ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『ジプシー(1962)』Gypsy

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『ジプシー』とは

1962年公開のミュージカル映画

実在のストリッパー、ジプシー・ローズ・リーの自伝を原作とする、1959年初演のブロードウェイミュージカルを基に作られた。

音楽は、スティーヴン・ソンドハイム作詞、ジューン・スタイン作曲。

基の舞台ミュージカルは、初演時、エセル・マーマンがローズを演じ、その後もアンジェラ・ランズベリー、タイン・デイリー、バーナデッド・ピーターズ、パティ・ルポン、イメルダ・スタウントンといった、世代ごとの名女優たちがこぞって演じ続け、今でも再演を繰り返されている人気演目のひとつ。

また、1993年にベット・ミドラー主演でテレビ放送のために再映像化されており、近年ではバーブラ・ストライザンド主演で映画のリメイクの話が持ち上がっている。

あらすじ

ローズは、父のような平凡で退屈な人生を嫌い、2人の娘たちルイーズとジューンをショウビジネスの世界で活躍させようと躍起になる、ステージママ。

オーディションで知り合ったハービーと組み、あちこちの地域の劇場へ娘たちを売り込んでまわるその姿は、まるで‘ジプシー’のよう。

やがて、ハービーがスカウトしてきた4人の少年たちを入れ、「ベイビージューンと新聞売り」の名で舞台に立つと、ローズの狙い通り、娘のジューンのダンスが評判となって瞬く間に人気者に。

劇場関係者に多くの伝手(つて)を持つハービーと、ショウビジネスに人生を懸けるローズは、次第に心惹かれ合うが、早く結婚して持ち家に落ち着きたいハービーと、娘たちのブロードウェイデビューまで放浪の旅を続けたいローズの間には溝があった。

やがて、成長した少年たちが一座を抜け、ジューンは駆け落ちし、一座はバラバラになってしまう。

それでも諦めず、ルイーズと再起を図るローズだったが、ジューンの持つ歌唱力やダンスの技術はルイーズにはなかった。

さらに、時代はトーキー映画全盛で、ボードヴィル業界は斜陽の一途をたどり、一家の生活は厳しくなる一方だった。

そんな時、ある手違いでストリップ劇場の仕事を受けてしまう。

ローズは抵抗するが、お金のためにルイーズは舞台に立つと宣言するのだった・・・


Gypsy (Original Theatrical Trailer)

キャスト

ローズ・ホヴィック ロザリンド・ラッセル

ルイーズ・ホヴィック ナタリー・ウッド

ハービー・サマーズ カール・マルデン

タルサ ポール・ウォレス

ベイビー・ジューン スザンヌ・キュピト

デインティー・ジューン アン・ジリアン

ベイビー・ルイーズ ダイアン・ペイス

感想

ようやくこの映画について書く日がやってきて、心から嬉しい気持ちでいっぱいです。

私がミュージカル『ジプシー』について知ったのは、2008年のブロードウェイでのリバイバルトニー賞授賞式でのパフォーマンスをたまたま観た時のことです。

私が最も好きなブロードウェイスターである、パティ・ルポンが演じるローズの存在感に圧倒され、急いでこの作品について調べてみると、あの『ウエストサイド物語』でマリアを演じたナタリー・ウッドが出演している映画版があるではないですか。

しかし、アメリカでのメジャー感とは対照的に、当時日本ではDVD化されておらず、アメリカ留学時代に図書館で借りて、ようやく初めてこの映画を観ることができました。

(朗報:2018年、復刻シネマライブラリーとして日本でもDVD化されましたよ!)

映画版は、舞台版をある程度、忠実に再現していると思います。

ナンバーの削除も少ないですが、残念なのは私が好きな「Together Wherever We Go」がない点。

そのシーンは実際作られたのですが、時間の都合で削除になったそうです。

ロザリンド・ラッセルのローズは、やはりブロードウェイの歴代のDivaたちと比較すると、歌声は劣っていますが、それを演技力と美貌でなんとか補っているように思いました。

ただ、ラッセルの歌う歌の編曲が、もう少しテンポとピッチを上げても良かったのではと全体的に思いました。

まあ、歌い手の問題が多分にあると思いますが、元々のナンバーが素晴らしすぎるだけに、その良さが全く活かしきれておらず、全体的に遅くだるくなってしまい、残念。

↓ショウビジネスの夢を父親に語る、ローズの決意表明のような一曲「Some People」


Gypsy - Some People - Rosalind Russell 's own voice

ハービーを演じているのは、映画『欲望という名の電車』に出演し、アカデミー賞を受賞したカール・マルデン

彼はまさにハービーらしさが全面に出ていて適役でしたね。

↓エンターテイナーとしての才能のある華やかな妹のジューンとは対照的に、ルイーズはこの時少年たちに混じって地味に舞台を支える「Baby June and Her Newsboys」


Gypsy - Baby June and Her Newsboys (1962)

『ウエストサイド物語』では泣く泣く歌声を吹き替えにしたナタリー・ウッド

歌がマーニ・ニクソンによる吹き替えになることを、本人は撮影終盤まで知らなかったそうです。

この件、本人は相当悔しかったそうで、『ウエストサイド物語』の次の本作の出演にあたり、「次こそ、絶対に自分の声で歌うもん!そうじゃないと、私、絶対に出ないからね!」(言いぶりは勝手な想像)と言ってきかなかったそうです。

