『ラスト・ファイブ・イヤーズ』とは
同名のオフ・ブロードウェイミュージカルを映画化したもの。
元々のミュージカルは、シカゴでのレビューの後、2002年オフ・ブロードウェイ初演。
『パレード』や『ソングズ・フォー・ア・ニュー・ワールド』などを手がけたジェイソン・ロバート・ブラウンの作品。
彼自身の1度目の結婚がモチーフになっており、ジェイミーは自身の名前ジェイムズから来ていると考えられる。
男女の5年間の恋愛模様を描いているが、男性は出会いから破局に向かって、女性は破局から出会いに向かって、逆の時間方向で物語が進む構成をとっており、唯一プロポーズ〜結婚式のシーンでのみ時系列が一致し、視線が一致する。
あらすじ
作家志望のジェイミーと舞台女優志望のキャシーは恋人同士であり、お互い夢に向かって突き進んでいた。
作家として成功していくジェイミー。
なかなか女優として芽が出ないキャシー。
5年間で2人の間に起きた出来事を描き出す。
キャスト
キャシー アナ・ケンドリック
ジェイミー ジェレミー・ジョーダン
感想
大好きな作品です。
残念ながら、まだ舞台版は見ていませんが、オリジナルキャストのCDを何度も何度も聴いています。
この作品は、ストーリーとしてはある恋人同士の出会いから別れまでを描いていますが、構成がとてもユニーク。
上記の通り、キャシーは別れ→出会い、ジェイミーは出会い→別れの順でお話が進んで行きます。
そのため、初見だと何がなんだかよくわからないかもしれませんが、何度も見ていくうちに、曲も耳に馴染み、作品の全貌を理解できるようになります。
作者のジェイソン・ロバート・ブラウン(以降JRB)の1回目の結婚をモチーフにしており、この作品に関して前の奥さんからクレームもあったとか。
うーん、ちょっと前の奥さんの気持ちがわかるなぁ、というのは、この作品はやはりジェイソン、つまり男性からの目線で描かれているのです。
そう感じるのは私が女だからなのかもしれませんが。
成功するジェイミーに対してキャシーは自分の存在価値がなくなっていくのを感じ、仕事で忙しいジェイミーにわがままを言う女のように描かれている気がして…なんだか可哀想。
あぁジェイミー、そこ女心を察して、と思う部分がありましたね…
たった2人の出演者がオフの小さな空間で、ユニークな構成と、JRBの秀逸な楽曲たち、5年間という妙にリアルなperiodがこの作品をエポックメイキングなものにしています。
キャストは、今乗っている若手お二方。
アナ・ケンドリックは言わずもがな、『ピッチ・パーフェクト』シリーズや『イントゥ・ザ・ウッド』などのミュージカル映画に引っ張りだこの女優さん。
ジェレミー・ジョーダンは、ブロードウェイ界隈では有名な若手有望株で、最近では『ニュージーズ』でトニーにノミネートされていましたね。
この2人のパフォーマンス、掛け合いが本当に素晴らしいのです!
ただ、ずっと聴いているCDは舞台のオリジナルキャストの方です。
アナの天まで突き抜けそうな声は最初はいいのですが、ずっと聴く分にはオリジナルキャストのBetsy Wolfeのソフトな声の方が私好み。
このBetsyですが、「Summer in Ohio」のシーンで友人のストリッパー役として出演しています。
'The Last 5 Years' Movie - Summer in Ohio (Anna Kendrick)
また、JRB自身も実はカメオ出演しているのです。
キャシーがオーディションで歌う時の伴奏ピアニストとしてひっそり登場。
初見の時、随分JRBに似ている人を選んだものだと思っていたのですが、のちにwikiを読んで本人だったと発覚。
しかも、歌詞の中で「嫌なピアニスト」とか言われているし笑。
JRBの曲は全て秀逸です。
よくこんな発想ができるなと思う楽曲「Schumel Song」とか、よくここまでキャラクターの気持ちをストレートに表現する楽曲を作れるなと思うもの「Climbing Uphill」「If I Didn't Believe in You」とか、書き切れませんが。
この作品は見終わると色々考えてしまうんですよね。
なぜこのような構成をとっているのかなとか、ジェイミーは出会い→別れ、キャシーは別れ→出会いなのかなとか。
JRBのインタビューを聞いてみると、ふとした思いつきみたいですが笑。
ここからは私の深読みですが、男性は出会い→別れの順で恋愛を回想し、最終的に別れのネガティブなイメージでその恋愛のイメージを捉え、女性は逆に別れ→出会いの順で恋愛を回想し、最終的に出会いのポジティブなイメージでその恋愛のイメージを捉えるのかな、とか。
色々な捉え方ができるから、国際的に上演が繰り返されているのでしょう。