『ウィズ』とは
1978年公開のアメリカのミュージカル映画。
児童文学『オズの魔法使い』を基に、キャストがアフリカ系アメリカ人により構成された、1974年ブロードウェイ初演の同名ミュージカルを映画化したもの。
この映画でも、全てのキャストがアフリカ系アメリカ人で構成されている。
マイケル・ジャクソンにとって、唯一のドラマ映画主演作である。
あらすじ
ハーレムのアパートに住む24歳のドロシーは叔母エムと叔父ヘンリーと住んでいる。
吹雪になった感謝祭、ディナーを囲みながら、叔母たちに一人暮らしに踏み切れないことをドロシーはからかわれた。
トトを追いかけて吹雪の中に飛び出したドロシーは竜巻に巻き込まれてしまう。
気づくとドロシーはオズの王国に紛れ込み、東の悪い魔女エバーミーンを踏みつけて殺していたのだった。
果たして、ドロシーは元の世界に戻れるのか・・・
キャスト
ドロシー ダイアナ・ロス
カカシ マイケル・ジャクソン
グリンダ・南の良い魔女 レナ・ホーン
臆病ライオン テッド・ロス
ブリキ人間 ニプシー・ラッセル
ミス・ワン・北の良い魔女 テルマ・カーペンター
叔母エム テレサ・メリット
叔父スタンリー スタンリー・グリーン
アビレーン・西の悪い魔女 メイベル・キング
感想
意外や意外、マイケル・ジャクソン唯一のドラマ映画主演作です。
もっと主演張ってるイメージだったのですが。
この映画ではマイケル・ジャクソンがカカシをチャーミングに演じております。
カカシの衣装を身につけていて、一見すると誰だかさっぱりわかりませんが、下に載せた「Ease On Down the Road」の手足の動きやターンの切れを見れば、これはマイケル以外に考えられないと即座に思われるでしょう。
マイケルはミュージカル映画の黄金期を築いたフレッド・アステアに憧れてダンスを始めたといいます。
このミュージカル映画への出演にあたって、きっと色々な思いがあったのではないかと勝手に推測しました。
The Wiz (3/8) Movie CLIP - Ease on Down the Road (1978) HD
さて、この映画はオールアフリカンアメリカンのキャストということで特徴的ですが、これはracismに陥っているということではなく、やはりアフリカンアメリカンの力強い歌声を要するソウルフルな楽曲の多い本作に適した選択だったのではないかと思います。
今、オリジナルキャストレコーディングを見直してみると、やはり歌唱力を要求される楽曲ばかりです。
その中でも、ブロードウェイミュージカル史上、歌うのが最も難しい曲、として有名なのが、「Home」です。
これは、この旅の終わりに、今までの冒険とこれからの決意を胸にドロシーが独唱する一曲です。
この曲は、ブロードウェイの大女優たちがこぞって歌いたがる名ナンバーで、これまでも様々な女優、歌手がカバーしてきました。
この映画ではドロシー役のダイアナ・ロスが歌っており、これもこれで悪くはないのですが、やはり歌と映像が別撮りなので、なんとなくミスマッチ・・・
やはり同時撮りしないと、特に泣きながら歌うシーンでは、息遣いや呼吸がうまく合わず、残念な結果になってしまいますね。
そんな中、私が今まで聴いた「Home」の中で指折りに入るのが、ポップ歌手のジャズミン・サリヴァンによる11歳の時のパフォーマンスです。
11歳とは思えないパワフルな歌声に会場はスタンディングオベーションとなりました。
思うに、これは小学校の学芸会?もしくは市民ミュージカルのような舞台?
何れにしても、アメリカの小学生すげぇ!!と絶叫してしまったのでした。
JAZMINE SULLIVAN SINGS "HOME" @ AGE 11 IN THE WIZ
話が映画本編からだいぶ脱線してしまいました。
上記の通り、ほとんどあらすじは1939年の『オズの魔法使』と同じですが、舞台がカンザスではなくニューヨークのハーレムである点、ドロシーが少女ではなく24歳の女性である点など、いくつか相違点があります。
また、30年代の映画ではドロシーが「There's no place like home!(家ほど素敵な場所はこの世にないわ!)」と言って幕を閉じますが、本編は主人公がすでに24歳であるため、故郷の素晴らしさを再認識するとともに、これからの人生を歩んでいく決意を強く持っているという点が大きく異なると思いました。
『オズの魔法使』という児童文学は、日本でもまずまず人気がありますが、アメリカ国内での影響力は非常に強く、ジュディ・ガーランド主演の映画、本作をはじめ、様々な芸術作品に昇華されています。
今一番ブロードウェイでヒットしているミュージカルの一つ、『ウィキッド』もその一つですね。
これは、『オズの魔法使い』の裏側の世界、良い魔女グリンダと悪い魔女エルファバの友情を描いた作品ですが、このお話は別の機会に。