そして、念願叶い、ローズの娘、ルイーズを熱演し、歌い、踊っています。

ルイーズはジューンと違い、歌やダンスの才能はないという役柄なので、ある意味、合っていたのかも。

↓可憐な歌声を披露するナタリー・ウッド「Little Lamb」


Little Lamb-Natalie Wood (Gypsy-1962)

また、フィナーレを飾る、大曲「Rose's Turn」は、終演後のバーレスク劇場の舞台上で、今までの子育てに奮闘した日々、自分の人生を振り返り、独白する印象的なシーンです。

 

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『夢のチョコレート工場(1971)』Willy Wonka & the Chocolate Factory

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夢のチョコレート工場』とは

ロアルド・ダールによる児童小説『チョコレート工場の秘密』を原作とした、1971年公開のアメリカのミュージカル映画

作品中の「The Candy Man」については、サミー・デイヴィス Jr. がカバーしヒットした。

音楽はアカデミー賞、主演のウォンカ役ジーン・ワイルダーゴールデングローブ賞にそれぞれノミネートされたが、ともに『屋根の上のヴァイオリン弾き』に敗れている。

なお、同原作によるミュージカル舞台版が2013年ウェストエンドで初演されたが、「Pure Imagination」をはじめとする本映画中のナンバーが何曲か採用されている。

あらすじ

父親のいない少年チャーリーは、巨大なチョコレート工場のある大きな町に、祖父母たちとともに貧しい生活を送っていた。

ある日、そのチョコレート工場の経営者ウィリー・ウォンカ氏が自社のチョコレートの中にゴールデンチケットを5枚封入して出荷し、そのチケットを引き当てた子どもとその保護者1名を工場に招待すると発表した。

新聞配達のアルバイトの収入を自分のためではなく、全て家族のために使う心優しいチャーリーに、ジョーおじいちゃんはウォンカのチョコレートを買ってあげるのだった。

そこに金のチケットは入っていなかったが、感謝しながらチョコレートを食べるチャーリー。

ある日、学校帰りにたまたま道端にコインを見つけたチャーリーは、そのコインでウォンカのチョコレートを買ったところ、見事金のチケットを当てたのだった。

ジョーおじいちゃんを引き連れ、喜び勇んでウォンカ氏の工場に向かうチャーリー。

しかしこれは、ウォンカ氏が子どもたちに課した、あるテストだったのだ…

▼trailerです。


Willy Wonka & The Chocolate Factory (1971) Official Trailer - Gene Wilder, Roald Dahl Movie HD

キャスト

ウィリー・ウォンカ  ジーン・ワイルダー

ジョーおじいちゃん  ジャック・アルバートソン

チャーリー・バケット  ピーター・オストラム

ヴェルーカ・ソルト  ジュリー・ドーン・コール

ヴァイオレット・ボールガード  デニス・ニッカーソン

マイク・ティーヴィー  パリス・セメン

オーガストス・グループ  マイケル・ボルナー

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感想

小学生の頃、ロアルド・ダールの小説を読んだ方も多いのではないでしょうか。

ファンタジーの要素がありながら、子どもたちに善悪を教えるストーリーが印象的だった記憶があります。

本作は公開直後より、しばらく経ってからカルト的な人気が出ました。

なんと言っても、本作のジーン・ワイルダーの奇怪なウォンカ像は印象深く、一度観ると忘れられません。

登場シーンから固唾を飲んで見入ってしまいます。

杖をつきながら歩いてきて、どこか足がよくないのかしらと思わせておきながら、門に辿り着いたらでんぐり返しのサプライズ。

ウォンカ氏のパーソナリティーがこの登場シーンに象徴されています。

ドアが開き、チョコレート工場に入ったシーンがありますが、この撮影の時にキャスト達は初めてセットの全貌を目の当たりにしたそうです。

あの圧倒された表情は自然に生まれたものなんですね。

「Pure Imagination」では、ウォンカ氏は純粋な想像力の大切さを大人たちに訴えているようです。

数々のアーティストにカバーされている名曲ですね。

▼「Pure Imagination」


Gene Wilder - Pure Imagination

Come with me and you'll be

In a world of pure imagination

Take a look and you'll see

Into your imagination

 

We'll begin with a spin

Traveling in the world of my creation

What we'll see will defy explanation

 

If you wanna view the paradise

Simply look around and view it

Anything you want to do it

Want to change the world?

There's nothing to it

 

There is no life I know

To compare with pure imagination

Living there you'll be free

If you truly wish to be

ちなみに、最後にcrispyな音をさせて美味しそうに食べている、花のかたちをしたカップとソーサーは、実際、蝋でできていたそうです。

個人的に大好きな曲なので、ドラマ『グリー/glee』キャストによるカバーも載せておきます。


GLEE "Pure Imagination" (Full Performance)| From "Funeral"

実際、ウォンカ氏と子どもたちの間の緊迫した雰囲気を出すために、撮影中、ジーン・ワイルダーはわざと子役たちによそよそしく当たっていたそうです。

特殊技術やCG加工を用いない70年代という時代が生み出した、素朴ともいえる手づくり感が、かえって作品にファンタジックなエネルギーを与えている気がして、私の好きな映画のひとつです。

チャーリー役の子役は獣医になっており、その他の子役たちも全員、奇跡的に悪の道に走らず、定職に就いているという意味でも、安心して子どもに見せられる映画といえます。

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