ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『リトル・ナイト・ミュージック』2018.4.14.17:30 @日生劇場

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『リトル・ナイト・ミュージック』とは

1973年ブロードウェイ初演のミュージカル。

作詞作曲はソンドハイム。

スウェーデン映画『夏の夜は三たび微笑む』を基にしている。

あらすじ

19世紀末のスウェーデン

中年の弁護士フレデリック・エーガマンは、18歳のアンと再婚したもののなかなか手を出せず、結婚11ヶ月経った今もアンは処女のまま。

息子のヘンリックは、密かに一歳下の義母アンに恋心を抱いていた。

ある日、芝居を観に行ったフレデリックとアン。

主演女優のデジレ・アームフェルトが実はフレデリックの昔の恋人であることを察したアンは泣きながら席を立つ。

純粋すぎるアンに疲れたフレデリックは、ついデジレのもとへ。

14年ぶりの再会を果たした二人がまたも惹かれあったところにデジレの現在の恋人で乳房持ちのカールマグナス・マルコム伯爵が突然訪れる。

伯爵は二人の仲を怪しみ、妻シャーロットにフレデリックを調べるよう命令する。

アンがメイドのペトラと家に居るところへ、シャーロットが訪ねてくる。

やがてアンとシャーロットは共通の目的のため一致団結することに…

その後、フレデリックのことが気になるデジレは、母親のマダムと娘のフレデリカ、執事のフリードが暮らす田舎の屋敷に、フレデリック一家を招待する。

それを知った伯爵夫妻も屋敷へと向かう。

ついに顔を合わせることになった女たちと男たち。

それぞれの思惑を抱きながら、一夜を共にすることになるが…

キャスト

デジレ・アームフェルド  大竹しのぶ

アン・エーガマン  蓮佛美沙子

シャーロット・マルコム  安蘭けい

カールマグナス・マルコム  栗原英雄

フリード  安崎求

フレデリカ・アームフェルド  トミタ栞

ペトラ  瀬戸たかの

マダム・アームフェルド  木野花

ヘンリック・エーガマン  ウエンツ瑛士

フレデリック・エーガマン  風間杜夫

感想

この日はマチネに『メリポピ』を観てからの、ソワレでこちらを観劇。

ファミリーフレンドリーな雰囲気から一転、大人の世界にトリップしてきました。

この作品は以前ブロードウェイの2009年のリバイバルを観て以来2回目。

その時、ブロードウェイでは、マダムがアンジェラ・ランズベリー、デジレがキャサリン・ゼタ=ジョーンズでした。

なんと豪華なんでしょう。

それをたった49ドルのチケットを買って、後ろの方から観たことを思い出します。

ちなみに、キャサリン・ゼタ=ジョーンズはこれでトニー賞主演女優賞を取っています。

↓私がブロードウェイで観劇した時のキャストです。


Show Clips: A Little Night Music

実際、日本での初演は劇団四季によるもの。

その時は、デジレが越路吹雪、マダムが藤野節子、フレデリカが久野綾希子、ヘンリックが市村正親、マルコム伯爵が鹿賀丈史と、こちらも豪華キャストですね。

このミュージカルのOBRを何回も聴いていますが、綺麗なメロディだと思う一方で、何て難解なのだろうと聴くたびに思ってしまいます。

3/4拍子が多く、パーカッションはほぼ使われないため、カウントを取るのが難しいですし、なんといっても音域が男女ともに結構きついかなと思います。

そのようなわけで、案の定、今回もみなさん、苦戦されていましたねぇ(激しく同情)。

正直に申し上げて、冒頭から「In Praise of Women」をマルコム伯爵役の栗原英雄さんが歌い始めるまでの間、誰か野次を飛ばさないものかと冷や汗が止まりませんでした。

でも、初ミュージカルにしては、がんばっていらっしゃいましたね、風間さん、蓮佛さん。

これでミュージカルを嫌いにならないでくださいね。

特に、蓮佛さんが演じられたアンが歌うナンバーは、本当に難しい楽曲の宝庫ですね。

栗原英雄さんの安定感たるや、もう。

そこから安蘭けいさんが登場し、もう安心のデュエットで、ホッと胸をなでおろしました。

大竹しのぶに、このデジレは適役でしたね。

オリジナル・ブロードウェイ・キャストでデジレを演じたのはグリニス・ジョーンズ。

日本では映画『メリポピ』の女性参政権運動に燃えるお母さん役として知られているかと思います。

名曲「Send In the Crowns」は、ソンドハイムが彼女のために書いた曲と言われています。

『メリポピ』をご覧になった方はご存知と思いますが、どことなくハスキーでやや甘めのヴォイスですよね。

歌うための歌ではなく演じるための歌として、ミュージカル女優というより演技派女優の彼女のために、この曲を“テーラーメイドした”そうです。

だからこそ、演技派女優として名高い大竹さんにぴったりだと思ったのです。

素敵じゃない?

笑えるわ

ふたり同じ夢  見てると  信じてた

 

ひとりは羽ばたいて

ひとりはどこにも行けない

ピエロを呼んで  笑わせて

 

立ち止まり  気づいたの

待ち続けていたのは  あなただと

心に決めて  扉あけて

出てみたら  誰もいない

 

喜劇じゃない?

私のせいね  同じ道  選ぶと  信じてた

愚かでしょ

ピエロなら  ここにいたわ

 

素敵じゃない?

