『エビータ』とは
1978年ウエストエンド初演、翌1979年ブロードウェイ初演のアンドリュー・ロイド・ウェバー(ALW)によるミュージカル。
アルゼンチンのフアン・ペロンの2人目の妻であるエヴァ・ペロンの人生を基にしているが、フィクションである。
トニー賞作品賞を受賞した初めてのイギリスミュージカルであるという意味で、ALWの出世作。
ブロードウェイ初演のエヴァはパティ・ルポンはトニー賞主演女優賞を受賞し、「Don’t Cry For Me Argentina」は以来、彼女の十八番になっている。
1996年にマドンナ主演で映画化されたことでも有名。
日本では劇団四季により公演されていたことがある。
↓年代物ですが、オリジナルキャストのパティ・ルポンのエヴァ、大好きです。
Don't Cry For Me Argentina Evita Patti LuPone 1980
あらすじ
1952年7月26日、ブエノスアイレスの映画館。
モノクロームの恋愛映画が突如中断され、役人の悲痛なアナウンスが流れる。
「アルゼンチンの精神的指導者であるエヴァ・ペロン大統領夫人が、永遠の眠りについた」と。
国中が喪に服す中、チェだけは大規模な葬礼を冷ややかに眺めていた。
一介の女優から大統領夫人にまで上り詰め、「聖エビータ」と讃えられた女性は、どのように生き、逝ったのか。
チェが狂言回しとなり、彼女の過去が紐解かれる。
時は1934年に遡る。
巡業中のタンゴ歌手マガルディに熱い視線を注ぐ、15歳のエヴァ。
田舎町から逃げ出したい一心のエヴァは彼を誘惑するが、マガルディは地位も教養もない人間に大都会は厳しいと説得する。
しかし、エヴァの決意は揺るがず、ブエノスアイレスへと旅立つ二人。
憧れの街で成功を掴んでみせると誓ったエヴァは、マガルディと別れ、男たちを足がかりにモデルやラジオドラマの女優として活躍し、美しさと強さを増していく。
1943年、混迷を極める政界で、労働改革を推進するホワン・ペロン大佐が頭角を現す。
翌年、サンホワン大地震の慈善イベントで運命の出会いを果たしたエヴァとペロンは、急速に絆を深めていく。
ペロンの若い愛人を彼の屋敷から追い出し、ペロンの傍らで野心の階段を昇り続けるエヴァを、富裕層と軍部は苦々しい思いで見下していた。
第二次大戦後、ペロンが失脚し軍部に逮捕される。
引退を考えるペロンに対し、エヴァの野心はとどまることを知らない。
ラジオ番組を通してエヴァらペロン支持派の労働者たちに蜂起を訴え、新生アルゼンチンの到来を望む彼らの大規模なデモの影響でペロンは晴れて釈放される。
1946年、アルゼンチン大統領官邸カサ・ロサダのバルコニー前に民衆の歓喜の声が響き渡る。
前年に結婚しエヴァの夫となったペロンが大統領選で勝利を収めたのだ。
ついにアルゼンチンのファーストレディとなったエヴァは、ペロンと自分自身を支持してくれた民衆のために愛と献身を尽くすことを誓う。
26歳の若さで頂点を極めたエヴァの未来を静かに予見するチェと、ヨーロッパ外遊に向けて最高級のドレスと宝石で自分を飾り立てるエヴァ。
フランコ独裁政権下のスペインは彼女を熱狂的に迎えるが、続く訪問国での成果は芳しくなかった。
帰国後、福祉政策に深く関与していくエヴァは、富裕層が運営する慈善団体はエヴァを拒絶し、彼女は自ら「エヴァ・ペロン基金」を設立する。
チェは、エヴァ・ペロン基金の資産運用や会計の杜撰さを暴くが、社会の底辺で苦しむ人々や貧しい子供たちは自分たちに救いの手を差し伸べるエヴァを聖女のように敬愛していた。
エヴァの偽善やペロン政権のふはいを揶揄するチェに対し、プロセスよりも結果だと言い放つエヴァ。
そんな彼女の身体を病が蝕む。
彼女に翻弄された政府要人は安堵するが、今のアルゼンチンがあるのはエヴァのおかげだとペロンは諭す。
自分の衰えを認めないエヴァは副大統領就任を望むが、それは叶わない夢だった。
最後のラジオ演説で、エヴァは無念にも副大統領選への出馬辞退を宣言する。
キャスト
エヴァ Emma Kingston
チェ Ramin Karimloo
ペロン Robert Finlayson
マガルディ Anton Luitingh
ミストレス Isabella Jane
感想
はい、ようやく行ってまいりました。
今までパティ・ルポンの『Evita』original Broadway cast recordingを何度も聴いてきましたが、なぜかいつもすれ違ってばかりで、今回初めてliveで通して観ることができました。
このツアーは日本限定でチェ役としてラミン・カリムルーが出演しています。
彼を舞台で観るのは実は2回目。
初めて観たのは、ロンドンの『Love Never Dies』初演でした。
ファントムがカリムルーで、クリスティーヌがシエラ・ボーゲスと、今思うととても豪華な面々ですが、当時は「オリジナルキャストになるくらいだから、この人たちALWのお気に入りなんだろなぁ」くらいにしか思っていませんでした。
そこから、カリムルーにはファントムというイメージがつきまとっていましたが、今回はチェ・ゲバラとしてまた違う一面を見せてくれました。
ただ、もともとInstagramで知ってはいたものの、刺青の入ったファンキーな風貌は、私の知っている向学心と正義に燃えるゲバラ像とはかなりかけ離れていて、ちょっとついていけませんでした(ラミン、ごめんよ)。
ただ、歌を含めセリフは一言一言3階席の私の胸にまで飛び込んできて、意識的に丁寧に発音していることがよくわかり、伝わってきました。
エヴァ役のエマさんは、カリムルーが何度も絶賛していただけにとても楽しみにしていましたが、その期待を裏切らない素晴らしいパフォーマンスでした。
パティ・ルポンのエヴァより、もっと優雅で優しい感じがして、どちらのエヴァも私は好きでした。
そして、実物のエヴァ・ペロンに似ているなと思っていたら、なんとエマさんのおばあさんはアルゼンチン出身とのこと。
いやはや、パティも「エビータは叫んでばかり。最低な経験だったわ」なんてボヤいていたほど、惜しげも無く高音のロングトーンが続く役者泣かせの役どころですが、(『レント』では秋田犬Akitaと掛けてうるさいって言われてしまいますしね)エマさんはそれを見事に演じられていましたね。
体調管理含め、感服いたしました。
お疲れさまです。
10代から30代、病気で亡くなるまでを描きますが、最期病気で衰弱する様子を表現するため、椅子を故意に大きめにつくり、体を小さく見せているなど、さまざまな工夫をされているそうです。
半年前からチケットを取って待ちに待った観劇でしたが、非常に満足したものとなりました。
劇団四季、再演してくれないかしら。
【動画】ミュージカル『エビータ』メディアコール 2018.7.4@東急シアターオーブ