『ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ』とは
2001年公開のミュージカル映画。
1997年オフブロードウェイで初演された同名ミュージカルを映画化したもの。
俳優のジョン・キャメロン・ミッチェルと作曲家のスティーヴン・トラスクは飛行機で偶然隣の席になり、その道中に意気投合し、共同制作することになったという。
ニューヨークのナイトクラブにヘドウィグを登場させ、そこからキャラクター像を練り上げていった。
舞台版では、ジョン・キャメロン・ミッチェルがヘドウィグとトミーを一人二役でしていたが、映画版では新人俳優をトミー役とし、自身はヘドウィグを演じた。
なお、舞台版は世界中で演じられており、ヘドウィグ役は女優が演じるケースもあり、ジェンダーフリーの役となっている。
あらすじ
全米各地を旅するロック歌手のヘドウィグは、共産主義体制下の東ドイツで生まれた。アメリカ軍人ルーサーに出会い恋に落ちるまで、ヘドウィグはハンセルという名の男性だった。母親はルーサーと結婚しアメリカに渡れるよう、彼に自分の名前とパスポートを与え、性別適合手術を受けさせた。だが手術は失敗し、股間には「怒りの1インチ(アングリー・インチ)」が残された。2人はアメリカへ渡ったのだが、ルーサーは最初の結婚記念日の日ヘドウィグのもとを去っていってしまう。それはベルリンの壁崩壊の日だった。絶望に暮れるヘドウィグは、昔抱いたロック歌手になる夢を思い起こし、韓国軍兵の妻たちを引連れバンドを結成する。アルバイトをしながら身を繋いでいたある日、同じくロックスターに憧れる17歳の少年トミーと出会う。ヘドウィグは彼を誰よりも愛しロックの全てを注ぎ込んだが、とうとう手術痕がばれて別れてしまう。彼は作った曲をすべて盗んだ挙句ヒットを飛ばし、いまや人気絶頂のロックスターに登りつめていた。ヘドウィグは自分のバンド「アングリー・インチ」を引きつれトミーの全米コンサートを追いかけながら巡業し、愛を捜し求めていく。
キャスト
ヘドウィグ ジョン・キャメロン・ミッチェル
イツハク ミリアム・ショア
トミー マイケル・ピット
スキシプ スティーヴン・トラスク
フィリス アンドレア・マーティン
感想
この映画は、大好きで何度も繰り返し見ている作品であり、今でも見るたびに、涙してしまいます。
「なんで私は愛されないの?誰かに必要とされたい」
愛に苦悩するヘドウィグが可愛くて、切なくて、苦しくなります。
ジョン・キャメロン・ミッチェルはもともと美形の方ですが、驚くほどこの役にハマっていて、メイクしてウィッグをつけられると本当にお綺麗です。
楽曲も素晴らしく、サウンドトラックはロックアルバムとしても十分聴くことができる一枚になっています。
私がこの映画のDVDを貸した友達は全員、サントラを後日購入していました。
プラトンの『饗宴』に影響を受けた「Origin of Love」、他にも「Tear Me Down」「Sugar Daddy」「Wicked Little Town」「Wig In a Box」「Midnight Radio」など、歌詞が深く、印象に残る曲ばかりです。
この辺りは、語り出すとキリがなくなってしまうのですが。
制作していた当時は、作曲家のスティーヴン・トラスクとジョンは恋人同士であったそうですが、恋愛関係にあった2人が書いたと考えながら歌詞を読むと、なんだかドキドキしてしまいます。
さて、ヘドウィグは「Origin of Love」で描かれていたような自分の片割れを探して旅を続けます。
ヘドウィグの太腿には2つの半円が合わさって1つの円になるタトゥーが入っています。
この旅の終わりに、このタトゥーがどのように変化するのか、ぜひ注目して見てください。
ヘドウィグは愛を何に見出すのでしょうか。
このお話は、表面上はトミーを訴える裁判のための準備の旅ですが、実際はヘドウィグの精神的な成長の旅だと思います。
道中、恋人のイツハクに当たり散らしたり、ちょっと幼すぎるんじゃない?と思ってしまうような感情に任せた行動が目立つヘドウィグ。
最後、愛の片割れを自分の中に見出した時、初めて彼女の人生が始まったのだと感じました。
この作品とは全く関係ないですが、Whitney Houstonの「Greatest Love of All」の歌詞の意味を初めて知った時と同じ感動がありました。
性同一性障害を持って生まれた彼女だからこそ、「Origin of Love」のような曲を作り出し、苦しみながらも愛についてここまで深く考え抜けたのでしょう。
私はストレートですが、このDVDを見るたびに、彼女と一緒に愛をめぐる旅をし、自分の中の愛の定義を見つめ直すのです。
Sugar Daddy - Hedwig & the Angry Inch