ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『Kiss Me Kate』2019.5.1.20:00@Studio 54

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『Kiss Me Kate』とは

1948年ブロードウェイ初演のミュージカル。

作曲はコール・ポーター。脚本はサミュエル・スペワックとベラ・スペワックによる。

初演時はトニー賞5部門を受賞した。

今回は2019年のRoundabout groupによるrevival公演について書く。

演出はスコット・エリス。振付はウォレン・カーライル。

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あらすじ

次の演目は、シェイクスピアの『じゃじゃ馬ならし』を元にしたミュージカル『キス・ミー・ケイト』。

その公演に、フレッド、フレッドの元妻のリリー、若手女優のロイスらが出演することとなる。

公演初日、フレッドは若手女優ロイスに向けて花束を贈るが、誤ってリリーの元にその花束が届いてしまう。

リリーは花束を受け取って上機嫌だったが、1幕の途中でロイス宛だったことがわかってしまう。

怒ったリリーは幕間で帰ってしまう。

一方、ダンサーのビルと恋仲にあるロイスは、ビルのギャンブル癖に頭を悩ませていた。

果たしてショーは無事に最後まで上演できるのだろうか。

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キャスト

Lili Vanessi/Katherine    Kelli O'hara

Fred Graham/Petruchio    Will Chase

Bill Halhoun/Lucentio    Corbin Bleu

First Man    John Pankow

Harrison Howell    Terrence Archie

Louis Lane/Bianca    Stephanie Styles

Hattie    Adrienne Walker

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感想

今年初のブロードウェイ遠征に行ってまいりました。

到着日に観劇した、こちらの作品からレビューしていきます。

この作品はコール・ポーターの代表作であり、主演のケリー・オハラの歌声を楽しみたいということから選びました。

メザニン最後列センターでしたが、時差ボケも吹き飛ぶ迫力のあるダンスシークエンス、美声、演技を楽しめました。

▼本公演のtrailer


Kiss Me, Kate - Montage - Roundabout Theatre Company

作品は映画にもなっており、日本でも最近では松平健さんと一路真輝さん主演で公演されているので、ご存知の方も多いでしょう。

劇中劇としてシェイクスピアの「じゃじゃ馬ならし」が演じられている舞台の表と裏で、元夫婦や恋人たちの悲喜こもごも描いたミュージカルです。

このプロダクションは2019年のトニー賞で、リバイバル作品賞主演女優賞(Kelli O'hara)、振付賞(Warren Carlyle)でノミネートされています。

▼観劇後の感想です。

今まで『Light in the Piazza』や『South Pacific』『The King and I』などで正統派ヒロインを数多く演じてきたケリー・オハラですが、本作では元夫と共演することとなったベテラン女優役を演じています。

劇中劇の役どころは男嫌いでやや乱暴な女性で、全くケリー・オハラの清楚なイメージには合わないのですが、なんとか頑張って演じていらっしゃいました。

でもやはり、ケリーが「I Hate Men」を歌っても、歌がうますぎるが故に、優雅な響きに聞こえてしまい、いまいちキャサリン(「じゃじゃ馬ならし」の中の役名)らしくないのですよね。

難しい役どころです。

一方、ケリーの歌う美しい「So In Love」は持ち前のdivaっぷりを存分に発揮しており、私は思わずうっとりと聴き惚れてしまい、自然と涙が流れてきました。

▼Kelli O'haraの歌う「So In Love」


Kelli O'Hara Sings 'So in Love' from KISS ME, KATE

キャストは他に、ハイスクールミュージカルシリーズでおなじみのコービン・ブルーがダンスの腕前を披露しています。

私はコービンと気付かずに観劇していて、ステージドアでも目の前でサインをもらったにも関わらず、トレードマークのアフロヘアーではなかったので全く気付かずじまいで、宿に帰ってから気づきたいそう後悔したのでした。

また、そのコービンの相手役として、本作でブロードウェイデビューを飾ったステファニー・スタイルズは新人ながら「Tom, Dick or Harry」や「Always True To You (In My Fashion)」などの名ナンバーを全うしていました。

残念ながらトニーにノミネートはされませんでしたが、今後に期待大の若手です。

蛇足ですが、ちなみにこちらの役は、元々『Mean Girls』のGretchen役でトニー賞助演女優賞にノミネートされたAshley Parkが演じると報道されていましたが、彼女はおそらく映像系の仕事の方を取ったのでしょう。

それにしても、「Tom, Dick or Harry」で「Dick Dick」のところを腰を振る振り付けにしていて、会場から爆笑が沸き起こっていたのですが、これは「Dick=男性器の隠語」を強調していたからで、私もさすがに失笑してしまいました。

