ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『Carousel』『回転木馬』2018.9.14.20:00 @Imperial Theatre

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『Carousel』『回転木馬』とは

リチャード・ロジャース作曲、オスカー・ハマースタインII作詞によるミュージカル。

1945年ブロードウェイ初演。

原作はモルナール・フェレンツによる戯曲『リリオム』。

あらすじ

舞台はメイン州の漁村。

回転木馬の呼び込みを生業とする男ビリーは客として来ていた女工ジュリーを口説き、恋仲となる。

二人はやがて結婚するが、客に手を出したとしてビリーは回転木馬を解雇され、生活苦に苛立つビリーはジュリーに度々手をあげるようになっていた。

やがて、ジュリーが子どもを孕み、父親になる日が近づくのを意識したビリーは、焦りのあまり大金の盗みを企てる。

しかしあえなく失敗し、逃亡する際にビリーは事故死してしまった。

粗暴だったが愛していた夫を失い、悲嘆にくれるジュリー。

しばらく経ち、天界で暮らしていたビリーは、自分の子どもが苦難に陥っていると聞きつけ、星守starkeeperに許可を得て1日だけ地上に戻ってくる。

ビリーの娘ルイーズは、父親が泥棒だったという汚名から、友人らからいじめの対象となっていた。

ビリーはルイーズの前に姿を現し、天界の星のかけらを渡して励まそうとするが、警戒するルイーズに苛立ち、彼女をぶってしまう。

ルイーズは、ぶたれたのに痛くないことを不思議に思い、母親であるジュリーに尋ねると、ジュリーはそういうこともあるのだと、ビリーのことを思い出しながら娘に語りかけるのだった。

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キャスト

Julie Jordan    Jessie Mueller

Billy Bigelow    Joshua Henry

Carrie Pipperidge    Lindsay Mendez

Nettie Fowler    Rosena M. Hill Jackson

Enoch Snow    Alexander Gemignani

The Starkeeper    John Douglas Thompson

Louise    Brittany Pollack

感想

今回の遠征2作目は、closingを目前にしていた回転木馬のrevivalです。

この作品は映画版も国内公演(この時のジュリーは笹本玲奈さんでした。)も観ていて、親しみのある作品でした。

冒頭の美しいovertureとバレエのみによるパフォーマンスが印象的で楽しみにしていたのですが、今回のproductionは期待を上回る感動的なものでした。

実際に回転木馬の舞台装置はないのですが、回転木馬を象徴するひさしの下でダンサーたちが見事に円舞し、人体だけで回転木馬の賑やかな様子を生き生きと表現していました。

振り付けはニューヨークシティバレエで主席振付師を務めたこともあるジャスティン・ペックで、ダンサーにもニューヨークシティバレエの方がいらっしゃるようです。

さらに、Nettie役のオリジナルキャストにはメトロポリタンオペラで活躍するRenée Flemmingが配役されていました。

つまり、非常にリンカーンセンター寄りといいますか、ダンスも歌唱も非常に徹底してクラシックな作品に向き合おうというproducerたちの意気込みを感じます。

ハリウッド大作を舞台化したミュージカル作品を上演する劇場が林立するブロードウェイ界隈で、この作品は格調高く、ひときわ際立っていました。

俳優に関してですが、キャロル・キングの自伝的ミュージカル『Beautiful』でも主演したジュリー役のジェシーミュラーはカメレオン女優の異名を持つ名女優さん。

キャリー役のリンゼイ・メンデスはこの役でトニー賞助演女優賞を受賞しており、彼女の歌う「Mr. Snow」はなぜか笑いが起きるほど、ユーモラスに感情を込めて歌うことができるのです。

さて、ビリー役のジョシュア・ヘンリーは、粗野で無骨な男を熱演しており、本作のleading actorとしての役割を全うしていました。

回転木馬の呼び込みの男が、ある女性との出会いから恋をし、父になり、家族を守るため必死になるあまり罪を犯し、死してなお一度も抱くことのなかった娘に愛を伝えるために地上に降り立つという難しい役どころなのですが、彼の素晴らしい名演に心打たれました。

作品全体についてですが、正直、この作品中のジュリーのことが映画版を観た時、あまり好きではなかったのです。

彼女は一目惚れしたビリーにDVまでされて我慢して、何というか、女性的で弱々しい女といいますか、『My Fair Lady』と同じような男性の考えたファンタジーと思ってしまったのです。

ただ、今回の観劇ではむしろ、ネティに「You'll Never Walk Alone」で励まされながらの、二幕以降のジュリーの気丈な立ち振る舞いや娘への諭し方に女性の強さを感じ、感動しました。

10代の頃に感じた印象からの変化に、自分自身驚いてしまいました。


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