ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

「Meadowlark」(from "The Baker's Wife")を和訳してみた。

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「Meadowlark」は、ミュージカル『The Baker's Wife』に登場するミュージカルナンバーです。

『The Baker's Wife』は1938年のフランスの同名映画を基にしたミュージカル。

1976年にアメリカ国内でツアーがあり、1989年にウェストエンドで初演されましたが、ブロードウェイでの上演は叶っていません。

それでも、今なおアメリカのミュージカルファンに根強い人気のある作品です。

作詞・作曲は『Wicked』や『Godspell』を手がけたステファン・シュワルツによるもので、非常にメロディアスで美しい旋律を楽しめます。

実際に上演されているのを観たわけではないのですが、キャストレコーディングを聴いた限りでは曲の長さが長めで、sung-throughに近いのかなと感じました。

日本では馴染みも薄い作品かと思いますが、いつか日本人キャストで上演してもらいたいと密かに願っている作品の一つです。

あらすじですが、パン屋がとても若く美しい妻と結婚し、幸せに暮らしていたが、その妻が若い男性と駆け落ちしてしまうというもの。

最愛の妻を失ったパン屋は泣き暮らし、パンを作る気力が失せてしまい、パンを食べられなくなってしまった町の人々も総力を挙げて妻を探し、遂には見つけますが、パン屋は謝ろうとする妻を制し、何事もなかったかのように再び妻を愛したというお話。(かいつまんでいます。)

この「Meadowlark」という曲はパン屋の妻ジュヌヴィエーヴがドミニクという若い男性と駆け落ちする前に、幼い頃聴いたおとぎ話になぞらえて自分の状況を歌ったナンバー。

童話のファンタジックな世界が目に浮かぶような写実的な歌詞と、空を飛んでいるようなメロディーで、抑えられない高揚感が表現されています。

通常の速度で歌うと5〜6分かかる大曲です。

まず、紹介するのが1977年に制作されたキャストアルバムから、Patti LuPoneによる歌唱です。

この曲は、彼女自身のアルバムでも度々登場します。

▼Patti LuPoneによるもの。


Meadowlark - The Baker's Wife - Audio-Only - Patti LuPone

続いて、Lidsay Mendez

最近だと『回転木馬』でトニー賞を受賞したことが記憶に新しいかなと思います。

『Wicked』でエルファバも演じ、『Godspell』のブロードウェイ再演にも出演していました。

▼Lindsay Mendezによるもの。


Lindsay Mendez - "Meadowlark"

続いて、『Mean Girls』のCady役でオリジナルブロードウェイキャストとして出演するErika Henningsen。

彼女は20代とは思えない落ち着いた雰囲気が魅力で、これからますます楽しみな女優さんのひとりです。

Erika Henningsenによるもの。(5:07〜始まります)


Erika Henningsen Performs Three Musical Dream Roles For Her Broadway Bucket List

 

「Meadowlark」

When I was a girl, I had a favorite story

Of the meadowlark who lived where the rivers wind

Her voice could match the angels in its glory

But she was blind, the lark was blind

私が子どもの頃 好きだったお話があるの

あるマキバドリが曲がりくねった川の近くに住んでいた

その歌声は光を放つ天使を思わせた

でも彼女は盲目だったの

 

An old king came and took her to his palace

Where the walls were burnished bronze and golden braid

And he fed her fruit and nuts from an ivory chalice and he prayed

年老いた王がやってきて

輝く銅や金の飾りひもが飾られた王宮に彼女を連れ帰った

彼は彼女に象牙の杯にのせた果物やナッツを与え 祈った

 

"Sing for me, my meadowlark

Sing for me of the silver morning

Set me free, my meadowlark

And I'll buy you a priceless jewel

And cloth of brocade and crewel

And I'll love you for life if you will, sing for me"

私のために歌っておくれ 私のマキバドリ

銀色に輝く朝について歌っておくれ

私を解き放って 私のマキバドリ

そうしたらどんな高価な宝石でも

金の錦や毛糸でも買ってあげよう

そして君のことを生涯愛そう 歌っておくれ

 

Then one day as the lark sang by the water

The god of the sun heard her in his flight

And her singing moved him so, he came and brought her

The gift of sight, he gave her sight

ある日 マキバドリが水辺で歌っていると

彼女の歌が 空を駆ける太陽の神の耳に入った

神は彼女の歌にとても感動し

マキバドリに視力を与えた

 

And she opened her eyes to the shimmer and the splendor

Of this beautiful young god, so proud and strong

And he called to the lark in a voice both rough and tender

彼女が目を開くと

この美しく若い神が輝きを放っていた

自信に満ち溢れ強そうな神は 彼女に激しくそして優しく呼びかけた

 

"Come along fly with me, my meadowlark

Fly with me on the silver morning

Past the sea where the dolphins bark

We will dance on the coral beaches

Make a feast of the plums and peaches

Just as far as your vision reaches, fly with me"

一緒に飛んで行こう 私のマキバドリ

銀色の朝を一緒に飛んで行こう

イルカが飛び跳ねる海を眼下に眺め

海岸で踊ろう

プラムや桃でご馳走をつくり

世界の果てまで  ともに飛んで行こう

 

But the meadowlark said no for the old king loved her so

She couldn't bear to wound his pride

So the sun god flew away and when the king came down that day

He found his meadowlark had died, every time I heard that part I cried

でもマキバドリはその誘いを断ったの 王が彼女をとても愛していたから

彼女は王のプライドを傷つけるのが耐えられなかった

その太陽の神が飛び去り 王がやってきた時には

マキバドリはすでに死んでいた 私はその部分を聞くといつも泣いたわ

 

And now I stand here, starry-eyed and stormy

Oh, just when I thought my heart was finally numb

A beautiful young man appears before me

Singing, "Come, oh won't you come?"

