『コーラスライン』とは
1975年初演のブロードウェイミュージカル。
原案はマイケル・ベネットによる。
トニー賞を9部門受賞している。
2006年ブロードウェイでリバイバルされた際のキャストのオーディションの様子は、ドキュメンタリー映画『ブロードウェイ♪ブロードウェイ〜コーラスラインにかける夢』にまとめられており、コニー役に選ばれた日本人、高良結香さんも出演している。
あらすじ
舞台は、とある新作ブロードウェイミュージカルに出演するコーラスダンサーのオーディション会場。
わずか8つの枠をかけて集まったダンサーのうち、最終選考に残されたのは17人の男女。
候補者たちは、それぞれの想いを胸に“コーラスライン”ーステージの一番正面に引かれた1本の白いラインーに並ぶ。
不安に包まれる彼らに、演出家ザックは語りかける。
「履歴書に載っていないことを話してほしい。君たち自身のことを」。
ダンスに魅了されたきっかけを話すマイク。
家庭環境に恵まれず、つらい日々の中で生きる希望をバレエに見出したシーラ、ビビ、マギー。
音痴に悩むクリスティンと夫のアル。
夢精を性病と間違える恥ずかしい思春期のエピソードを暴露するマーク。
背が低いことを理由にバレリーナを諦めたコニー。
演劇学校の落ちこぼれだったディアナ。
妻子持ちのドン。
幼少期に父親が失業したジュディ。
ゲイのグレッグ。
奨学金を得て大学に通い、幼稚園教諭をしていたリッチー。
ダンスがどんなに素晴らしくても、見た目で不採用続きだったため美容整形をしたヴァル。
そんな中に、ザックの元恋人キャシーの姿もあった。
彼女はかつて舞台で主役を張るスターだった。
ザックは「コーラスダンサーの器ではない」と諭すが、キャシーはダンスへの純粋な想いを語るのだった。
キャスト
※本公演では会場にキャスト表の掲載がなかったため、プログラムにあるキャストを書いておきますが、実際にはunderstudyだった可能性もあります。
グレッグ Nicholas Berke
ディアナ Natalie Bourgeois
ヴァル Melissa Cabey
ドン Wesley Ian Cappiello
ロイ Gideon Chickos
ザック Aaron Patrick Craven
ブッチ Giovanni Da Silva
シーラ Kahla Davis
トム Steven Del Col
リッチー Darius R. Delk
ヴィッキー Hannah Fairman
マギー Veronica Fiaoni
ロイス Emily Franklin
ジュディ Lauren Garriott
フランク David Grindrod
コニー Samantha Cho Grossman
クリスティン Erica Jane Hughes
マーク Peter Hughes
ボビー Ryan Koerber
アル Charlie Nash
ビビ Laura Pierpont
ポール Joseph Rosario
マイク Andrew Natale Ruggieri
トリシア Zoë Schneider-Smith
キャシー Madison Tinder
ラリー Josh Zacher
感想
これ(A Chorus Line、以降ACL)は、2つ目にブロードウェイで観劇した思い出深い作品であり、劇団四季による公演も観たことがあります。
今回は、生オケでfullで通して聴く機会もなかなかないし、翌日に都内で予定があるついでに観ておこうか、という気持ちで行きました。
やはりscoreが大好きで、opening の「From the top, 5, 6, 7, 8」からの流れでいつも鳥肌が立ってしまうのです。
最近CDを手放してレコードを集めるようになったのですが、ACLは映画盤もオリジナルブロードウェイキャスト盤も手元に置いてよく聴いています。
今回の演出は、オリジナルでコニーを演じた、バーヨーク・リーさん。
上に書いた『コーラスライン♪〜』にもプロダクションスタッフとして登場していましたが、キャスト選考で高良さんのコニーについて「コニーは実際にニューヨークの下町で生まれて、大都会で揉まれながら生き抜いてきていなければ、その味は出せないわ」みたいなことをおっしゃっていて、私は「この国の文化を愛して海外から来て、言葉の壁を乗り越えて頑張っている高良さんに向かって、この人は何を言ってるんだ」と少々憤慨したのを覚えていますが。
(最終的に高良さんがオリジナルに選ばれたのでok…)
ブロードウェイの劇場の方が狭いことも手伝ってか、私個人としては2008年にブロードウェイ観劇した時とは程遠いものでした。
うまく言葉にできないけれど、少しの悪評でクローズに追い込まれる緊張感とか、そういったものがブロードウェイに魔法をかけて、ブロードウェイを特別な場所にしているんですよね。
ああ、それでもここまで違うものかと思いましたね…ダンスのキレとか、演技への熱量の込め方とか。
改めてミュージカルはブロードウェイ、ウエストエンドで観るに限ると思いました。
そして、やはりいつもの、ポールの台詞「Take care of my son...」のところで涙腺崩壊。
例のごとく、私は親子ものに断然弱いんです。
そして、大団円を飾る「One」。
この「One」の歌詞をかいつまむと「彼女の優雅なステップ、一挙手一投足にもう夢中さ」みたいなことを繰り返し歌っているわけですが、当たり前ですが、このOneとは主役のこと。
このミュージカルの登場人物たちは決してOneにはならない、端役のダンサーたち。
しかし、「One(reprise)」では彼ら一人一人が自分自身のことを「僕らこそOneだ」と高らかに歌い上げているように見えます。
そして、終盤で舞台後方に現れる鏡には、私たち観客もしっかりと映り、自分たちも彼らと同じ夢追い人になったように錯覚するのです。
一幕構成であっという間に終わってしまいましたが、この休憩を挟まないスタイルが、オーディションの緊迫感を作り出しているように思いました。