この私が  出番を間違えた  今頃

喜劇はもう  終わりましょ

幕を閉めて

 


『リトル・ナイト・ミュージック』舞台映像ダイジェスト

この作品、一幕終盤では、

マルコム伯爵夫人→マルコム伯爵→デジレ→フレデリック←アン←ヘンリック←ペトラ←フリード

というような、「みんな片想い」状態にあるのですが、最後には、

マルコム伯爵夫人∞マルコム伯爵

デジレ∞フレデリック

アン∞ヘンリック

ペトラ∞フリード

という形に落ち着きます。

そんな大人たちの悲喜交々をマダムとフレデリカが静かに見守っています。

「Send In the Crowns」はラストでリプライズされますが、1度目に歌った時の悲壮感はリプライズでは消え、全く違う曲のように聞こえるものですから、すごいものです。

舞台がスウェーデンということもあり、ブロードウェイというよりウエストエンドの香りのする、ミュージカルというよりオペレッタやオペラに近い作品で、私は気に入っています。

日本キャストのみなさんお疲れさまでした。

『メリー・ポピンズ』2018.4.14.12:00 @東急シアターオーブ

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メリー・ポピンズ 』とは

P.L. トラヴァースによる子供向け小説と1964年の同名映画を基にしたミュージカル。

キャメロン・マッキントッシュとディズニー・シアトリカル・プロダクションによりプロデュースされた。

マシュー・ボーンが振付で関わっている。

ウェストエンドで2004年、ブロードウェイで2006年に開幕。

日本では今回が初演。

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あらすじ

いろいろな仕事を生業にしているバートが、桜並木通り17番地を案内する。

そこにはバンクス一家が住んでいる。

ワーカホリックな銀行家ジョージ、その妻ウィニフレッド、彼らのいたずら好きな子供たちジェーンとマイケル。

彼らのもとに風とともにやってきたのは、一風変わったメリー・ポピンズ という乳母。

彼女の不思議な力に、子供たちは魅了される。

そして、メリー・ポピンズによって、次第にバンクス一家は失っていた何かに気づかされていくのだった。

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キャスト

メリー・ポピンズ   濱田めぐみ

バート  大貫勇輔

ジョージ・バンクス  駒田一

ウィニフレッド・バンクス  三森千愛

バードウーマン/ミス・アンドリュー  鈴木ほのか

ブーム提督/頭取  コング桑田

ミセス・ブリル  久保田磨希

ロバートソン・アイ  もう中学生

ジェーン・バンクス  浅沼みう

マイケル・バンクス  坂野佑斗

ミセス・コリー  エリアンナ

ヴォン・ハスラー  丹宗立峰

ミス・ラーク  般若愛実

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感想

ようやく行けました、メリー・ポピンズ

この日のために、ここ数週間仕事を頑張ってきたと言っても過言ではないほど、楽しみにしておりました。

こちらの作品は2009年にブロードウェイで観ています。

その時は、はたしてアニメーションと実写の融合の魅力を舞台で表現できるのかしらと疑心暗鬼で観に行ったのですが、その予想を裏切る内容に興奮したことを覚えています。

今回は、①どのように日本語に訳されているか気になったから、②濱田めぐみさんのメリーを見たかったから、③あの時の興奮をまた経験したかったからなどの理由で観劇することにしました。

舞台版は、ジュリー・アンドリュース主演の映画からの名曲に、何曲か新曲が書き加えられており、プロットはほぼ同じですが所々書き換えられています。

曲が入るタイミングは、映画とは異なっています。

新曲としては、「Anything Can Happen If You Let It」がお気に入りです。

また、ミセス・コリーや動く彫刻など、新たに加わったキャラクターもいます。

確かに、バートと一緒に絵の中の世界に飛び込み、ペンギンとダンスしたり、回転木馬で競馬をしたりといったシーンはなく、そういった点は映画版の魅力と言えます。

ただ、舞台版の「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」や「ステップ・イン・タイム」の群舞は圧巻ですし、フライングも素晴らしいです。

2Dの世界の人だったメリーが、ラストで客席上空を飛んでいくシーンは何度見ても感動的です。

さて、日本語訳ですが、とてもいい印象を受けました。

個人的に翻訳者の方に一番感謝したいのは、「Feed the bird」の「2ペンス、2ペンス、その愛を」ですね。

文字通りに訳すと「2ペンス、2ペンス、一袋」となるのですが、この曲の慈愛に満ちた雰囲気に合った訳詞だったと思います。

日本初演作品ではいつも、事前にある程度自分で訳詞してみて、実際上演されるものと比較してみるのですが、今回は高橋さんの方が良かったですね。

そして、濱田めぐみさんのメリーは、やっぱり期待を裏切りませんでした。

歌も演技もダンスもすべて。

濱田めぐみさんの振り幅の大きさには、毎度のことながら驚かされますね。

濱田めぐみさん大好きです。

ああ、帰り道に久しぶりにハミングをしてしまうほど、世界に引き込まれてしまいました。

最後に、プログラムにあった濱田めぐみさんの魔法の言葉を。

「今、この一瞬を大切に。未来の自分の為に、今を大切に生きよう」。

素敵な考え方だと思います。

私も見習いたいです。


ミュージカル『メリー・ポピンズ』プレスコール | エンタステージ