ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『怪人と探偵』2019.9.15.18:00 @KAAT 神奈川芸術劇場

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『怪人と探偵』とは

江戸川乱歩による小説を基にしたオリジナルミュージカル。

今回が初演。

作詞・楽曲プロデュースは森雪之丞

テーマ音楽作曲は東京スカパラダイスオーケストラ

作曲は杉本雄治(WEAVER)。

演出は白井晃

あらすじ

昭和34年、東京麻布。

巷では怪人二十面相が金銀財宝を手練手管で窃盗する事件が多発しており、名探偵・明智小五郎らは真相解明に東奔西走していた。

そんな中、元子爵北小路家の令嬢リリカと安住財閥御曹司である竜太郎の婚約発表の日、北小路家の大広間では華やかな仮面舞踏会が開催されていた。

パーティーの最中、怪人二十面相からの犯行予告状が発見される。

「3日後10時北小路家の家宝「パンドーラの翼」を頂戴する」

指定の日時、二十面相の犯行を阻止するため、明智が北小路家を訪れる。

明智を一目見たリリカはなぜかショックを受ける。

同時に明智も動揺を隠せない。

実は、以前リリカと明智は互いを想いながらも、ある事実によりその想いを封じた過去があったのだ。

10時を告げる鐘の音とともに、二十面相が現れ、「パンドーラの翼」は爆発。

明智は負傷し、二十面相はリリカを連れ去ってしまう。

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キャスト

怪人二十面相 中川晃教

明智小五郎 加藤和樹

令嬢リリカ 大原櫻子

中村警部 六角精児

ネコ夫人ほか 高橋由美子

その他メインキャスト 今拓哉樹里咲穂水田航生、フランク莉奈

感想

新作日本オリジナルミュージカルということで、初めてKAATまで行ってきました。

▼舞台映像


9月14日開幕!「怪人と探偵」早出し舞台映像到着!

▼歌唱PV


新作ミュージカル「怪人と探偵」第2弾歌唱PV

▼観劇後の感想

個人的な趣味もあると思いますが、楽曲と振付が受けつけず、特に1幕は冗長な印象を受けました。

しかし、2幕中盤から次から次にストーリーが進んでいき、ラストまで没頭できました。

根本的な問題ですが、推理小説をミュージカル仕立てにすると、映画のようにアップにしたり、意味ありげな視線を送ったりといった描写が舞台ではできないので、事件の鍵を握る描写や伏線が伝わりにくいと感じました。

また、江戸川乱歩作品ということを意識してか、台詞がやや回りくどく、一回聴いただけでは何を意図しているのか捉えにくかったです。

こういう台詞回しは好きではありますが、初めて観る客に伝わらなければ意味がないのです。

メインのナンバーはJ Popらしいメロディーであり、聴かせどころもなくはないですが、大部分は尻すぼみというか、落とし所が決まらずに全体的にぼんやりして締まりがありませんでした。

キャストに関しては、中川晃教さんの歌声を聴くことができて良かったけれど、アッキーがこの役に対するベストな人選だったかは疑問符。

また、脇を固める樹里さんや今拓哉さんといった実力派が良かったです。

その他、以前、莉奈名義で活動されていたフランク莉奈さんをとても久しぶりに拝見しましたが、お元気そうで何よりです。(がんばってね。)

『ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ』2019.8.31.17:00 @EX Theater Roppongi

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『ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ』とは

1997年初演のオフ・ブロードウェイ・ミュージカル。

脚本はジョン・キャメロン・ミッチェル。作詞・作曲はスティーヴン・トラスク。

演出は福山桜子。

あらすじ

全米各地を旅するロック歌手のヘドウィグは、共産主義体制下の東ドイツで生まれた。

アメリカ軍人ルーサーに出会い恋に落ちるまで、ヘドウィグはハンセルという名の男性だった。

母親はルーサーと結婚しアメリカに渡れるよう、彼に自分の名前とパスポートを与え、性別適合手術を受けさせた。

だが手術は失敗し、股間には「怒りの1インチ(アングリー・インチ)」が残された。

2人はアメリカへ渡ったが、ルーサーは最初の結婚記念日の日ヘドウィグのもとを去っていってしまう。

それはベルリンの壁崩壊の日だった。

絶望に暮れるヘドウィグは、昔抱いたロック歌手になる夢を思い起こし、韓国軍兵の妻たちを引連れバンドを結成する。

アルバイトをしながら身を繋いでいたある日、同じくロックスターに憧れる17歳の少年トミーと出会う。

ヘドウィグは彼を誰よりも愛しロックの全てを注ぎ込んだが、とうとう手術痕がばれて別れてしまう。

彼は作った曲をすべて盗んだ挙句ヒットを飛ばし、いまや人気絶頂のロックスターに登りつめていた。

ヘドウィグは自分のバンド「アングリー・インチ」を引きつれトミーの全米コンサートを追いかけながら巡業し、愛を捜し求めていく。

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キャスト

ヘドウィグ 浦井健治

イツァーク アヴちゃん(女王蜂)

感想

この作品自体は大好きで、DVDが擦り切れるほど何度も映画版を繰り返し観ていた時期もありました。

今までにも山本耕史さんや森山未來さんらがヘドウィグを演じていたことは知っていましたが、何となく日本人キャストによる公演を避けてきました。

理由は特にありませんが、私の中のヘドウィグ像はジョン・キャメロン・ミッチェルで固定化されており、それ以外は受け入れられないと思ったのです。

2年前のことですが、そのジョン・キャメロン・ミッチェルが来日し、彼(彼女)によるヘドウィグを観ることができ、何か心の中の許容範囲が広がり、他の人のヘドウィグも受け入れられるかなと思い、今回の観劇に至りました。

▼本公演のゲネプロの様子


『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』公開ゲネプロ(浦井健治、女王蜂アヴちゃん)丨エンタステージ

▼観劇直後の感想です。

みなさんどう思われたのかわかりませんが、私の期待にはかないませんでした。

今年春、『笑う男』で心に傷を負った主人公を熱演していた浦井さん。

だからこそ、もう少し行きすぎなくらいの痛々しさを伴ったヘドウィグを観たかったのです。

イツァークの方は全く存じ上げませんが、ミュージカルをやる気あるのかしらという歌唱でした。

「これはロックミュージカルだからオレ流でいく!」なんてものは通用しませんよ。

初日明けたばかりということもあり、これから深まっていくのかもしれませんが。

脚本には舞台設定は変更可能となっているそうで、今回は初日で閉幕してしまったブロードウェイミュージカル『棺桶ロック』の劇場を借りて、ヘドウィグ一行がコンサートしているという設定になっていました。

舞台上には最初から車が置かれていて、「『ミス・サイゴン』か?」と思わず突っ込みたくなってしまいました。