ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

ミューオタるんによる純粋なミュージカルブログ

『The Band’s Visit』『迷子の警察音楽隊』2018.9.15.so

f:id:urara1989:20181010203300j:image

『The Band’s Visit』『迷子の警察音楽隊』とは

2016年オフブロードウェイ初演、2017年ブロードウェイ初演のミュージカル。

2007年公開の同名のイスラエル映画を基にしている。

最優秀ミュージカル作品賞を含めたトニー賞10部門を受賞し、各紙批評でも軒並み高い評価を受けた。

あらすじ

1990年代初頭、8人からなるエジプトのアレクサンドリア警察音楽隊が、イスラエルの空港に到着した。

彼らはペタハ・ティクヴァのアラブ文化センターで演奏するようにと招かれたのだった。

しかし、いくら待てど迎えがこない。

なんとか自力で目的に到着しようとするが、乗ったバスはベイト・ハティクヴァという、似ている響きを持つ名前の辺境の街に到着してしまう。

その日はもうバスがなく、演奏会は翌日の夕方だった。

昼食をとっていた食堂の女主人ディナは、この街にはホテルがないので、自分の家と常連客イツィクの家と店に寝泊まりしているパピの部屋に分かれて泊まるよう団長に勧める。

団長とカーレドはディナのもとに、シモンら3人はイツィクのもとにお世話になることになる。

お互いに言葉も文化も宗教も違い、不慣れな英語で意思疎通をとることに。

団長はディナに、昨今の音楽の話から、次第に、息子と妻の死などプライベートな話まで打ち明けるようになるのだった。

f:id:urara1989:20181010205444j:image

キャスト

Dina    Katrina Lenk

Tewfiq    Sasson Gabay 

Itzik    Pomme Koch

Haled    Ari’el Stachel

Camal    George Abud

Papi    Etai Benson

Telephone Guy    Adam Kantor

Avrum    Andrew Polk

Zelger    Bill Army

Simon    Joseph Kamal

Julia    Rachel Prather

Sammy    Jona Than Raviv

Anna    Sharone Sayegh

Iris    Kristen Sieh 

感想

観終わって、しばらく立ちあがることができなかった…舞台を観てこのような経験をしたのはいつ以来でしょうか。

各紙演劇評や各演劇賞で総じて高評価を受けたこの作品に、私もすっかり魅了されてしまったのです。

所謂アメリカ的な、歌って踊ってさぁ楽しく!という部類の作品ではありませんし、どちらかというと成熟した大人向けで、万人受けはしないと思います。

この作品を観ながら片手に持つべきなのは、ミディアムボディのワインであって、決してオレンジジュースではないのです。

さて、この日はrush ticketを取るべく8時半頃にBarrymore劇場前に到着。

着いた時に既に並んでいたのは2人だけ。

寝坊して焦ってきたにもかかわらず、週末なのに意外と列は作られていなかったので一安心して、前にいたD.C.から来ていた女の子としばしミュージカルや最近の米国の政治に関するトークで盛り上がっているうちに、あっという間に一時間半経過し、無事にrushを入手できました。

左前サイドのオーケストラ、若干partial viewではあるものの、やはり40ドル台のチケットはお財布に優しいですね。


A Collection of Moments | The Band's Visit

この作品は始まりと終わりに同じ下のような文句を観客に投げかけます。

Once, not  long ago, a group of musicians came to Israel from Egypt.

You probably didn't hear about it.

It wasn't very important.

休憩なしの一幕構成のショーでしたが、非常に濃密な時間を過ごしました。

私は中東文化に詳しくないですが、エジプトとイスラエルは使われている言葉が違うのですね。

言葉や文化、宗教の異なる者同士が、カタコトの英語と音楽を通じて心を通わせる様を描いています。

この戸惑いや可笑しさを俳優たちは見事に演じきっていました。

たった一晩の出来事ですが、心が通じ会うのに時間なんて関係ないのですよね。

というかむしろ、一晩だけであったからこそ、打ち明けられたこともあったのでしょう。

主演のKatrina Lenkは、国籍不明のいわく付きの美女、といった雰囲気で、この作品のiconicな存在として終始異彩を放っています。

『ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ』でイツハク役をしていたことは、ユニセックスな風貌から容易に想像できますね。

彼女はこの役でトニー賞最優秀主演女優賞を受賞していますが、このperformanceを観て当然だと思いました。

音楽はアラブ音楽を連想させるようなexoticなものや郷愁を誘うようなバラードなど様々で、特に印象的だったナンバーが「Answer Me」。

それまでsoloが多かったところで歌われる合唱で、どこか懐かしさを感じる切ないメロディーにカタルシスを覚えました。


THE BAND'S VISIT (Broadway) - "Answer Me” [LIVE on TODAY]

Original Broadway Cast Recording も、イージーリスニングといってもいい感じの優れたアルバムになっています。

Vinylが出たら即買いしたいくらい、大好きな盤です。

実は、気に入ってしまって、脚本は既に購入済みなので、後でOBCRと照らし合わせながら読みたいと思います。

警察音楽隊”を構成する楽器たちは以下の通り。

  • oud ウード
  • darbuka ダルブッカ
  • clarinet クラリネット
  • violin ヴァイオリン
  • cello チェロ

ウードというのは、アラブ音楽文化圏で使われる琵琶に似た半円形の撥弦楽器

ダルブッカというのは、アラブ音楽やトルコ音楽で用いられるゴブレット形太鼓の一種。

また、見慣れたヴァイオリンなどの弦楽器やクラリネットはアラブ音楽を演出するために通常より低めにチューニングしているのだとか。

芸が細かいですね。

彼らの本番での演奏が始まろうとするまさにその瞬間に、この作品の幕はおります。

この映画を観たことはなかったのですが、今回の観劇で元の映画の方にも俄然興味が湧いて来ました。

機会があったらみてみようと思います。