『はじまりのうた』とは
2013年公開のアメリカの音楽映画。
監督・脚本は『ONCE ダブリンの街角で』のジョン・カーニー。
当初は5館のみでの公開だったが、口コミで評判が高く、全米1300館にまで広がった。
劇中歌「Lost Stars」はアカデミー賞歌曲賞にノミネートされた。
あらすじ
シンガーソングライターのグレタは、制作した曲が映画に採用されたボーイフレンドのデイヴとともに、イギリスからニューヨークにやって来たが、デイヴの浮気により打ちのめされる。
友人のスティーヴは、傷心のグレタを励まし、ライブバーに連れて行き、無理矢理ステージに上げる。
嫌々ながらもステージで自分のつくった歌を歌うグレタの姿が、落ち目の音楽プロデューサー、ダンの目にとまる。
ダンはグレタに一緒にアルバムをつくろうと持ちかける。
ダンは、以前はグラミー賞を受賞するアーティストを発掘するなど、業界では有名なプロデューサーだったが、現在は歌手だった妻に浮気され、事務所も解雇され、寂しく別居生活を送っていた。
デモテープをつくるにもスタジオを借りるお金がない二人は、路上で収録することを思いつく。
若手のアーティストや路上の子どもたち、さらに娘バイオレットをも巻き込んだ収録は、疎遠だったダンの家族を再び引き寄せるのだった。
留守番電話に吹き込まれたグレタからの歌をきき、デイヴは急いでグレタに連絡を取り、自分の犯したことを詫び、もう一度やり直したいと言う。
心から謝るデイヴに考え直そうとするグレタだったが…
Begin Again Official Trailer #1 (2014) - Keira Knightley, Adam Levine Movie HD
キャスト
グレタ キーラ・ナイトレイ
ダン マーク・ラファロ
バイオレット ヘイリー・スタインフェルド
デイヴ アダム・ラヴィーン
スティーヴ ジェームズ・コーデン
サウル ヤシーン・ベイ
トラブルガム シーロー・グリーン
ミリアム キャサリン・キーナー
感想
初めて観た時、こんなに素晴らしい映画があるんだと感動したのを覚えています。
ニューヨークの街並み、人との出会いの素晴らしさ。
『ONCE〜』と同じように、年の離れた(親子までは離れていないけれど)男女の友情以上恋人未満の関係性のもどかしさ、喜びを、絶妙なバランスで描いています。
決して『ONCE〜』の二番煎じではありません。
マルーン5のアダム・ラヴィーンの歌が上手いのは言うまでもないことですが、キーラ・ナイトレイも歌える女優さんです。
マーク・ラファロは程よい落ちぶれ感と楽観性がある愛すべきおじさまを熱演しています。
そして「Lost Stars」は鳥肌が立つほどの名曲です。
字幕を見ながら久々に泣きました。
また、この映画で最高なシーンは、二人がお互いのiPodに入っているプレイリストを一緒に聴きながら、夜のニューヨークを闊歩する場面。
プレイリストって、まず他人に見せないですし、だからこそその人らしさが一番表れている部分なのかもしれませんね。
それまであくまで音楽の共同制作者だった二人が、音楽を通して自分をさらけ出すことで、急速に距離を縮めるのですが、このシーンを観て笑顔にならない人なんていないのではないでしょうか。
因みに、プレイリストに入っている音楽は次の通り。
- 「Luck Be a Lady」Frank Sinatra
こちらは、ミュージカル『野郎どもと女たち』からの一曲ですね。
- 「For Once In My Life」Stevie Wonder
初期のスティービーの作品。
- 「As Time Goes By」Dooley Wilson
言うまでもなく映画『カサブランカ』より。
後日、グレタが二人でiPodが聴けるこの接続器をダンに送り、ダン夫妻の仲が縮まったのは微笑ましかったですね。
エンドクレジットまで含めて、無駄がなく、気持ちよく観られる、奇跡的な作品と言えるかもしれません。