ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『アリージャンス- 忠誠 -』Allegiance ジャパンプレミア上映会 2017.11.11 ma

今日は、『アリージャンス- 忠誠 -』のジャパンプレミア上映会に行ってきました。

日本では馴染みが薄いかもしれませんが、『スター・トレック』などでおなじみの日系俳優であるジョージ・タケイさんのお話も、liveで伺ってきました。

https://www.atpress.ne.jp/releases/136988/LL_img_136988_1.jpg

『アリージャンス- 忠誠 -』とは

2012年にサンディエゴで初演、2015年10月から約5ヶ月間、ブロードウェイで上演されたミュージカル。

自身が日系3世であり、日系俳優であるジョージ・タケイの実体験が基に制作されている。

ミス・サイゴン』や『フラワー・ドラム・ソング』とは違い、アジア人の視点から作られた、アジア人が出演する稀少なブロードウェイ・ミュージカルである。

あらすじ

第二次世界大戦の勃発と共に物語の主人公のキムラ一家の様な日系人は「敵性外国人」と見なされ、ルーズベルト大統領による大統領令によって強制収容所に送られてしまう。強制収容所での厳しい暮らしの中でも”GAMAN”の精神で希望を失わず日々を耐えていた彼らにある日、忠誠心調査書(Loyalty Questionnaire)が配られアメリカへの忠誠を問われる、この忠誠書に対する考え方を巡って対立する家族、そして日系人コミュニティはそれぞれの道で自由を求めて戦いを始めるー

キャスト

サム・キムラ(現代)/おじいちゃん(1940年代) ジョージ・タケイ

ケイ・キムラ レア・サロンガ

サム・キムラ(1940年代) テリー・リヨン

フランキー・スズキ マイケル・K・リー

タツオ・キムラ クリストファラン・ノムラ

ハンナ・キャンベル ケイティ・ローズ・クラーク

マイク正岡 グレッグ・ワタナベ

感想

今回は、ブロードウェイの舞台を録画したものが、休憩なしで放映され、その後で30分程度、主演のジョージ・タケイ、制作に携わったロレンゾ・シオン、次回のLAでの公演で主演を務めるエレナ・ワンのお三方のお話を伺うというスタイルでした。

 

ショー自体は、去年ブロードウェイで上演されている時から知っていて、本当に観に行きたかったのですが、仕事の都合などで断念した経緯があり、今回の好機を本当に楽しみにしていました。

戦時中の日系人の収容所行きの事実は歴史の授業で習っており、理解しているつもりでしたが、ある家族の目線からミュージカルとして描かれると非常に身に迫るものがありました。

 

まず、キャストの皆さんについて。

ジョージ・タケイさんについては、スター・トレックというより、スター・トレックを愛する主人公が登場するビッグバンセオリーというアメリカのドラマで何度かお見かけして存じ上げていました。

レア・サロンガさんは言うまでもないですが、ミス・サイゴントニー賞、ディズニールネサンスの一つであるアラジンのジャスミン、それにムーランでタイトルロール、レミゼでアジア人初のエポなど、もはやレジェンドです。

テリーさんについては、実はFB上で友達の友達ww意外と世間って狭い!?ブロードウェイのアラジンのタイトルロールにも最近抜擢された、乗りに乗っている若手舞台俳優さんです。

そして、今回一目惚れしてしまったのが、フランキーのマイケル・K・リーさん。コリアン・アメリカンの方なのですが、文字どおり韓流スターのような風貌と完璧なパフォーマンスで、心をさらわれました。かっこよすぎます!!

↓フランキーが自らの現状を皮肉って歌い踊るキラーチューン


First Look at "Paradise" from the New Broadway Musical ALLEGIANCE

 

↓ケイが弟への愛を歌った一曲…サロンガの声域に合っている感動的な音楽


Lea Salonga Sings "Higher" from the New Broadway Musical ALLEGIANCE

 

演出や舞台全体の印象ですが、所々に日本を感じさせるものが程よく配置されていました。

歌にも出てくる「GAMAN」我慢という言葉。

厳しい収容所での生活、尊厳を踏みにじられるような出来事、そういったものに耐えるのだと皆を諭す時に何度も使われました。

また、questionnaireの紙を、折り紙にして花を作って孫にあげるおじいちゃん。

竹で作った風鈴のようなものを日本的な飾り物。

英語がままならない日本から移り住んだ祖父世代と、アメリカで生まれ育った孫世代の違いがはっきりと描かれていました。

父と子ども、祖父と孫、姉と弟など、時代の荒波に揉まれながら起こる家族の絆の変化がドラマの主軸です。

それぞれの信念を守りながら、自分の信念に忠実に生きた結果、家族は分断されてしまうのでしょうか。

音楽、ドラマ、ダンス、全て期待以上だったので、ミュージカル観劇としては大満足です。

遠路はるばる、わざわざ日本までお越しくださって、本当にありがとうございました。

でも、そこまでしてこのミュージカルを世界中に、そして後世に残したいというジョージ・タケイの熱い気持ちが、liveではなく映像ではありましたが、ひしひしと伝わってくる作品でした。

もちろん、当時のアメリカの立場、日本の立場、そして広島や長崎で被爆された方の立場、置かれた環境は様々で、言い分もそれぞれあるのは承知の上です。

でも、今一度、日系人の受けたショッキングな出来事を知る努力をしてみてもいいのではないかと思うのです。

この作品は、必ずその助けになってくれるはずです。

日本に住んでいると、移民という存在は非常に疎くなってしまいがちですが、ネットをひらけば世界各地で移民による様々な問題が燻っています。

この戦争という特殊な環境がもたらした日系人の強制収容に類似することは、現代でも起きうることだと、日々のニュースをみて思います。

そのためにも、この作品は上演され続ける価値があると思いました。

 

さて、インタビューについて書くのを忘れてしまいました。

プロデュースに携わったシオンさん。

最初この暗いテーマの作品をミュージカルにすることには、周囲が驚いたそうですが、どんな不当な境遇に置かれても家族に対する愛を持ち続けるということをconceptとして大切にしながら制作を続けられたそうです。

続いて、ジョージ・タケイさん。

なんと日本語でご挨拶。

幼い頃、土曜日に日本語学校に嫌々ながら通われたので少しはお話されるそうです。

途中まで流暢な日本でお話しされました。

この作品はご両親に捧げたいとまずおっしゃっていました。

事業や家、銀行口座まで奪われたご両親は、苦難に耐えながら、ワイオミングで過ごされました。

半年くらい経ってから、戦地での人員不足のため日系人収容所から若者を戦地へ送ることとなり、アメリカへの忠誠心を試すquestionnareが設けられました。

忠誠を誓った若者たちはサミーのようにヨーロッパの激戦地に送られました。

忠誠を誓わなかったものはさらに環境の良くない収容所に送られました。

このように日系人は大きく2つのグループに分断され、作品にあるように家族が離れ離れになってしまうこともあったとのこと。

これはアメリカの歴史上、恥ずべき部分だ、とタケイさんはおっしゃってしました。

 

この作品、2018年2月にロサンゼルスで上演予定だそうです。

LAに行かれる予定の方はぜひチェックしてみてくださいね。

 

最後に、サンディエゴ公演後、ブロードウェイに行く前に削除されてしまった楽曲で、素晴らしい楽曲を見つけたので載せておきたいと思います。

↓ケイとフランキーによる「The Mountain's Heart」は「This is Not Over」に変えられましたが、この曲はこの曲で素晴らしい!


ALLEGIANCE Musical - The Mountain's Heart (LEA SALONGA & MICHAEL K. LEE)