『グーテンバーグ・ザ・ミュージカル』とは
2006年オフブロードウェイ初演の、アンソニー・キングとスコット・ブラウンによるミュージカル。
もともとは2005年のニューヨーク・ミュージカル・フェスティバルの出品作だった。
ロンドン、パリなど世界各国で上演されている。
役者は2人のみで、彼ら2人のつくったミュージカルを、プロデューサー役である観客たちがジャッジするというバッカーズ・オーディションを再現する形をとり、観客参加型ミュージカルのひとつである。
あらすじ
村の住人たちのほとんどが文字を読めないことに憤りを感じるグーテンバーグは、皆のために何か出来ることがないかと悩む。
そんなある日、グーテンバーグの助手で彼に恋心を寄せるヘルベチカの一言にグーテンバーグは閃く。
「だってこの町には読むものがないんですもの」
皆に読むものを与えようと聖書のコピーを作ることを思いついたグーテンバーグは印刷機の発明を決心するが、文字を読むという行為が自分だけに許された特権であり、読めることが力であると知っている性悪な修道士は、若い修道士を従えグーテンバーグの発明を邪魔しようと計画する。
グーテンバーグが自らの才能と発明に浮かれている間に、修道士はヘルベチカをそそのかし、グーテンバーグが苦労して発明した印刷機を破壊させる。
ヘルベチカは後悔するが、そんな折、グーテンバーグからプロポーズされる。
自らの罪に打ちひしがれるヘルベチカはプロポーズを断り、グーテンバーグの元を去る。
修道士に印刷機を元に戻すようヘルベチカは懇願するが、修道士は計画の邪魔になることを恐れて彼女を監禁する。
絶望したヘルベチカは命を絶とうとするのだった。
やがて、印刷機を民衆に披露するフェスティバルの訪れる。
グーテンバーグは自信満々に印刷機を披露するが、そこにあったのは破壊された印刷機の無残な姿だった。
それと同時に、修道士は、聖書を印刷しようとする行為は神への冒涜であるとグーテンバーグを責め、グーテンバーグを火あぶりにすることを命ずるのだった。
キャスト
ダグ 鯨井康介
バド 上口耕平
感想
この日は『エビータ』観劇後、暴風雨凄まじい中、行ってまいりました、『グーテンバーグ・ザ・ミュージカル』。
西新宿駅から道すがら、何度も「今日はもう帰ろう…」と「いやここまで来たからには引き下がれぬ…」の応酬が。
最終的に全身ずぶ濡れになり劇場に到着し、お気に入りのワンピースも台無しになってしまいました。
しかし、笑いに次ぐ笑いに、やっぱり頑張ってきてよかったと心底思ったのでした。
この作品は初見ですが、雰囲気はちょっとしたお笑い芸人さんのライブという感じ。
ただそういう安っぽい感じにならず、ミュージカルとして観られるのは、演者さんたちの歌唱、演技、ダンスのキレetc.のレベルの高さによるのだと思いました。
笑いのツボをひとつひとつ列挙していくと枚挙に暇がないですし、なかなか文字にしづらい部分もありますので、ちょっと割愛してしまいます。
狭くほとんど何も置かれていない舞台を2人が縦横無尽に飛び回り、文字通り全身を張ったパフォーマンスを繰り広げていました。
上記の通り、バッカーズ・オーディションを再現しているのですが、2人が作ってきたミュージカルを、たった2人だけで何役も演じ分けています。
その役の時は舞台後方に置かれている役名の書かれている帽子を被ります。
途中、帽子をかぶり間違えないかと内心ヒヤヒヤしていました。
鯨井さんははじめましてですが、同世代としてこれからまた刮目していきたいと思います。
上口さんは何度か他作品で拝見していて、今回主演として出演されるのを楽しみにしていましたが、期待を裏切らない演技、センスに安心しました。
グーテンバーグは世界史の授業で名前を聞いたくらいで、彼を題材にミュージカルを作ろうという発想がどこから湧き出てくるのだろうと思いました。
ヘルベチカはフォントの種類のひとつですね。
個人的に上口さんのヘルベチカがツボで、彼女に扮している最中はずっと笑いっぱなしでした。
上口さんが『How To Succeed In Business Without Really Trying』のフィンチ役を目指しているというガチ目標を冒頭で宣言するところ、素敵だと思いました。
いや、頑張って欲しいです、応援しています。
真面目な内容を、物凄くふざけて演じるのに、音楽がめっちゃ聴かせるナンバーなので全体的に締まる、という不思議な作品でした。
アメリカでの公演をYouTubeより、劇中の一コマ「The Press Song」です↓
Gutenberg! The Musical! (4/14) "The Press Song"
演じる方によって、十人十色、色々な色に染まりうる面白いミュージカル作品に出会いました。