そして今私はここに立ち 目を輝かせて気持ちが揺れている

ああ 心がついに麻痺したかと思った時

美しく若い男性が私の前に現れて

歌ったの 「行こう さあ一緒に行かないかい?」と

 

And what can I do if finally for the first time

The one I'm burning for returns the glow

If love has come at last it's picked the worst time

Still I know I've got to go

私に何ができるだろう

とうとうたまらなく欲しいと思える人が初めて現れて

恋がついに訪れたのに 最悪のタイミング

それでも私は行かなくちゃと思っている 

 

Fly away, meadowlark

Fly away in the silver morning

If I stay, I'll grow to curse the dark

So, it's off where the days won't bind me

I know, I leave wounds behind me

But I won't let tomorrow find me back this way

飛び立とう マキバドリよ

銀色の朝を越えて

もしここにずっといたら 暗闇を呪ってしまうだろう

だから時間にしばられない場所に旅立とう

傷を残していくことはわかっているわ

それでも明日ここにいることはないの

 

Before my past once again can blind me, fly away

And we won't wait to say goodbye

My beautiful young man and I

過去で視界が再び曇る前に 飛び立とう

もうすぐ別れを告げるわ

美しく若い彼と私と一緒に

 

 ▼Patti Luponeによるもの。

Meadowlark (Remastered)

Meadowlark (Remastered)

  • provided courtesy of iTunes

 

 ▼サラ・ブライトマンによるもの。

Meadowlark

Meadowlark

  • provided courtesy of iTunes

 

 ▼アニメ映画『アナスタシア』で歌を担当したリズ・キャラウェイもこの曲を歌っています。

 

『Betrayal』2019.9.25.14:00 @Bernard B. Jacobs Theatre

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『Betrayal』とは

1978年にロンドンのNational Theatreで初演された、ハロルド・ピンター作のプレイ。

邦題は『背信』。

ハロルド・ピンターはイギリスのテレビ司会者Joan Bakewellの7年にわたる不倫騒動から着想を得た。

ブロードウェイでは、これまで4回上演されている。

今回のJamie Lloyd演出のプロダクションは、ロンドンのHarold Pinter Theatreで上演後、ブロードウェイにトランスファーしたもの。

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あらすじ

ジェリーはロバートと無二の親友同士である。

しかし、ジェリーにはジュディスという妻がいるにも関わらず、ロバートの妻であるエマと不倫をする。

1977年から1968年へ、逆の時系列でその真相が描かれる。

 

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キャスト

Robert    Tom Hiddleston

Emma    Zawe Ashton

Jerry    Charlie Cox

Waiter    Eddie Arnold

 

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感想

『Sea Wall / A Life』に続き、ロンドンからトランスファーした作品を、最前列で観劇しました。

ハロルド・ピンターのことも、トム・ヒドルストンのことも、この作品を観て初めて知りました。

▼trailerです。 


BETRAYAL BROADWAY TRAILER

▼観劇後の感想です。

▼3人へのインタビュー


BETRAYAL Stars Tom Hiddleston, Zawe Ashton and Charlie Cox Relish Their Love Triangle

最初にプロットを読んだ時、未熟な私には理解できないお話かなと不安でしたが、実際に観始めると知らぬ間に引き込まれていました。

緊迫した空気や遠くで鳴るサイレン音が、危うい三角関係を仄めかしていました。

子どもちゃんが登場すると、もう胸が締め付けられてたまらなかったです。

初めてトム・ヒドルストンを目の当たりにしたのですが、不倫の事実になんとなく気づいてしまう演技が秀逸で、とにかく目が美しかったことを記憶しています。

ライトブルーの目にうっすら涙を浮かべながら、切々と語っている姿が印象的でした。

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最初のシーンが不倫が終わった時点、ラストシーンが不倫が始まる時点。

時系列が逆向きになっている効果というのは、今でこそよくある演出ですが、1977年当時は革新的なものだったようです。

誰の誰に対する裏切りなのか。

人生経験が浅い私はあまり深い考察はできませんでしたが、観る人によって三者三様の捉え方ができるようですね。

友情、夫婦、家族、親子、恋人・・・

社会的関係において、誰しもどこかに負い目を感じながら生きている部分はきっとあると思います。

あまりに身近な関係性の中での裏切りに、観ている方も束の間のスリリングな経験をすることができました。

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 ▼日本語訳された戯曲

ハロルド・ピンター (1) 温室/背信/家族の声(ハヤカワ演劇文庫 23)

ハロルド・ピンター (1) 温室/背信/家族の声(ハヤカワ演劇文庫 23)

 

▼キャストへのインタビュー(長尺) 


Tom Hiddleston, Charlie Cox & Zawe Ashton Speak About The Broadway Play, "Betrayal"