ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『ブロードウェイ 夢と戦いの日々』 高良結香・著 (ランダム講談社)

ブロードウェイに止まらない、高良さんの自伝的エッセイ



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今日は、現在公開中の映画『ブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢』に出演している、唯一の日本人、高良結香さん著の、『ブロードウェイ 夢と戦いの日々』の読書感想を書こうと思います。

まず、高良結香さんについて。
以前にも、記事に書いたことがありますが、この本のプロフィール欄に載っていた文章より…

高良結香 Yuka Takara
沖縄生まれ。
ニューヨーク、ブロードウェイにてミュージカル『マンマ・ミーア』『フラワー・ドラム・ソング』『太平洋序曲』などに出演。
2006年、16年ぶりにブロードウェイで再演された『コーラスライン』にコニ―・ウォン役で出演。
その後、『RENT』『The Yellow Wood』に出演。
2008年には2枚目のソロアルバム『free to fly』を発表。

という方です!
より詳細については、
高良結香さんの公式HP:http://www.harvest-f.com/takara/






この本を知ったきっかけは、高良結香さんのブログでした。
「ブロードウェイの日常生活についてのエッセイなのかなぁ・・・」と思って購入してみたところ、読んだ印象としては、高良さん自身の生まれてから今日までの軌跡を書いた自伝といった感じでした。
だから、本の冒頭は、高良家の家族構成や幼い頃の思い出、であり、この本の末尾は、ごく最近の『RENT』や『The Yellow Wood』で結ばれています。
確かに、ブロードウェイのオーディションでのかけひき諸々の役者人生も描かれてはいますが、それだけに止まらず、歌手として、ダンサーとして、アクターとしての、高良さんの様子をも知ることができました。


第一章では、インターナショナルスクールでの生活や、バレエとの出会い、大学入学と、その後の進路の転向とニューヨークへの船出について。
小さい頃に習っていたお稽古ごとが、私のそれとほぼ一緒だったせいもあり、強い共感を持って読み進めました。
多感な時期を、インターナショナルスクールという、言うなれば、少し特異な環境にいたことで、周囲からの疎外感を感じたりだとか、ショッキングな出来事を体験したり、といったことが、まさに心から吐き出されていました。


第二章では、いよいよオーディションへ。
しかし、当初は、全くミュージカルは眼中に無かった、というよりもミュージカル・アレルギーだったというのには驚きました。
オーディションを受け続ける日々の中でぶつかった困難も、さまざまな工夫で乗り越えていて、本当にパワフル!!という印象を受けました。
ミュージカルに興味なし、といえども、根っからのRENTHEADSで、『RENT』だけは、抽選による安いチケットで何回も通って、勇気をもらっていたそうです。
この章では、ブロードウェイで根強いユニオン(組合)についても書かれていて、とても興味深いです。
また、人種差別的な扱いを受けたことも、赤裸々に語られていて、私自身もかなりショックを受けました。


第三章は、『マンマ・ミーア』のブロードウェイ初演にアンサンブルで出演する場面から。
どんなショーでも、初演に出演するのは、やっぱり特別なこと。
オリジナル・キャストとして、CDの録音に参加できたり、何より、トニー賞授賞式でパフォーマンスできるから。
アンサンブルだとしても、ロングランショーの『マンマ・ミーア』のオリジナルキャストだということは、本当にすごいことだと、改めて思いました。
しかし、激しい舞台にはつきものの、怪我。
これが、想像を絶するような痛みを伴うであろう怪我なんです!
読んでいて、自分の体に痛みが再現されるような、壮絶な怪我。
そこから、再起を果たして、次のショーへ。
この場面には、勇気づけられました。
その後、別のショーでレア・サロンガっていう、超有名なアジア系女優(Miss Saigonの初演のキム役や、アジア人で初めてLes Miserablesのエポニーヌ役を務めたトニー賞女優)の代わりに、主演したりと。。。
本当に、凄すぎです(*_*)



【全体を通して】
ブロードウェイやミュージカルに興味のある人は、絶対読んでおもしろいと思います。
また、そもそもダンサーさんであり、歌手さんなので、ミュージカルだけでなく、パフォーミング・アート全体に興味がある人にとっても、良い一冊になると思います。
もっと言えば、夢に向かって頑張っている人たち全てにとっての応援歌にもなると思います。
この本を読んでいる間は、まさに高良さんとともに、悩んだり涙したり喜んだり…一喜一憂をともにします。
それは、心から素直に、正直に書かれているからだと思います。

一番印象に残っている言葉は、「心から愛していることを一生続けていけるということは、とても幸せなこと」ということ。
本のなかでの高良さんは一貫して、ポジティブでパワフルで常に笑顔、という印象を受けました。
前述したように、過酷な練習で怪我を負っても、また再起できるということは、彼女は本当にアートを愛しているんだ!ということですよね。
このことは、『コーラスライン』の『What I Did For Love』にも通じることでした。
自分の愛することを仕事にしている高良さんは、とても人間らしくて、輝いて見えました。
私も、自分に素直に生きられたら…と、改めて強く思い直すきっかけとなりました。
毎日につらくなったら、また再度、この本を読みなおしてみようと思います。



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