、やはりデイヴ・マロイの音楽は先が読めない、ジャンル横断的な面白さがあり、癖になりますね。

船上ピアニストとして海の上で様々な国の音に触れてきた彼ならではというか、民族音楽電子音楽、クラシックなど、多様なジャンルの音楽で独自の世界観を作り出していました。

返す返すも、キャストの声があまりに浅すぎること、箱が大きすぎてimmersive theaterというジャンル分けをするものとは程遠かったことなどが悔やまれます。