ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『ラスト・ファイブ・イヤーズ(2014)』Last Five Years

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『ラスト・ファイブ・イヤーズ』とは

同名のオフ・ブロードウェイミュージカルを映画化したもの。

元々のミュージカルは、シカゴでのレビューの後、2002年オフ・ブロードウェイ初演。

『パレード』や『ソングズ・フォー・ア・ニュー・ワールド』などを手がけたジェイソン・ロバート・ブラウンの作品。

彼自身の1度目の結婚がモチーフになっており、ジェイミーは自身の名前ジェイムズから来ていると考えられる。

男女の5年間の恋愛模様を描いているが、男性は出会いから破局に向かって、女性は破局から出会いに向かって、逆の時間方向で物語が進む構成をとっており、唯一プロポーズ〜結婚式のシーンでのみ時系列が一致し、視線が一致する。

あらすじ

作家志望のジェイミーと舞台女優志望のキャシーは恋人同士であり、お互い夢に向かって突き進んでいた。

作家として成功していくジェイミー。

なかなか女優として芽が出ないキャシー。

5年間で2人の間に起きた出来事を描き出す。

キャスト

キャシー アナ・ケンドリック

ジェイミー ジェレミー・ジョーダン

感想

大好きな作品です。

残念ながら、まだ舞台版は見ていませんが、オリジナルキャストのCDを何度も何度も聴いています。

この作品は、ストーリーとしてはある恋人同士の出会いから別れまでを描いていますが、構成がとてもユニーク。

上記の通り、キャシーは別れ→出会い、ジェイミーは出会い→別れの順でお話が進んで行きます。

そのため、初見だと何がなんだかよくわからないかもしれませんが、何度も見ていくうちに、曲も耳に馴染み、作品の全貌を理解できるようになります。

作者のジェイソン・ロバート・ブラウン(以降JRB)の1回目の結婚をモチーフにしており、この作品に関して前の奥さんからクレームもあったとか。

うーん、ちょっと前の奥さんの気持ちがわかるなぁ、というのは、この作品はやはりジェイソン、つまり男性からの目線で描かれているのです。

そう感じるのは私が女だからなのかもしれませんが。

成功するジェイミーに対してキャシーは自分の存在価値がなくなっていくのを感じ、仕事で忙しいジェイミーにわがままを言う女のように描かれている気がして…なんだか可哀想。

あぁジェイミー、そこ女心を察して、と思う部分がありましたね…

たった2人の出演者がオフの小さな空間で、ユニークな構成と、JRBの秀逸な楽曲たち、5年間という妙にリアルなperiodがこの作品をエポックメイキングなものにしています。

キャストは、今乗っている若手お二方。

アナ・ケンドリックは言わずもがな、『ピッチ・パーフェクト』シリーズや『イントゥ・ザ・ウッド』などのミュージカル映画に引っ張りだこの女優さん。

ジェレミー・ジョーダンは、ブロードウェイ界隈では有名な若手有望株で、最近では『ニュージーズ』でトニーにノミネートされていましたね。

この2人のパフォーマンス、掛け合いが本当に素晴らしいのです!

ただ、ずっと聴いているCDは舞台のオリジナルキャストの方です。

アナの天まで突き抜けそうな声は最初はいいのですが、ずっと聴く分にはオリジナルキャストのBetsy Wolfeのソフトな声の方が私好み。

このBetsyですが、「Summer in Ohio」のシーンで友人のストリッパー役として出演しています。


'The Last 5 Years' Movie - Summer in Ohio (Anna Kendrick)

また、JRB自身も実はカメオ出演しているのです。

キャシーがオーディションで歌う時の伴奏ピアニストとしてひっそり登場。

初見の時、随分JRBに似ている人を選んだものだと思っていたのですが、のちにwikiを読んで本人だったと発覚。

しかも、歌詞の中で「嫌なピアニスト」とか言われているし笑。

JRBの曲は全て秀逸です。

よくこんな発想ができるなと思う楽曲「Schumel Song」とか、よくここまでキャラクターの気持ちをストレートに表現する楽曲を作れるなと思うもの「Climbing Uphill」「If I Didn't Believe in You」とか、書き切れませんが。

 

この作品は見終わると色々考えてしまうんですよね。

なぜこのような構成をとっているのかなとか、ジェイミーは出会い→別れ、キャシーは別れ→出会いなのかなとか。

JRBのインタビューを聞いてみると、ふとした思いつきみたいですが笑。

ここからは私の深読みですが、男性は出会い→別れの順で恋愛を回想し、最終的に別れのネガティブなイメージでその恋愛のイメージを捉え、女性は逆に別れ→出会いの順で恋愛を回想し、最終的に出会いのポジティブなイメージでその恋愛のイメージを捉えるのかな、とか。

色々な捉え方ができるから、国際的に上演が繰り返されているのでしょう。