ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『ナイツ・テイルー騎士物語』2018.8.19.18:00 @帝国劇場

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『ナイツ・テイルー騎士物語』とは

2018年日本にて世界初演されたミュージカル。

原作はシェイクスピアによる『二人の貴公子』。

レ・ミゼラブル』などを手がけてきた演出家ジョン・ケアードが中心となって制作した。

あらすじ

テーベの騎士で従兄弟同士のアーサイトとパラモン。

テーベ王の伯父クリオンに仕える二人は、熱い友情を誓い合い、騎士としての誇りと名誉を何よりも大切に生きていた。

戦争により敵国のアテネの大公シーシアスに捕虜として捕らえられるも互いに励まし合いながら同じ牢獄で過ごしていた二人は、ある日、シーシアスの美しき妹エミーリアを牢獄の窓から見掛け、同時に恋に落ちてしまう。

だがアーサイトは追放され、テーベに戻るよう命じられる。

アーサイトは残ったパラモンがエミーリアに近づくのではないかと、一方パラモンは祖国に戻ったアーサイトが兵を率いて攻め入りエミーリアを奪うのではないかと、互いに猜疑心を抱きながら、愛するエミーリアを必ず手に入れると決心し道を違えていく。

テーベへ戻る途中で、アーサイトは森の楽団を率いるダンス指導者ジェロルドに出会う。

エミーリアの誕生祝賀の稽古をしている一座に名を偽りダンサーとして加わったアーサイトは、再びエミーリアに出会うチャンスを得る。

その頃パラモンは、食事の世話をしてくれる牢番の娘の手引きにより牢獄を脱出する。

牢番の娘は脱獄という危険を冒すほどパラモンを愛していたが、ふとした瞬間にパラモンが去ってしまい、ショックのあまり正気を失ってしまう。

エミーリアとの再会を果たしたアーサイトは、シーシアスが愛するアマゾンの女王であったヒポリタの計らいもあり、周囲には正体を隠して彼女に仕えることになったが、シーシアスやエミーリアたちと狩猟に出かけた森で、無二の友であり今や恋敵となったパラモンと出会う。

艱難辛苦を経て再会した二人は、どちらがエミーリアを得るにふさわしい男か、愛と名誉と生死を賭けて決闘を挑むのだった。

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キャスト

アーサイト  堂本光一

パラモン  井上芳雄

エミーリア  音月桂

牢番の娘  上白石萌音

シーシアス  岸祐二

ジェロルド/クリオン  大澄賢也

ヒポリタ  島田歌穂

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感想

世の中の潮流に逆らいたいという生来の気質を封印し、『ナイツ・テイル』に行ってまいりました。

やはり井上芳雄の出演するミュージカルはなるべく欠かさず観ておきたいという気持ちが一番強かったかしら。

舞台は高さのある木の枠組みで囲まれ、その中に演者や日本古典楽器の演奏者が所狭しといました。

原作の時代背景を考えてか、台詞は時代劇調で和洋折衷という印象。

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シーシアスのマスクが、ジュリー・テイモアが考案した『ライオンキング』の動物たちのマスクを思い起こさせるもので、まぁ真似したんでしょうね。

このマスクの意味が最後までわからなかったなぁ…威厳を持たせるため?

ジュリー・テイモアも日本の浄瑠璃に影響を受けているから、逆輸入ということになるのか。

個人的には、台詞に重みをもたせたいがために古語をわざわざ使っている感じがして、少し違和感を感じながら聴いていました。

これは、もとの英語の台本がだめというより、翻訳・訳詞が悪いんでしょうね。

音月さんは確かに綺麗な歌声でしたが、何というか、2人の男が同時に一目惚れするような絶世の美女タイプを演技や歌で表せていたかというと…なんとも言えません。

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それとは対照的に、上白石萌音さんの演技と歌が冴え渡っていて、鳥肌もので、もう少しで危うく泣くところでした。

『舞妓はレディ』からずっと存じ上げていますが、着実に芸能界で磨かれていっていますね。

というのは、彼女はふとした呼吸や歌い出しに自然に感情を乗せることができているからで、これは歌い手としてトレーニングを受けてもなかなか体得するのが難しい部分だからです。

「ちょっとだけ泣いて、ちょっとだけ死ぬの…」の歌で特に顕著でしたね。

それにしても、音月さんとは友達とか姉妹というより親子にも見えてしまいそうなほどでした。

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貴公子2人は、途中、小学生男子のような無邪気すぎるやりとりばかりで、私は苦笑いばかり。

可愛いというか、ああ男ってバカだわと思える筋書きでした。

井上さんはいつものごとく安定しておりました。

島田歌穂さんが綺麗すぎて、綺麗すぎて、二度見してしまいました。

4月のメリポピでは鳥にエサを与えるおばあさん役だったのに、さすが振り幅広すぎます。

総評として、和の文化を取り入れようとか笑いも織り交ぜてとか、色々頑張っているのはひしひしと伝わるし、楽しめはしたけれど、そこまで心には残らない作品でした。

最後に、パンフレットのサイズをひとまわり大きくしたことに関して、誰も喜んでいませんから。

いつもの本棚に並べて入らず、置き場に困っています。

そもそも一冊の値段が高すぎるし、わざわざ公演期間前半と後半で表紙の色を変えて二冊買わせようとしたり、大きくして特別感を出させたり…やめてください。

ちょっと悪いことばかり書いてしまいましたが、帝劇の軽食とお手洗いは改善されていたので、付記しておきます。