『王様と私(1956)』とは
1951年初演の同名のブロードウェイミュージカルを基にした1956年公開のミュージカル映画。
舞台版は、実話に着想を得た1944年の小説『アンナとシャム王』を基にしている。
アカデミー賞5部門受賞。
音楽はリチャード・ロジャースとオスカー・ハマースタインⅡ世による。
監督はウォルター・ラング。
あらすじ
未亡人のイギリス人教師アンナは息子のルイスとともに、シャム王の子どもたちの家庭教師として赴任する。
アンナは王の妻たちに幅広い知識を教え、彼らも一生懸命に勉強する。
しかし、アンナは王に対して、使用人として扱われることを拒み、衝突してばかりしてしまう。
ある日、アンナは、王がイギリスを脅威に感じていることを知り、励ますうちに次第に打ち解け心を通わせて行く。
一方、ビルマから貢物として送られてきたタプティムは、密かに使者のランタと恋仲になっており、結ばれることのない2人をアンナは度々助ける。
ある日、イギリス特使ラムゼイ卿一行が突然、王宮を訪れるという知らせが届く。
シャム植民地化のための視察ではと苦慮する国王に、アンナは西欧式の晩餐会でラムゼイ卿を歓迎し、シャムが近代的な国のように見せるよう提案する。
王はアンナの提案を受け入れ、それが功を奏する。
そんな次第に親しくなる2人にも別れの時が近づいていた。
キャスト
アンナ・レオノーウェンズ デボラ・カー(歌:マーニ・ニクソン)
王 ユル・ブリンナー
タプティム リタ・モレノ(歌:リオナ・ゴードン)
チャン王妃 テリー・サウンダース
クララホム首相 マーティン・ベンソン
ルイス・レオノーウェンズ レックス・トンプソン
チュラロンコーン王子 パトリック・アディアート
ランタ カルロス・リヴァス(歌:ルーベン・フェンテス)
感想
「祝・Kelli O'hara主演『The King and I』2019年来日」ということで、映画版を改めて観てみました。
「Shall We Dance」「I Whistle a Happy Tune」「Getting to Know You」「Hello, Young Lovers」などのロジャース&ハマースタインによる名曲が全編を彩っており、音楽から楽しめました。
歌声については、ユル・ブリンナー以外はほとんど吹き替えで、アンナ役のデボラ・カーはかの有名なマーニ・ニクソン*1ですね。
↓iconicなシーン「Shall We Dance」
Yul Brynner and Deborah Kerr perform "Shall We Dance" from The King and I
この作品が時代を経ても愛され続けている理由の一つに、王とアンナの踏み込みすぎない、淡い恋愛関係にあるのではないでしょうか。
キスシーンもありませんし、思いを打ち明け合うこともありません。
でも互いに好意を感じていて、そのプラトニックな激情は「Shall We Dance」で絶頂を迎えます。
未亡人の女性と一夫多妻制に則っている男性が、文化・慣習や言語の違いを超えて理解し合い、惹かれあい、結局、結末を見るまで目が離せません。
時代背景もあり、女性蔑視や民族蔑視のセリフも出てくるので、きっとタイ国内では議論を呼ぶ内容かと思いますが、個人的にはアメリカ人のアジアに対するイメージを垣間見られ興味深かったです。
ロジャース&ハマースタインのミュージカルではアメリカ人が1人も登場しない、珍しい作品でもあります。
*1:『マイ・フェア・レディ』のオードリー・ヘップバーンや『ウエストサイド物語』のナタリー・ウッドなどの歌の吹き替えで有名。『サウンド・オブ・ミュージック』ではシスター役として出演している。