少々下品ではありますが、コール・ポーターも天国で笑っていてくれることを願います。

Warren Carlyleによる振付の最たるものは「Too Darn Hot」で観ることができます。

実際に観劇した際には、「Too Darn Hot」のパフォーマンス後、約1分間くらい拍手が鳴り止まなかったほどの盛り上がりでした。

▼本公演キャストによる「Too Darn Hot」、振付はWarren Carlyleによる。


‘Kiss Me Kate’ cast perform ‘Too Darn Hot’ live

また、私の回ではなかったのですが、別の回では手話を使った上演もされていたようです。

ブロードウェイでも様々な形でバリアフリーが進んでいます。

改めて、時代によらない、コール・ポーターの音楽性の普遍性に気づかされるとともに、ブロードウェイの魅力がたっぷり詰まった作品であると感じました。

終演後はステージドアへ移動し、ケリーやコービン、ステファニーらキャストさんたちとお話しすることができました。

他の観客の方に聞いたのですが、渡辺謙さんは映画の宣伝で渡米されていたようですね。

いつも遠くから見つめているだけで、お話できたのは今回初めてでしたが、ケリーさんはとても気さくで素敵な方でした。

お疲れのところ、ありがとうございました。

公式サイト:

Kiss Me, Kate – Roundabout Theatre Company

 ▼今回の劇場はStudio 54でした。

『くたばれ!ヤンキース(1958)』Damn Yankees!

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くたばれ!ヤンキース(1958)』とは

1958年のワーナーブラザーズのミュージカル映画

1955年にブロードウェイ初演の舞台ミュージカルを基にしている。

ドイツの伝説「ファウスト」をモチーフにしている。

音楽はリチャード・アドラー、ジェリー・ロスによる。

振付はボブ・フォッシー

監督はジョージ・アボットスタンリー・ドーネン

ジョー・ハーディー役のタブ・ハンター以外は、舞台版オリジナルキャストが持ち上がりで演じている。

舞台版はグウェン・ヴァードンの主演女優賞、ボブ・フォッシーの振付賞をはじめ、トニー賞を7部門で受賞している。

あらすじ

中年のジョー・ボイドは、大リーグチームのワシントン・セネターの大ファン。

ある日、セネターがあまりに弱いことため、ジョーは「もしセネターがヤンキースを打ち負かすことができるなら、悪魔に魂を売ってもいい」と独り言で呟くやいなや、詐欺師の風貌の悪魔、アップルゲートが現れる。

アップルゲートは、ジョーに若さを与え、セネターに入れるだけの能力を与えようと申し出る。

半信半疑だったジョーだが、最終試合の前までであればいつでも元の姿に戻れるという約束付きで、契約を了承し、妻とのしばしの別れを惜しんでから、アップルゲートとともに旅立つのだった。

セネターの非公式の選抜テストに合格し、いきなり一軍入りしたジョーは一躍時の人となり、セネターの試合成績もうなぎ登り。

しかし、アップルゲートの真の目論見は、夫婦仲を引き裂く事であり、業務上の右腕であるローラにジョーを誘惑するよう命令する。

ローラはジョーを一目見ると「楽勝よ(duck soup)」と言うが、ジョーの妻への忠誠心は深く、色仕掛けで誘惑するローラに惹かれる様子が全くない。

ジョーの一途さに、ローラは逆に自分が惹かれていることに気づくのだった。

キャスト

ジョー・ハーディー タブ・ハンター

ローラ グウェン・ヴァードン

アップルゲート レイ・ウォルストン

トレーナー ラス・ブラウン

ボイド夫人 シャノン・ボリン

ボイド氏 ロバート・シャファー

グロリア・ソープ レイ・アレン

ダンサー ボブ・フォッシー

感想

トニー賞を4度受賞した、ブロードウェイの名女優グウェン・ヴァードン主演する稀少なミュージカル映画です。

グウェン・ヴァードンは多くの映画にダンサーとして出演していますが、クレジットされていないことが多く、本作が初めてクレジットされた映画でした。

舞台版でトニー賞最優秀主演女優賞を受賞しただけあり、演技やダンスが非常に作り込まれていると感じられます。

彼女が演じるローラは実にチャーミングです。

フォッシー仕込みの腰を回して誘惑するシーンは、あまりに刺激が強すぎるということで、映画版では抑えた表現になったようですが、それでも色気たっぷりに演じています。

▼trailerです。


Damn Yankees - Trailer 1

ジョー以外のほとんどを、ブロードウェイの舞台版オリジナルキャストたちが演じていることもあり、ミュージカルシーンの完成度が非常に高いと感じました。

特に、フォッシーによる独特な振付は実に見事です。

監督も、ミュージカル映画を多く手がけているスタンリー・ドーネンが関わっているため、全体的な仕上がりも上々という印象です。

特に印象的だったのは、グウェン・ヴァードンとボブ・フォッシーの息のあったダンスデュエット。

思わずなんども繰り返して見てしまいました。

一つ、よく仕組みがわからなかったのが、アップルゲートが手の中から突然火のついたタバコを取り出すシーン。

このマジックのトリックをご存知の方、いらっしゃったらぜひ教えていただきたいです。

▼のちに夫婦となるグウェン・ヴァードンとボブ・フォッシーのデュエット「Who's Got the Pain」


Bob Fosse and Gwen Verdon in Damn Yankees - Who's Got the Pain

脱線しますが、本作に出演しているグウェン・ヴァードンとボブ・フォッシーを描いたドラマがアメリカで公開されたので、付記しておきます。

日本でもディスク化、あるいはストリーミング配信されないか、首を長くして待っているところです。

ボブ・フォッシーとグウェン・ヴァードンを描いたFX Networkのドラマ「Fosse/Verdon」が2019年4月からアメリカで公開


Fosse/Verdon Miniseries Trailer | Rotten Tomatoes TV

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