ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『The Book of Mormon』『ブック・オブ・モルモン』 2018.9.16.19:00@Eugene O'Neill Theatre

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『The Book of Mormon』『ブック・オブ・モルモン』とは

2011年初演のブロードウェイミュージカル。

脚本・作詞・作曲はトレイ・パーカー、マット・ストーン、ロバート・ロペスにより、アニメ『サウス・パーク』とミュージカル『アヴェニューQ』のクリエイターたちが共作した作品となった。

トニー賞9部門を受賞。

2018年現在、来日公演、日本人キャスト公演ともに、日本ではまだ公演されたことがない。

あらすじ

末日聖徒イエス・キリスト教会宣教師トレーニングセンターで、モルモン宣教師になる長老ケヴィン・プライスは、自宅訪問でモルモン教に改宗させるデモンストレーションでクラスメイトを率いる。

プライスは信心深ければフロリダのオーランドでのミッションに参加できると信じているが、長老アーノルド・カニンガムとともにウガンダに送られることになる。

ウガンダ北部に到着すると、将軍の部下たちに強盗される。

布教を始めようとするが、現地の住民はいかに将軍が統治する日常が酷いものか打ち明けられ、「F**k you, God!」という意味の現地語である「Hasa Diga Eebowai」と繰り返すばかり。

プライスとカニンガムはナブルンギという現地の若い女性に居住区に連れて行ってもらうと、布教活動に失敗し続けている宣教師たちに出会う。

地区のリーダー長老マッキンリーは布教の評判が良くないことを伝え、プライスはとても不安になるが、カニンガムはそんなプライスとどんなことがあってもそばにいると励ます。

プライスはモルモン教の設立者であるジョセフ・スミス・ジュニアについて説くが、結局自身の話になり、今後他の宣教師たちと同じように布教活動に失敗するだろうと思い込む。

そこへ、将軍がやって来て、村の女性全員に女性器切除をするよう命令するが、それに抗議した村人を処刑する。

プライスはウガンダでの布教を諦め、オーランドへの異動を本部に申し出る。

カニンガムは見捨てられたことにショックを受けるが、ナブルンギがやって来てモルモン書についてもっと学びたいと語り、村人たちにも話を聞くよう説得してくれたため、カニンガムは状況を打破する勇気を持つ。

しかし、将軍の許しがない限り、村人たちは改宗できないという。

プライスは信条を再認識し、将軍に改宗を迫るが、将軍は全く心を動かされず、プライスを遠ざけるのだった。


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キャスト

Elderly Price.   Bud Weber

Elderly Cunningham.   Cody Jamison Strand

Nabulungi.   Kim Exum

Elderly Mckinley.   Stephen Ashfield

Mafala Hatimbi.   Sterling Jarvis

Joseph Smith.   Lewis Cleale

General    Derrick Williams

感想

今日も2018年9月に行ったニューヨークでの観劇日記の続きを書きたいと思います。

この作品は今回の遠征で必ず観たいと思っていた作品の一つ。

上に書いた通り、宗教的なテーマを多く含んでいることもあり、日本の上演は今後も難しいかもしれませんね。

モルモン教というのは日本では馴染みが薄いかもしれません。

私もこの作品を通して初めて知りました。

同じ宗教を扱った作品としてJCSがあり、こちらは初演当時劇場前にキリスト教関係者たちがデモを起こすなどしていましたが、本作については逆に宣伝になるということでモルモン教本部のお墨付きだそうです。

興味深いですね。


Clips from the Book of Mormon Musical on 60 Minutes

あの『サウスパーク』と『アヴェニューQ』のクリエイターのコラボレーションということで、観る前は相当えげつない内容なのだろうと覚悟していたのですが・・・

あれ?そうでもないかしら?

想像よりも割とマイルドな下ネタにブラックジョークだったかなと思います。

ちなみに、『サウスパーク』というのは主要登場人物である小学生のキャラクターたちが遠慮なく下ネタを言い続けるアニメ。

幼馴染が大ファンなので、私は小学生の頃から観ていましたが、R指定になるような言葉をこのアニメから学んだ覚えがあります。

また、『アヴェニューQ』というのは、セサミストリートのようなマペットを使ったミュージカルなのですが、可愛い見かけとは裏腹に、劇中ではマペット同士の露骨なセックスシーンがあるなど、大人向きのミュージカル。

こちらは2018年現在もオフブロードウェイで上演中なので、おすすめです。

それらのクリエイターたちだから、容赦ないかと思ったら、意外とそうでもなく、中学生以上なら楽しめるのではないかなと感じました。

また、この作品は、あらすじというより、登場人物のキャラや王道のダンスシーン、キャッチーなナンバーで魅せるミュージカルという印象でした。

まず登場人物のキャラですが、モルモン書の布教をしようという若い宣教師たちはいずれも、ちょっと幼くナイーヴに(ゲイっぽく、童貞っぽく)描かれて、もうその存在だけで笑いが起こるほど。

ウガンダ人の描き方はかなり偏見に満ちていますが、アメリカならokなのでしょうかね。

次に、とてもユニークなストーリーでありながら、ダンスやナンバーはブロードウェイミュージカルの王道をいく、思わず体が動き出してしまうようなものに仕上がっている点。

これには往年のミュージカルファンたちも大満足だったようです。

ただ、この手のジョークを笑えるかどうかで、この作品の評価には個人差が出ると思います。

ちなみに、私の隣にいたヨーロッパから来たと思われるご夫婦は終始固まっておられましたが、会場の大半は終始ゲラゲラ笑いで、私もミュージカルでこんなに笑ったことないというくらい笑い転びました。

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さて、ナンバーについてですが、圧巻のオープニング「Hello」、華やかなタップシーンが見事な「Turn It Off」、モルモン教の信条を新たに胸に刻む「I Believe」などなど名曲揃い。

私はLPを持っていて、家で何回も繰り返し聴いています。

俳優で特に印象に残ったのは、カニンガム役の役のコディ・ジャミソン。

もちろんオリジナルキャストではないのですが、全ての要素がカニンガムを演じるために生まれてきたような方でした。

眼鏡で背が低くてぽっちゃりで、愛犬のように愛でたくなるような可愛らしさを持った上で、舞台上で歌い踊るなんて、最高としか言いようがないです。

今後、日本で上演される可能性は極めて低いので、今まさにブロードウェイで観る演目に悩んでいる友人には、真っ先におすすめしたい作品です。