ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『Once On This Island』『アイランド』2018.9.18.19:00 @Circle In the Square

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『Once On This Island』とは

1990年にオフブロードウェイで初演されたミュージカル。

原作はトリニダード・トバゴ出身の作家ローザ・ガイの1982年の小説『My Love, My Love; or, The Peasant Girl』。

一幕構成。

初演時にトニー賞受賞はなかったが8部門でノミネートされた。

今回の公演は、2017年のリバイバル公演で、ブロードウェイでは初めてとなる再演であり、トニー賞最優秀リバイバルミュージカル賞を受賞した。

日本では1995年に初演された後、アマチュア劇団やミュージカル座などにより公演されている。

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あらすじ

フランス領のとある島。

そこには「ペザント」と呼ばれる農民たちが暮らしていた。

一方、島の反対側には彼らと敵対する「グランズォム」と呼ばれる富裕層が住んでいた。

ある嵐の夜、怯える子どもにペザントたちはグランズォムに恋をした娘ティ・モーンの物語を語り始める。

幼い頃、洪水でひとり生き残ったティ・モーンは、ペザントの継母と継父に深く愛されて育っていた。

ある日、ティ・モーンの目の前に、車のトラブルで、グランズォムの青年ダニエルがたまたま現れる。

ティ・モーンは彼に一目惚れし介抱するが、すぐに彼は元のグランズォムの世界に戻ってしまった。

両親の反対を押し切り、ティ・モーンは愛する彼の元へ、果てしない道のりを歩いていくのだった。

道すがら、神々に見守られながらたどり着いたグランズォムの世界。

2人は互いの愛を確かめ合うが、ダニエルには婚約者がいた。

悲しみに暮れるティ・モーンに神々は語りかけるのだった。

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キャスト

Ti Moune.   Hailey Kilgore

Daniel    Isaac Powell

Papa Ge(死の悪霊).   Tamyra Gray

Erzulie(愛の女神).   Darlesia Cearcy 『How to Dance in Ohio』

Agwe(水の神).   Quentin Earl Darrington

Asaka(大地の母).   Alex Newell

Mama Euralie.   Kenita R. Miller

Tonton Julian.   Boise Holmes

Andrea.   Anna Uzele 

Armand.   David Jennings 

Little Girl.   Mia Williamson

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感想

2018年9月のブロードウェイ遠征の続きです。

この作品は、国内外通して初見でした。

初めて知ったのは、ずっと上の代の先輩が参加されていた劇団碧(劇団光座)という大学生のサークルによる公演の広告を見た時だったのですが、その時は観劇しませんでした。

今回の公演はCircle in the Square Theatreで行われました。

この劇場に一度行かれたことのある方はわかると思いますが、アリーナ型の円形劇場となっており、全周を観客に囲まれた中央で役者たちは演じます。

カリブ海の島を連想させるような演出として、床には砂が敷き詰められ、片側には海をイメージした溜池(プール?)があり、演者たちはその上を裸足で動き回るというものがあります。

また、開演前から舞台上では島での日常生活が再現されていて、至極自然に舞台の世界に入ることができました。

冒頭ではヤギさんやニワトリさんたちも登場し、のどかな平和な雰囲気がありました。

途中、火が灯されたロウソクも登場したのですが、水と炎が対照的で『オペラ座の怪人』の地下室をボートで進む場面が連想されるほど、非常に美しかったです。

トニー賞授賞式でのパフォーマンスです。 


Once On This Island perform "We Dance / Mama Will Provide" at The 2018 Tony Awards

このように、役者たちはほとんどが有色人種で構成されています。

特にErzulieは『ミス・サイゴン』のオリジナルキャストのキム役やディズニー映画でも活躍したLea Salongaがオリジナルキャストとして演じ、話題となりました。

私が観たときは既にLeaはカンパニーを抜けていましたが。

キャストで特筆すべきなのは、やはりティ・モーンを演じた若き才能ヘイリー。

若干19歳の細い体全体から溢れるエネルギッシュな歌声で、会場全体を魅了していました。

私は彼女の歌声にカタルシスさえ覚えました。

トニー賞にノミネートされて当然だと思いましたね。

彼女のティ・モーンを観ることができて、本当に幸運だったなぁと心から思います。

↓ティ・モールが希望を込めて歌う美しい一曲「Waiting for Life」


“Waiting For Life” Music Video

劇中には影絵を使って話を進める場面があります。

私は影絵を見る側だったのですが、前述の通りこの劇場はアリーナ型なので、影絵をつくる裏側を観ている方もいらっしゃって、座る位置によって全く印象の異なるショーになっている点も興味深いと感じました。

どこに座るのが正解ということはなく、どこに座っても舞台の全容がわかるようになっていたと思います。

事前に、原作本の日本語版を中古で購入し読了してから観劇したのですが、個人的には小説より舞台で観る方が好きでした。

事前情報の通り、アンデルセンの『人魚姫』とシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』の要素を確かに含んではいますが、観ている間は特にそういったことを気にせず、ショーを楽しみました。

平日ソワレだったこともあり、会場は2/3くらいしか埋まっていませんでしたが、もっと多くの方にこの美しいショーを知ってもらいたいと心底思った夕べとなりました。

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