『百鬼オペラ羅生門』とは
イスラエル出身の演出家、振付家であるアブシャロム・ポラック、インバル・ピントによるホリプロの、芥川龍之介の同名小説を基にした音楽劇。
あらすじ
永遠にも似た時間、音楽隊が旅を続けている。雨が降り出すと、百鬼たちが現れる。そのうち雨は嵐となり、百鬼たちが乱舞する。彼らが見つめるのはあらゆる生き物、特に人間。短い時をせわしなく生き、死ぬ、無様で愚かな人間たち。
嵐の中、羅生門にやってきた下人は女のしたいの髪の毛を抜く老婆に出会う。殺そうとした老婆に逃げられ、取り残された下人の前で、やがて死んだ女が目を開き、むくりと起き上がった。「変わらないね」下人は女の記憶を探す旅に出る。
旅の途中、下人は様々な人々と出会う。鼻に劣等感を抱く内供とその小姓。3人の旅人たちが語る真砂と夫の武弘、盗賊の多嚢丸が関わる殺人事件。
下人はついに悪夢にも飲み込まれていく。
巡り合いを重ね、もつれ合う無数の糸。その交点に火花が散る。やがて下人は女を思い出す。その激しくも鮮やかな生き様を。女の記憶を取り戻した下人は、再び雨の中にいる。そして羅生門に戻っていく。
キャスト
下人/多嚢丸 柄本佑
女/真砂 満島ひかり
主人/武弘 吉沢亮
百鬼/内供/旅人(木こり) 田口浩正
百鬼/小姓/旅人(放免) 小松和重
老婆/旅人(巫女)/母 銀粉蝶
感想
不思議な世界観でした。
前回、日本でアブシャロム・ポラック*1とインバル・ピント*2が演出を務めた公演、ミュージカル『100万回生きたねこ』は見逃してしまったので、今回とっても楽しみに劇場に向かいました。
芥川龍之介は高校時代夢中で読んだきりで、最近はすっかりご無沙汰でしたが、シアターコクーンへの道すがら、はるかなる記憶を呼び起こしていました。
実は、何気に初シアターコクーンで、ちょっとそわそわ。
中2階からの観劇でしたが、想像以上に舞台に近かったです。
舞台自体は、最初にも書いた通り、不思議な世界でした。
満島ひかりら役者陣の幻想的なフライングシーン。
この舞台のために演出家たちが創作した独自性の強いかわいい妖怪たち。
個性的な衣装を身につけた独特な楽器演奏。
コンテンポラリーダンスを中心とした舞踊シーン。
それら全てがこの不思議な空間をつくっていました。
かわいい妖怪たちというのは、文字ではなんとも表現しづらいのですが、お花の妖怪とか・・・とにかく百鬼と言うだけあってたくさん色々な妖怪たちが登場します。
日本昔話に登場しそうな、よく見ると足がない妖怪もいれば、やはり海外の方でないとこういうデザインは出てこないなという妖怪もおり、多種多様。
こう見ていると、よくこんなデザイン思いつくなぁというものが多いですが、お花の妖怪でディズニーの『ファンタジア』のくるみ割り人形の葦笛の踊りを思い出しました。
ミュージカル的要素の主軸である歌ですが、所々出てきますが、うーん、オペラと名前をつけるのは如何なもの?という程度のもので、あらかたセリフで進行していきます。
残念ながら、特に印象に残っている歌はありません。
おそらく、原作を読んでいない、あるいはほぼ記憶にない方がこれをご覧になっても、非常にテーマを捉えづらく、難解なお芝居をみた、という感想で終わってしまうのではないかと思います。
というか、原作を熟知していても、この作品はまた羅生門とは別のものと捉えた方が、世界に入りやすかったのかもしれません。
*1:Avshalom Pollak 1970年イスラエルに生まれる。俳優として正式な訓練を受け、数多くのテレビ、映画、演劇作品に出演。俳優業以外では、CMの制作チームに関わった他、CGデザイナーやプロの料理人の仕事も経験している。1993年にピントとダンスカンパニーを創設し、数々のオリジナル作品を発表。舞踏団以外でもオペラ、ミュージカルの演出とデザインを手がける。
*2:Inbal Pinto 1969年イスラエルに生まれる。15歳でダンスを始め、エルサレムのベザレル・アカデミーでグラフィック・アートを学ぶ。ダンサーとしてバットシェバ舞踏団に在籍。1990年から振付師の活動を開始した。2000年『Wrapped』でニューヨークのベッシー賞を受賞した。2007年イスラエル文化賞、テルアビブ市賞を受賞。